受験生マイページ ログイン

学校特集

武蔵野大学中学校・高等学校2023

規範意識を持ち、かつ熱量高く「ウェルビーイング」を目指す人に
創立100周年の節目に、改めて、すべての基盤となる人格の陶冶とアカデミックマインドの醸成を目指す

掲載日:2024年1月5日(金)

 1924年創立の同校は、2024年に100周年を迎えます。その合言葉は「チャレンジ」。創立以来、人格教育をすべての基本としながら、何事にも果敢にチャレンジしていくマインドを育てています。2019年の共学化(高校は2020年)以降、さまざまな教育改革を更新中ですが、「熱量」と「規範意識」をキーワードに人格のさらなる向上を目指し、アカデミックマインドとチャレンジ精神を涵養する今と、今後の展望について、校長の中村好孝先生に伺いました。
※上の写真は、2023年の文化祭の後夜祭の様子

人としての基本を磐石にしつつ、
社会との繋がりを見据えた学びを実践

■コロナ禍で薄れた「熱量」を取り戻すため、
 エネルギーを拡散する「EX部」を設立

 コロナ禍では、さまざまな社会課題が浮上しました。学校生活の中でも、集団としてのエネルギーを発散する、いわば「集団熱」が各種の規制の中で希薄になったことは紛れもない事実です。そこで、同校では2022年、校務分掌の一つとして「EX(イーエックス)部」を立ち上げました。「熱量推進部」とも言えるもので、ここには「Extraordinary(非日常)」「Excitement(興奮・刺激)」「Exploration(探検・探究)」など、生徒たちが持つ熱量を引き出し、積極的に外(ex)へ放出していこうという意味が込められています。

武蔵野大学_高1の「LAM」にて。哲学対話を行う生徒たち
高1の「LAM」にて。哲学対話を行う生徒たち

「EX部」の取り組みとして、例えば、高1のスペシャル講座「LAM (Liberal Arts Musashino)では、企業から専門の講師を招き、学校の授業では体験できないWEBデザイン・空想地図・哲学対話など9つの特別講座を実施。また、これまでは探究活動の成果はクラス内で発表していましたが、2022年より全校生徒の前で発表する「Mu-1グランプリ」へと拡張させました。

 このような学習活動のほかにも、もっとワクワクする学校生活にしようと、2022年の文化祭から、今では珍しい「後夜祭」を実施。グラウンドに設置されたステージ前には全校生徒約2000名が集結し、文化祭の各部門賞の発表や、有志生徒による歌やダンスや演劇、先生方による出し物がサプライズで披露されるなど、まさに熱量が大放出された約2時間となりました。

武蔵野大学_校長の中村好孝先生
校長の中村好孝先生

中村校長:「2022年度は『熱量』をテーマに掲げましたが、後夜祭での生徒たちの様子にはEX部を作った最大の効果を実感できました。また、コロナ禍で得た課題としてはもちろんですが、今後はAIの時代と言われていることから、自分を律し、周囲と調和していくことがますます重要になります。ですから、2023年度は『熱量』とともに『規範意識』をテーマに掲げ、両立てを目指しています」

■「心」はどう教育できるのか?
 理屈を語るよりも風土を大切に

 2024年は、創立100周年。次代を見据えてチャレンジングな改革を推し進める同校ですが、100年が経ち、既存の価値観からの脱却を求められる今、ますます「自分を律し、周囲と調和していく」規範意識が重要だと校長は語ります。そして、「人格の向上は成績の向上に繋がる」とも。
 同校は宗門校であり、仏教精神に基づいた人間教育を大切にしていますが、とはいえ、心とはどのように教育できるものなのでしょうか。

中村校長:「知識として学ばなければいけない部分もありますから教育とも言えますが、理屈を語るのではなく、教員と生徒、生徒同士が日常的にコミュニケーションができる環境を作ることが大事です。つまり、学校全体を何でも語り合える雰囲気で覆っていかなければならないと思っています。そういう風土の中に身を置くことで、自分を見つめ、他者を思う心が育まれていくのではないでしょうか」

武蔵野大学_授業はもちろん、学校生活のすべてを通して人間力を磨いていく
授業はもちろん、学校生活のすべてを通して人間力を磨いていく

 校長は、一つのエピソードを教えてくれました。
 生徒が帰宅途中にあるお宅の前を通りがかった時、庭で倒れている方を見つけました。その生徒は動揺しましたが、救急車を呼び、事なきを得たそうです。そして翌日、そのお宅のポストに「大丈夫だったでしょうか」としたためた手紙を投函したそうです。

中村校長:「人格の向上を目指す、本校の教育が生きていることが嬉しかったです。その場で助けるだけでなく、心配し続け、安否を気遣う行動ができたのです。もちろん、その生徒が素晴らしいのですが、教員たちが普段から、言葉の中に人を思いやることの大切さを盛り込んで話していることもあるのだろうと思います。そういった一つひとつの教育活動が、学校の風土を作っていくのかもしれません」

 このようなことは、先生方はお礼の電話をいただいて初めて知るわけですが、生徒たちが、見ず知らずの困った人にも手を差し伸べることができていることは、先生方にとってこの上ない喜びでしょう。

武蔵野大学_講堂朝拝にて。同校の1日は「朝拝」から始まる
講堂朝拝にて。同校の1日は「朝拝」から始まる

 同校には全学年で毎週1時間、宗教の時間もあります。そこでは仏教について学ぶだけでなく、脳死や臓器移植などの科学技術と生命倫理に関する「生と死」について、または戦争や冤罪事件に関する「善と悪」などについて取り上げ、「なぜ人は生きるのか」「どのように生きるべきなのか」を考え続けていきます。つまり、宗教の時間とは、自分を見つめて考えを深め、広い視野を持って物事を捉える契機とする貴重な時間となっています。

■中学では「Global & Science」をテーマとし、
 高校では、希望進路別に3コース制を敷く

 中学では、全員が「Global & Science」をテーマに学びます。
 もちろん英語や科学的学習にも力を注ぎますが、ここで言う「Global」とは「変化の激しい時代の中で世界に貢献できる人」の育成を目指すということ。そのため、中学3年間は主にワークショップスタイルの授業を取り入れて、学びの土台となるアカデミックマインドの形成と強化を図っていきます。一方、「Science」とは「論理的・科学的思考力を養い、社会課題を解決しようとする人」の育成を目指すということ。多様な授業の中で身の回りの課題を明確にし、トライアル&エラーを繰り返しながら、解決するためのスキルを身につけていきます。
 そして、「PBL(Project Based Learning)」と「言語活動」(後述)を学習の要に据えて、「What?」や「How?」だけでなく、「Why?」を大切にした学びを深めていきます。

武蔵野大学_「PBL」では学年テーマに沿ったプロジェクトに取り組む
「PBL」では学年テーマに沿ったプロジェクトに取り組む

 高校では、高度な学力とコミュニケーション力を育む「ハイグレード」、PBLの手法を用いて深い学びを習得する「PBLインターナショナル」、武蔵野大学への進学も視野に入れた「本科」の3コースに分かれますが、非認知スキルを向上させるために専門企業とタイアップした「LAM」や、望む進路を実現するためにLAMで磨いたスキルを活かす「MAP(Musashino Advanced Project)」などを実施しています。
※中学の「Global & Science」の詳細はコチラ→
https://www.musashino-u.ed.jp/j-highschool/learning-jh/
※高校3コース制、「LAM」「MAP」の詳細はコチラ→https://www.musashino-u.ed.jp/j-highschool/learning-hs/


中村校長:「まだ十分ではありませんが、本校は社会との関わりを大切にしている学校です。社会の実態をさまざまな形で見せることで、自分たちの力で社会を変えていこうとする志を持った若者を育てなくてはいけません。ただ、教育と社会はもっと繋げていく必要があると思っています。そこで、自分自身を大切にすると同時に、自分と社会との関わりを考える姿勢を育てるために、中1〜3ではすべての学びの基盤となる『言語活動』という、本校オリジナルの授業を実施しています」

武蔵野大学_「言語活動」の授業で獲得したスキルは、すべての学びに活用できる汎用性がある
「言語活動」の授業で獲得したスキルは、すべての学びに活用できる汎用性がある

 2023年で5年目を迎えた独自授業の「言語活動」とは、英語で表現すれば「Language & Academic Skills」となります。教科の枠を超えた授業を展開しながら、思考やアイデアを可視化する「ブレイングストーミング」や「マインドマップ」、情報を整理する「ノートテイキング」、複数のアイデアを比較対照する「Tチャート」、「プレゼンテーション」など、多様な思考表現を学んでアカデミックスキルを身につけ、「課題発見」から「課題解決」へと向かう姿勢をすべての学習活動に活かしていきます。
 ちなみに2023年、この「言語活動」のオリジナルテキストがようやく完成しました。同校が積み重ねてきた教育内容が凝縮された、先生方の熱量と気概に満ちたテキストです。

「言語活動」はグループワークやワークショップスタイルで行い、中1は自己理解、中2は他者理解、中3では社会接続へと段階を踏みながら視界を広げて、各思考表現を使いこなす活動を深めていきます。例えば、2023年はオープンスクールを中3生が企画立案し、持ち寄ったアイデアを「安全策」とイノベーションを生む「ムーンショット」の2つに分けて練り上げました。

オーナーシップを持ち、
ポジティブ思考で社会に参画・貢献する

■世の中を変えていくには、
 ポジティブシンキングが重要

武蔵野大学_理想を現実にする。それが、生徒たちの未来の姿だ
理想を現実にする。それが、生徒たちの未来の姿だ

 校長は武蔵野大学教育学部の客員教授であるとともに、2024年度、同大に世界で初めて開設される「ウェルビーイング学部」の入試広報ディレクターも務めています。昨今よく耳にする「ウェルビーイング」は究極の世界観ですが、究極の世界課題とも言えます。実現が難しいことは誰もが知るところですが、理想に留めていては意味がありません。

中村校長:「日本財団の調査でも、日本の子どもたちの自尊感情や幸福度は低いとされていますが、問題なのは子どもたちではなく、大人です。教育です」

 よく話題に上るSNSでのトラブルを引き合いに出すまでもなく、残念ながら不安やジェラシーは私たちの身の回りにあふれています。「不安は怒りを起動します」と校長は言います。マイナスにスポットが当たると、プラスの面が霞んでしまう。
 例えば、子どもにはたくさん良いところがあるのに、成績が下がるとその欠けている部分ばかりに目が行ってしまう。保護者の方には、身に覚えがあるかもしれません。俯瞰力を持って正しく評価し、思考をポジティブなものに変換していくことができれば、もっと優しい社会になるのではないかと、校長は語ります。

中村校長:「煩悩と聞くと108という数字を思い浮かべると思いますが、その煩悩に『三毒の煩悩』と呼ばれるものがあります。それは『貪欲』『瞋恚(怒り、腹立つ心)』『愚痴』です。そこから脱出できないと、負のループに陥ってしまう。目先のものにとらわれて、真理を解することのない愚かな心を抱えることになります。日本人のスポーツ選手が、海外でそのパフォーマンスとともに立ち居振る舞いが賞賛されることもしばしばですが、同じ日本人として誇らしい気分になっても、「さて、自分はどうなのか」と今一度振り返ってみることが必要です。『三毒の煩悩』に囚われず、今こそ、もっと『ありがとう』や『おかげさまで』という心持ちに立ち戻らないといけないのではないでしょうか」

武蔵野大学_どの教科でも、ペアワークやグループワークを頻繁に実施
どの教科でも、ペアワークやグループワークを頻繁に実施

 だからこそ、ポジティブ心理学の研究が重要なのだと。心理学といえば、ネガティブなものへの対処法の研究が主になっているのが現状です。でも、精神疾患などを治すことと同様に、社会や通常の個人の人生をより充実したものにするためのもの、つまりポジティブ心理学の研究もっと進めていくことが必要なのだと。
 ちなみに、ポジティブ心理学を教えるハーバード大学の先生は、視点をポジティブなものに変換するための方法の一つとして「24時間以内に起こった良い出来事を思い出してください」と言っています。

中村校長:「実際、ポジティブな意識を持っている人の生産性は、そうでない人よりも30%高いというデータもありますから」

 このようなことを学問的に研究していくのが、武蔵野大学に新設される「ウェルビーイング学部」ですが、 考えてみれば、ウェルビーイングとは、同校が根幹に据える人格教育の目的そのものです。

■人格を磨き、学び続けて、
 ウェグビーイングに向かう姿勢を自ら育てる

 ところで、「ワールドスタンダード」という言葉がありますが、具体的にはどのような意味なのでしょうか。
 世界中の若者の大半が英語と中国語を話す現況では、共通言語としての英語や、次代に必須となるICT活用力など、技術や手段をワールドスタンダードと位置づけるのは理解しやすいのですが、それだけではなく、曖昧に使われているようにも思うのです。校長に聞いてみました。

中村校長:「日本人は、よく『今の日本はダメだ』と言います。もちろん、改善すべき点は山積みでしょうが、日本は日本として大切なことをやってきたことも事実なわけですから、過度に周りに振られることなく、自らを揶揄せずに、もっと自分の国に誇りを持って良いと思うのです。言ってみれば、それぞれの誇りやアイデンティティこそがワールドスタンダードなのではないでしょうか。技術と人格は違います。人格こそが、スタンダードなものだと思います。優劣をつけるものではありませんから」

 校長のお話を伺いながら、ふと、よく言われる「多様性」とは、こういうことなのかもしれないと思いました。さらに、それぞれが、それぞれの場所でウェルビーイングを希求し続けることこそが、ワールドスタンダードと言えるのではないかとも。

 そして、校長は今後に向けて「オーナーシップを持った生徒」の育成にいっそう力を注ぎたいと語ります。オーナーシップとは何か? それは、自分の人生の舵を取れる人のこと。つまり、自立した人です。

武蔵野大学_昨年の文化祭の後夜祭で、熱量を放出する生徒たち
文化祭の後夜祭で、熱量を放出する生徒たち

中村校長:「例えば、海外留学をするメリットは語学力が身につくことよりも、精神年齢が上がることだと言われます。たしかに、留学から帰ってきた生徒はたくましくなっています。つまり、これは自立の戸口に立ったからです。留学先では、すべて自分でなんとかするしかありませんから。自分の人生は自分で責任を持って守り、決め、切り拓いていく。生徒たちには、自立したうえで自分は何ができるか、どう社会に貢献できるかをポジティブに考えられる人になってほしいと願っています。人格を向上させるとは、究極はそういうことではないでしょうか」

 そしてまた、経験が積み上がっていけばいくほど視界が定まってしまう傾向があるため、大人になっても学び続けることが必要だとも。社会人の学び直しの機会でもある「リカレント教育」が言われて久しいですが、自分が過去に学んだ専門を今に照らして学び直すのではなく、もう一度視点をリセットして、第二の人生を楽しむために学ぶのだというくらいの心算で、と。そして何より、究極の世界課題である「ウェルビーイング」の実現に向き合い続けるために。

中村校長:「ですから、中高時代が『第一の自立』とすれば、生徒たちには『第二の自立』を目指せる大人になってほしいですね」

■100周年記念事業として、2つの大型施設が誕生!

 正門をくぐって、中高の校舎まで徒歩約5分。同じキャンパスに幼稚園から大学までが揃う広大な敷地に建つ同校は、吉祥寺の北西に位置しています。キャンパス内には1万1千本の樹木が生い茂るなど、四季折々の表情を見せる恵まれた自然環境も魅力の一つですが、そこに新たな魅力が加わります。


武蔵野大学_来年完成する「スポーツパーク」の完成予想図
2024年に完成する「スポーツパーク」の完成予想図

①2024年、地下付きの「スポーツパーク」が竣工予定
 校舎と第一体育館の間にあるスペースを利用して、各種施設が揃うスポーツパークを建設。
 地下には400台分の駐輪場がありますが、雨の日には、部活動のトレーニングをすることもできる施設になります。

武蔵野大学_全面ガラス張りの新施設の中心には図書館が
全面ガラス張りの新施設は探究活動で活用

②2025年竣工予定。「図書館機能を備えた創造的な学びの施設」(仮称)は全面ガラス張り
 校舎東側に南館と接続する形で、図書館機能を備えた新たな学びの施設が誕生します。新たな学習空間として建設されるのは、ガラス張りの4階建て。
 中心に配置されるのは図書館ですが、下の階から上に行くほど、生徒たちの行動が「動」から「静」に移行する造りになる予定だとか。ちなみに図書館ですが、ガラス張りだと本が日焼けしてしまいます。そこで、遮光ガラスを使用したり、季節によって異なる太陽光の角度を細かく計算して書架の配置を工夫するなど、まさに同校の熱量が反映された施設になりそうです。


資料請求はこちらから 学校ホームページはこちら 学校データベースはこちら