帰国子女Q&A

現在、海外在住の日本人小学生・中学生はどのくらいいるのでしょうか? また、そうした家庭では、子どもの学校選びについて、どのような悩みや心配があるのでしょうか?
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海外在住の日本人子女(義務教育年齢の子ども)は、昨年2014年4月の段階では、前年より4,900人あまり増えて、約7万6,500人であることが外務省の調査でわかりました(7万人台に乗ったのは2013年からで、それ以前の5年間は6万人台、それ以前は5万人台を推移していました)。
そのうち小学生は約5万5,319人となっています(外務省『管内在留邦人子女調査』より/2014年4月現在)。
これら海外に住む小学生の保護者はもちろん、すでに日本に帰国し、「帰国子女」となった小学生をお持ちの保護者にとって、お子さんの教育問題、とくに多感な成長期にあたる中学進学については、頭を悩ませることが多いようです。
日本に帰国後は、お子さんを迷わず公立学校に進ませると決めているなら問題はありませんが、たとえば、せっかく身につけた英語(外国語)の能力を伸ばしたいと考えるお子さんにとっては、ABCから始める授業では物足りなく感じます。それだけならまだしも、同級生と比べて英語能力がひときわ高いことが目立ってしまい、人間関係に影響が及ぶこともあります。なかには英語ができることを意識的に隠して、中高生時代を送る子どももいるといいます。これでは、今後の"グローバル化"が謳われる現在の教育環境として、望ましいものとはいえないでしょう。
一方、社会や理科については、海外の小学校では学習が遅れがち。とくに社会は、日本人の常識である地名などの知識が不足するなどのケースが出てきます。

現在の中学入試で受けられる「帰国子女入試」とは、どういう条件(受験資格)や入試形態(試験科目)で実施されているのでしょうか?

「帰国子女」のご家庭が、お子さんの中学受験を検討してみたときに、海外の小学校で学習してきた理科・社会の(日本国内の小学校や進学塾などでの学習に比べての)遅れなどを考えると、一般枠の入試ではハンデになるのではないかという不安が出てきます。一方で、海外の生活で身につけた外国語(英語)力や、海外の生活体験を生かして、わが子の良い部分を伸ばしてくれる学校を探して入学させたいという願いが出てくるのは当然です。そういうご家庭やお子さんのための制度が、帰国枠、つまり帰国子女を対象とした入試です。 帰国枠での入試制度を設けている学校は数多くあり、とくに首都圏の私立中高一貫校では、この数年の間にも「帰国生(別枠)入試」の実施校数が増加しています。 その形式や内容はさまざまです。出願資格、入試形態、入学後の対応なども、それぞれの学校の考え方に基づき、細部には微妙な違いがあります。これらについて、詳しくはこの「しゅともし『帰国生入試NAVI』サイト」に掲載している「帰国子女入試要項一覧」をご覧ください。 簡単に説明すると、まず入試日程としては、「帰国生(別枠)入試」は、一般入試より早い時期に実施されることが大半です。これは、東京都と神奈川県内の私立中学校の入試の解禁日(スタート日)が「2月1日以降」と定められていて、例外的に「帰国生入試」は、それ以前に実施してもよいとされていることによるものです。 そうした一般入試より早い時期に行われる「帰国生(別枠)入試」が数多くある一方で、一般入試と同一日程、同一内容(試験問題)で実施し、帰国子女のみ面接などを行った上で、優遇措置(各校の規定の加点など)を取るケースも多く見られます。 首都圏の場合、一般入試に先立って行われる帰国枠の試験は、早いところで11月、多くの場合、12月から1月にかけての実施となっています。 そうした入試が行われるなかで、帰国枠と一般枠の両方の試験を受けることは可能ですし、また、帰国枠についても、日程的に可能ならば、何校受けてもよいわけです。最近の首都圏の中学入試では、一般の受験生も1人平均「5~6校」を受験(出願)していますが、帰国生のなかにはそれ以上に多くの学校(入試回数)にチャレンジする受験生も多いのです。受験できるチャンスは大いに活用するとよいでしょう。

入試形態

基本的に1~3科目(国語・算数・英語)の筆記試験、作文、面接の組み合わせで行われます。
一般入試と同時に行われる場合は、4科目の受験が必須や、2科・4科の選択となるケースが多くなります。
また、教科の試験がない学校もあり、各私立中学校も、帰国生の学習傾向の変化や、自校の入試レベルの変化などに合わせて、柔軟に試験科目・形態を変更することがありますので、最新の「帰国生入試要項」で確認のうえ、受験の準備を進めることが必要です。

出願資格

各校が定める出願資格は、それぞれの学校の考え方によって違いがありますので、その点にも注意が必要です。
受験(出願)資格における海外在留期間は、「1年以上」、「2年以上」、「3年以上」と定めている学校があり、最近では受け入れの間口を広げるために「1年以上」と(短く)する傾向も出てきています。継続か通算かについての数え方も学校によって異なります。
帰国後の年数については、短いところでは「3ヶ月以内」から、長いところでは「5年以内」までさまざま。ただし数年前から東京都内の私学では「帰国後3年以内」を最長の目安として定めているようです。
また例外的に、渋谷教育学園幕張などは、応募資格を「原則として海外在留経験のある者」として、期間も帰国後年数も問わない学校もあります。
なお、在留期間の算出にあたり、少しの不足は考慮してもらえる場合もあるので、「うちの子はきっと当てはまらないだろう」と諦めてしまわずに、率直に直接学校に問い合わせてみるとよいでしょう。

入試日程

一般入試とは別枠の「帰国生入試」を一般入試より早い時期に実施するケースと、一般入試と同一日程同一内容で実施し、帰国子女のみ面接などを行って優遇措置(各校規定の加点)を取るケースがあります。
別日程での試験は、首都圏では11月から1月にかけて多く実施され、一般入試と両方を受けることも可能です。
また、帰国枠も、日程的に可能なら何校受けてもかまいません。

「帰国生入試」を実施している学校の上手な選び方と手順を教えてください。

まず、受験生(お子さん)の学力を客観的に測ってみる

お子さんの「帰国生入試」での学校選びにあたって、まず最初にしておきたいのは、お子さんの学力を客観的に測ることです。とくに英語(外国語)は、「できる」といってもどの程度なのか、「英検」など、ある程度 の指標となるテストを受けているならその点はひとまずクリアです。逆に、帰国子女ではあるけれど、英語が希望校の受験レベルに達していないということもありますので、この点は何らかの対策が必要になります。
これにプラスして、志望校の入試で課される他の教科(国・算ならばその2科目)の学力も知っておくことが必要です。理科や社会が入試で課される学校を志望しているならば、理・社が遅れているのか、あるいは、現地校に加えて塾などに通って補強していたならば、現時点で国内の中学受験生と比べてのレベルがどの程度なのかを、首都圏模試センターの「統一合判」などの模試を受けることで把握しておきます。
国語(日本語)の学力も重要です。ほとんどの学校において、試験科目か作文のどちらかで日本語が必要だからです。日本語の感覚が確立する前に海外に渡った帰国生の場合は、とくに意識して準備をしておくとよいでしょう。

出願(受験)資格をチェックし、受験が可能かどうか確かめる

次に、「海外在住期間」及び「帰国後の年数」を確認しておきます。受験候補校を絞り込む際に、その学校の出願資格と照らし合わせ、適合しない場合には候補か ら外します。ただ、志望校の定める受験(出願)資格との差(帰国後の年数など)がわずかである場合には、弾力的な運用で受験させてくれる可能性もあるので、直接学校に確かめてみるとよいでしょう。

「帰国生入試」で課される入試科目を確かめる

次に、「海外在住期間」及び「帰国後の年数」を確認しておきます。受験候補校を絞り込む際に、その学校の出願資格と照らし合わせ、適合しない場合には候補か ら外します。ただ、志望校の定める受験(出願)資格との差(帰国後の年数など)がわずかである場合には、弾力的な運用で受験させてくれる可能性もあるので、直接学校に確かめてみるとよいでしょう。

志望校に期待したいことは?

中学入学後の6年間で、どのような対応をしてほしいのか、保護者(ご家庭)の重視したいことについて考えをまとめておきます。わが子の英語力を伸ばしたいのであれば、帰国生のみのクラスを設けているところ、あるいは英語の 授業だけは帰国生のみで(いわゆる「取り出し授業」を)行っているところをめざすという選択もあります。英語力の維持のほか、海外の学校でやや勉強が遅れた(弱い)科目の補強のために、どのようなフォローをしてくれるのかも事前に知っておきたいことのひとつです。

そのほか、帰国子女入試校(受験校)を選ぶときのポイントは?

帰国枠入試での学校選びの手順とポイントを考慮して、受験対象となる学校をリストアップしてみましょう。同じ私立の「帰国生受け入れ校」であっても、教育方針や校風、指導体制は様々ですから、わが子の性格やご家庭の希望に合う学校かどうかが何より大切な条件になるはずです。
それらを調べてから、「ここなら良さそうだ」と思える学校の入試科目や試験の日程を考えながら候補を絞り込んでいきます。候補校が多い場合には、リストを見渡 し、候補校のタイプがあまりにバラエティーに富みすぎていないか振り返ります。希望する学校が「共学校か否か」、「進学校か大学付属校か」などの分類について、大まかな方向性を決めておくとよいでしょう。
また、通学時間・通学経路に不安がある学校は、無理なく6年間の学校生活が送れるかどうかという観点で、早めに候補から外しておくほうが無難です。
とくに海外での生活体験が長いと、日本の大都市の通学(通勤)電車の混雑に驚く場合も多いと聞きます。そして、そうした通学が厳しいと感じる子どももいれば、逆に「初めての電車通学が楽しみ」と感じる子どももいるようですので、わが子の希望やご家庭の方針に合った条件の私学を探すとよいでしょう。

帰国生入試と一般入試との両方を考える(条件的に両方の受験が可能な)場合には、どのような心構えでの準備が必要でしょうか?

帰国生対象の入試は、一般入試より早い時期に実施されることが多く、一般生より前に受験の体験ができることで、自分のレベルを判断するのに役立つほか、力試しや入試の場慣れの機会になります。いずれにせよ、受験できる機会をできるだけ生かすことで、入試本番に強くなることが可能です。
ただし、第一志望校だけは明確に定め、そこに照準を当てた準備をしていくことが大切です。
帰国生の受験を成功させるためには、できるだけ早くから準備すること、保護者と本人の意思(希望)をなるべく統一しておくこと、保護者間で役割分担を決めておくこと、などが不可欠です。
また、情報の見極めも大切です。身近な友人・知人関係だけからの噂話や、近隣エリアで伝えられる昔のイメージで学校を判断するのは危険です。
私立中高一貫校の多くは、数年前と比べても、その教育内容や成果を 充実・発展させているところが大半です。実際に、保護者がご自身で調べ、できれば足を運び、直接、見聞きした情報をもとに判断することが望ましいでしょう。

日本に帰国する予定が直前まではっきりしない場合、あるいは志望する私立中学校の「帰国生入試」とのタイミングが合わない場合には、どのように考えて準備するとよいでしょうか?

保護者がお勤めの企業によって、転任の内示や辞令が出されるタイミングは様々に違います。そのため、保護者(父親)のおよその帰国予定を推測して、帰国後のお子さんの進学・編入先を検討したり、中学・高校受験の準備を進めているご家庭が多いようです。 中学受験の場合には、その年度に受験する気持ちをある程度固め、保護者の仕事の都合で帰国時期が先に伸びた場合には、お子さんの中学進学時に合わせて、先に母親とお子さんだけが帰国するというケースも多いように思います。
帰国のタイミングが出願資格と合わないとか、学習面での準備が間に合わないなどといった場合、無理に中学受験に合わせて帰国せず、私立中学で(だいたい1学期と2学期の間の7~8月に)実施される転編入試験を受験するとか、あるいは高校進学時に帰国生入試 を受けるという選択肢もあります。3年間あれば、英語に十分磨きをかけておくこともできるでしょうし、中学入試よりも比較的容易に合格できる学校もあるようです。
しかし、ひとまず中学入試の段階で入試情報を集め、受験の準備を進めておくことは、高校入試の際にも無駄になることはありません。