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【2023年入試レポート】静岡聖光、3年目のBIGIRION入試

1月8日午後、静岡聖光のBIGIRION入試が行われプログラミング作品に込めた思いが語られました。

1月7日に始まった静岡県の2023年中学入試。静岡聖光学院(男子校・静岡市)では、教科型入試のほか、21世紀型入試、BIGIRION入試など多様な入試を行っています。寮のある学校で、本校以外に東京でも入試を実施していますが、BIGIRION入試は8日午後に本校で行われ、県内外から6名が受験しました。(取材・文 / 市川理香)

目指す生徒像を入試に投影

入試は、学校がめざす生徒像を実現する素養に光を当てます。静岡聖光学院の目指す生徒像は、

・快活と素朴
・思慮深い心
・探究心に基づく緻密さ
・真摯な態度

という言葉で示されています。

「個(タレント)を大切にして、むしろ尖らせて卒業させるのが、この学校の伝統。その良さを際立たせるのが多様な入試」というのは校長補佐の田中潤先生です。そして、静岡聖光学院の「学びのルーブリック」(図参照)を入試に投影した時、「自己」に当たる部分は筆記型の入試でみることができますが、「他者」との関わり、「社会・世界」との関わりまで広げた入試が21世紀型入試、BIGIRION入試であると説明します。

BIGIRIONは、 BI=美術、GI=技術、RI=理科、ON=音楽を組み合わせた造語。その名の通り、論理的思考の理数教育とクリエイティブで直感的な思考力を育む教育を横断する学びです。静岡聖光学院のSTEAM教育の中心であり、社会や世界の課題解決のための必要な知識、技能、方法を身につけることを目指しています。
その学びを落とし込んだBIGIRION入試は、自分で作ったプログラミング作品(言語は自由)のプログラムデータ・実行動画と説明文を事前に提出し、入試当日に面接で作品を説明するというものです。

事前に「思考と創作のプロセス」を明示

2021年から始めた新しい入試で、2年目の昨年は作品テーマMan for others 〜誰かの笑顔のために」を設定し、「評価の観点」(プログラミングの正確性、創造性、デザイン、世界観)を示しました。3年目となる今年は、同テーマを継続しつつ、観点からもう一歩踏み込んで、「思考と創作のプロセス」(図参照)を事前に公表し、求めるレベルを明確にしました。そのため受験者数の減少は想定内でした。一方で面白いものが出てくるだろうという期待はあり、予想に違わず「よく考えているな」という印象を小森雄斗先生(情報科・BIGIRION担当)は持ったそうです。

出願が締め切られた後、BIGIRION担当の9名の先生方が全受験生の作品と提出物を見て、4つの観点それぞれに設定したA〜D四段階の評価基準(ルーブリック)にそって採点し、結果を持ち寄り事前会議が行われました。ルーブリックがあっても単純に白黒つけられるものではないので、採点の根拠や疑問を共有し議論する場で、事前の提出物からだけでは読み解けないものを入試当日の面接で“受験生から引き出す”準備をしておく、というわけです。

面接もこのリーブリックに基づきますが、作品について、「工夫した点は?」「どうやって実装したのか?」「なぜこの作品を作ろうと思ったのか」「誰のためのものか」「その人は笑顔になったか」「工夫したところは?」という質疑応答が進むうちに、作品動画や説明シートだけでは窺い知れなかった受験生自身の想いの丈がとき解されていきました。

誰のために何をしたいのか

面接で語られる言葉には、課題の取り組み方の真剣味、制作過程での苦労やワクワク感など、静岡聖光学院が目指す生徒像への適性が図らずも現れます。「結果によらず意味のある入試。なぜなら子どもたちは思考と創作のプロセスを経験して成長するから」と田中先生は言います。2023年は、プログラミングの技術を評価する以上に、「観察する→課題設定する→仮設を作る→試してみる。遊んでみる→結果を点検。次へつなげる」想像と思考のプロセス、つまり「どういう課題に気づいたのか」「どんな試行錯誤をしたのか」「どう改善したのか」、そして「それは本当にやりたいことなのか」、課題に自分ごととして向き合う姿勢が評価を分けたと言えそうです。

そもそも問いを見つけること自体は、決して易しいことではありません。
田中先生は言います。「世の中を見つめて問題点を発見し、その問題点から自分の理想を逆算すると課題に気づきます。逆算することができた時、良質な問いが生まれたり、前に進んだりすることができるものです」。今年のBIGIRION入試の受験生が取り上げた課題も同じものはひとつもなく、「身の回り半径30センチの課題から地球規模の課題まで」(小森先生)幅広いものでした。

2024年入試のテーマは6月に公開

静岡聖光学院では、2023年度から中学2年でプログラミングも組み込んだゼミを展開する予定で、昨年11月に締結した静岡大学との中高大連携協定にも期待が寄せられます。

2024年入試では、BIGIRION入試の定員増や、事前に評価基準(ルーブリック)を公開すること、テーマの公開時期を6月の学校説明会に前倒しすることを検討していると明かしました。「地の塩 世の光」として自分の賜物を使って世の中に貢献する、その懸け橋がプログラミング。BIGIRION入試は学校の求める生徒像が明快に現れた入試でした。