わが子の得意や長所をいかした中学受験スタイル Vol.1
my TYPE第15号(2025年11月24日発行)掲載
記事/首都圏模試センター 取締役教育研究所長・北 一成
公立中高一貫校の受検や、私立・国立中学校の受験にチャレンジする小学生と保護者の志望校選択の志向と、そのための受験準備のスタイルは、いまでは非常に多様化しています。そうした傾向を反映しているのが、ここ10年ほどの間に顕著になった「中学入試の多様化」です。「難関校に受かるには、小学校低学年から著名な進学塾通いをはじめないと無理なの?」とか「中学受験(受検)は、小6から準備を始めたのでは間に合わないのでしょう?」といった保護者の声や疑問を耳にすることがありますが、実際のところ、すでに時代は大きく変化しているのです。今回の特集では、中学入試の形態が多様化し、「誰にとってもチャレンジしやすい」状態に変わってきたことの背景や、そうした入試にチャレンジすることの意義をお伝えしていきます。
今回の記事は、Webにて3部構成でご紹介しています。
中学入試がここまで多様化した理由は
中学入試がここまで多様化した理由は、 将来の世の中と大学入試で 求められる力の変化!
今春2025年入試で、公立中高一貫校の適性検査の出題と似た形式やコンセプトの「適性検査(公立一貫対応)型入試」を実施した私立中はおよそ100校。何らかの形で英語を選択できる「英語(選択)入試」を実施した私立中は140校。そして「英語入試」以外の、「適性検査型入試」を含む何らかの「新タイプ入試」を実施した私立中は141校になっています。そして、これらのいずれかの入試をひとつ以上導入している私立中は、首都圏に約300校ある私立中高一貫校と私立中学校のうち、すでに200校近くまで増加しています。こうした、いわゆる「新タイプ入試(=ここでは、4科目・2科目の教科型の筆記試験以外の新しい入試形態)」が、これほど増加してきたのは、ずばり「将来の世の中と大学入試で求められる力」が、従来(保護者の時代)とは大きく変化したことによるものです。現在の小学校6年生が将来の大学入試にチャレンジするのは2032年。かつての「大学入試センター試験」に代わる「大学入学共通テスト」が大学入試に導入された2021年から11年後にあたります。そして、第2期大学入試(高大接続)改革ともいわれ、そのために導入された現行の『学習指導要領』のもとで学んできた最初の学年である高3生が大学入試に挑んだのが今春2025年でした。それからちょうど7年後にあたる2032年の大学入試は、いまよりもさらに大きく変化したものになることが容易に予想できます。
いまの小学生も学校で取り組んでいる、国連で掲げられた「持続可能な開発目標(SDGs=通称グローバル・ゴールズ)」の達成目標年度が、すでにその2年前の2030年と定められています。この目標に向けて、いま世界中の心ある学校や企業が、地球環境や世界の平和を守るために、一斉に努力や工夫を重ねて、教育も変えようとしているのが現状です。ましてや、「AI(人工知能)の能力が人間を超える」とされる「シンギュラリティー(技術的特異点)」の到来が2045年と予測されています。つまり現在の小学生が社会の中軸を担う時代は、いまとは大きく変化した(これまでの保護者世代が経験していない)世界になると考えられているのです。
中学受験準備のスタートはいつでも遅くない!
中学受験準備のスタートはいつでも遅くない! すべての小学生が受けやすくなった中学入試
ここでいう「将来の社会で求められる力」の大きな変化については、ちょうどいま社会の中軸を担っている小学生の保護者の世代の皆さんが、切実な課題として感じられているのではないでしょうか。つまりは、「将来の社会が変わる」⇒そこで求められる力を育むために「大学入試が変わる(大学入試を変える)」⇒その変化に対応できる力を育むために「日本の教育が変わる(日本の教育を変える)」という一連の課題が生じてきたのです。そして、こうした「教育の変化」を前提に、その入り口の入試で問う力(アドミッション・ポリシー)を新たなものにしていくために「入試の変化」も余儀なくされてきました。その変化を反映したのが、現在の「大学入試の変化」であり、それを先取りしたのが「中学入試の変化(=入試形態の多様化)」だと本誌編集部では考えています。少し前置きが長くなりましたが、この特集記事を通じて小学生の保護者にお伝えしたいことは、その「中学入試の変化(=入試形態の多様化)」をポジティブにとらえ、わが子の進路(=教育環境)の選択と、そのための準備を柔軟に考えて、その変化に新たなチャンスを見出していただきたいということです。従来の「4科目・2科目」の教科型の筆記試験を実施する入試レベル(偏差値)の高い最難関校や準難関校に合格するためには、早くからの有名進学塾通いが近道という近年の定説もあることはありますが、「それがすべて」と考える必要はまったくありません。
図は、いまでは、多くの私立中の入試のあり方の変化によって、小学生の誰もが「それぞれの受験準備スタイル」で、「それぞれの受験準備スタートの時期」に、それまで好きで打ち込んできた「習い事」などの活動とも両立しながら、「子どもたち一人ひとりの得意なことや長所を生かして」チャレンジしていくことが可能になったことをお伝えするためのイメージ図です。すなわち、それは「中学受験~合格」への道は、決して「早期からの有名進学塾通い」だけではなく、それぞれの小学生と保護者が望む「多様な価値観や志向に合った志望校選びと受験準備のスタイル」を選べる時代になったということです。
私立中の適性検査型入試
私立中の適性検査型入試は、 なぜこれほど広がった!?
公立中高一貫校の適性検査の出題形式に似た私立中の「適性検査型入試」が中学入試で急増した本質的な理由は、生徒募集対策よりも、むしろ「今後の大学入試の方向性を示唆」するものであり、小学生に求める力と期待することを示すものでもあったから。
公立中高一貫校の適性検査の出題は、 今後の大学入試の方向性を示唆するものに!
私立中のなかで「適性検査型入試」を実施する学校が、首都圏約300校のうち100校以上に増えたことの背景として考えられることのひとつは、私立・国立中学校の受験生総数が、2008年のリーマンショック以降、2014年まで7年続きで減少に向かった時期に、公立中高一貫校の志望者に自分の学校(私立中)にも目を向けてもらおうという狙いで、「生徒募集」対策の一環として導入に踏み切ったことです。しかし同時に、公立中高一貫校が実施した「適性検査」が、今後の「大学入試と教育の変化」の方向性に沿ったものであったことが、それ以上に本質的な理由でもありました。文部科学省が2016年頃に公表した、2021年からの「大学入学共通テスト」のサンプル問題が、2005年以降に各地(都府県)で数多く開校されていた公立中高一貫校の「適性検査」の出題形式と酷似していたことが、多くの関係者に注目されました。
図は、本誌7月13日号の特集でもご紹介した、やはり文部科学省が公表した、「今後の大学入試で問われる新たな学力観」を示したモデル図です。このとき、これまでの大学入試で問われる力の中心であった「知識・技能」から、「思考力・判断力・表現力」が、新たな「大学入学共通テスト」では重視されることがクローズアップされました。記憶されている保護者もいるかもしれません。その後、全国の高等学校の教育現場では、この「思考力・判断力・表現力」が、その後の学校教育と進路指導にあたってのキーワードとなっていったのです。つまりは、すでに大半の公立中高一貫校で導入~実施されていた「適性検査」の出題形式とコンセプトは、その後2021年1月から導入された新たな「大学入学共通テスト」の方向性を示したもので、「大学入試改革を先取り」したものでもあるという見方が教育現場に広がっていったのです。そのために、多くの私立中高一貫校と私立中学校が、今後の大学入試のあり方に対応できる力と、そうした力を育てる教育に向けての試行錯誤をはじめ、それにつながる中学入試のテストパターンとして、「適性検査型入試」を導入する運びとなっていったという見方を本誌編集部ではしています。
公立中高一貫校が小学生に求める力と、 新たな大学入試での評価方法のイメージ
そうした公立中高一貫校の適性検査で受検生に求められる力を示す一例として、これも本誌9月21日号の巻頭特集のなかに掲載した、「都立中高一貫校が求める『3つの力』と、小学生に期待する『4つの準備』」というコラム(元・都立桜修館中等教育学校校長・石坂康倫先生による)を再度ご紹介しておきます。さらに、関心のある方は、下の「大学入試で測られる『知識・技能』『思考力・判断力・表現力』とそれらを評価する方法のイメージ図」もご覧いただくと良いでしょう。

中学入試情報誌『MyTYPE』とは
『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年11月24日発行のmy TYPE第15号に掲載しました記事をご紹介します。
Vol.2につづく
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