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LOVELY LIBRARY第12回・清泉女学院の図書館《司書への道と、読書の楽しみ方》

情報誌『shuTOMO』11/3号の清泉女学院中高「LOVELY LIBRARY」の特別編です。

司書教諭の新美和子先生と金澤茜先生に伺った「司書への道と、読書の楽しみ方」を、特別編としてWebでお伝えします。取材・撮影・文/ブランニュー・金子裕美〉

私には教室よりも図書館が向いている

--なぜ司書教諭になったのですか。

新美先生:私は本が好きな家庭で、本好きに育ちました。近所の本屋さんが定期購読本を毎月届けにきてくれる日を心待ちにしている子どもでした。また、デパートがあるような街に車で出かけた時に、大きな書店で1冊だけ、自分で選んだ本を買ってもらえるのも嬉しかった。ずっと本は身近だったので、大学では司書教諭の資格と社会科の教員免許を取得しました。大学院で歴史を学び、就職を考えた際に、自分が教壇に立って、担当教科を責任をもって教えることは難しいと実感しました。学生時代の私は、生徒の疑問に答えられる教養にあふれた先生が好きで、知識に裏打ちされた授業で学ぶ楽しさを具現化、体言化できる人こそが「先生」だったからです。複数の選択肢の中で、本と人をつなぐ仕事であればお役に立てるかもしれないと思い、司書の仕事を選びました。偶然にも母校に職があって今に至っています。

図書館で働くことが幼い頃からの夢

金澤先生:私が図書館で働きたいと思ったのは、初めて地元の公共図書館を訪れた小1か園児の頃だと思います。母が本好きで、家にもたくさん本はありましたが、図書館に行くと見渡すかぎり本で、ここで働きたいと思ったのが初めての記憶です。小さかったので、そこで働いている人がどういう人か、というところまでは考えが至らぬまま小学校高学年になり、図書委員になりました。その時にカウンター当番をしたり、図書館の本を読みました。そこには大好きな作家さんの本が3冊しかなくて、もっと読みたいと思いました。私立の中学校に入り、生活範囲が広がって市の中央図書館に行くと、紙ではなくパソコンで図書検索ができました。そこで、小学校時代に学校図書館で検索した作家さんの本を検索してみると100冊以上ヒットしました。その時に、図書館によって蔵書に差があることに気づきました。

 図書館司書という職業を知ったのは、自分の進路を考えるようになった頃です。文理選択や将来の目標を立てなければならなくなり、図書館司書という職業を知って、私にぴったりの職業だな、と思いました。その頃「この先、すべての学校図書館に司書を置く時代が来る」という情報に触れて、司書は求められる職業になるのか、と思い込み、司書教諭の資格が取れる大学を選んで進学しました。司書になるために生きてきたのですが、ある時、なりたい人に対して募集が少ないことを知り、大学時代に図書館司書、司書教諭の資格と、国語の教員免許を取りました。教育実習がすごく楽しくて、教員にも惹かれるなか、「文字に関わる仕事」をテーマに就職活動をしているうちに本校と出会いました。いろいろな人に「司書になりたい」と話していたら、どこかでつながって実現したので、生徒には「いろいろなところでいろいろな人に『私はこういう人になりたいんです』と伝えなさい。そうすればつながることがあるから」と伝えています。

図書館の役割を果たせた時に感じるやりがい

--司書になってよかったと思うのはどんな時ですか。


金澤先生:やはり生徒に「私も司書教諭になりたい」と言われた時ですね。涙が出るほどうれしかったです。我々の姿を見て、その子は司書になりたい、と思ってくれたのだと思うので、「報われた」と思いました。そのためにやっているわけではありませんが、とても嬉しかったですし、この仕事をしていてよかったと思った瞬間でした。


新美先生:私は知識偏重主義なので(笑)、生徒が図書館に来て、求めていたものが何らかの形でその子に反映されたとわかった時に、司書教諭としての仕事に私が関われてよかったと思います。図書館は基本的に待ちの姿勢。だからこそ一人でも多くの生徒に居心地の良さや、求めていた本との出会いを提供できたとき嬉しいですし、そうするのが私たちの仕事だと思っています。


金澤先生:図書館では学年を超えて友情が生まれることも多々あります。その瞬間を目の当たりにした時も、ここにいてよかったなと思います。

読書は自由に選んで読めるから楽しい

--子どもたちが本に親しむためのヒントがあれば教えてください。


新美先生:読書は娯楽です。自由に選んで読めるから楽しいのです。強制されたら何でも嫌になりますよね。宿題で読むと面白い本も面白くなくなる…。


金澤先生:私も読書感想文を書くための読書は好きではなかったです。


新美先生:ですから強制しないで、子どもが興味を示したらぜひその本を与えてほしいです。


金澤先生:子どもが楽しんでいたら、保護者の方も一緒に楽しむといいと思います。私も今、娘が『銭天堂』にハマっているので一緒に読んでいます。「カリスマって何?」など、知らない言葉が出てくるとそこから会話が生まれます。一番いいのは保護者の方が楽しんでいる姿を見せることだと思います。「それ、おもしろい? 」と聞いて来ますから。


新美先生:本気は伝わりますからね。ただ、読書が苦手な方もいると思います。そういう方は、子どもが「読みたい」と言ったら遮らないで、子どもが興味を示した本を与えたり、読んであげたりして、喜びを共有してみてください。好きなものを共有できるっていいですよね!

大人も読書を楽しもう!

金澤先生:音読はいいですよね。子どもにとって音読してもらうことは特別らしく、私は『ケーキの切れない非行少年たち』を度々音読させられています。音読には自分の目で読むのとは違うおもしろさがあるのかもしれません。絵本は語感がおもしろいので、それを口に出して、一緒におもしろがることもできると思います。


新美先生:絵本はエッセンスなので、心を柔らかくする効果もあります。


--新美先生の幼少期のお話にあった、出かけた時に子どもに1冊本を選ばせる、という方法はいいな、と思いました。我が子がどんな本を選ぶのか、楽しみですよね。


新美先生:公園に行って「好きな遊具で遊んでいらっしゃい」と言った時に、ある子はブランコ、ある子はシーソー、と分かれますよね。それと同じです。私は図鑑が好きだったので、どれがいいか毎回、かなり悩みました。


--なるほど、書店や図書館は遊び場だと思えばいいのですね。


新美先生:そうです。本にはいろいろな情報が詰まっているので、自分の知的好奇心を満たしてくれそうな本なら、多少難しい本でもそういうものだと思って読みますよ。

--子どもの頃は図書館をよく利用していましたが、高校生あたりから読書の時間が減ってしまい、最近手に取る本は実用書ばかり。今になって「この本、良かったよ」と人に薦められるような作品をもっと読んでおけばよかったと思っています。


新美先生:今からでも遅くないですよ。本の良いところは腐らないで待っててくれるところです。


金澤先生:そうですね。本はずっとそこにいてくれるので。


新美先生:読んでみて、「学生時代に出会っていれば、もっと愉しめたのに~」と残念に思ったりするのも一興。どのタイミングで出会っても、それが本との出会いです。


金澤先生:大人になって読んだからこそわかる、ということもあります。生徒が「わからなかった」と言ったら、「大人になったらわかるよ」と言っています。


新美先生:中高時代、私は若気の至りで文豪の作品を読むことは勉強だから絶対に読まないと決めていました。大学生になって、胸を張って「三島(由紀夫)の『金閣寺』を読んだことがない」と言ったらあきれられて、悔しくて読んでみたところ、「ここまで人の心の闇を文章化できる三島とは一体!」と衝撃を受け、他の作品も読み漁りました。その後、かなり経ってから、ふと思い立ってもう一度、読み返してみたのですが、拍子抜けするぐらい、全然響かないのです。以前、自分が感動した場所が見つからない、という体験はおもしろかったです。出会いのタイミングですね。...

金澤先生:私も目線は変わりました。『赤毛のアン』を、当時はアンの気持ちで読んでいましたが、今は完全にマリラ(アンの養母)の目線で読んでいます。『氷点』(三浦綾子)も、陽子の視点で読んでいたのが、今は完全にお母さんの夏枝の気持ちです。「夏枝だって人間なんだ」「過ちを犯すこともある」「みんなで責めなくてもいいじゃない」と思います(笑)。本は変わってないのに、自分が変わったことにより感じ方が変わるという経験は、なかなかできるものではないと思います。

--何から読めばいいのか、迷ってしまうんですよね。

金澤先生:興味のあるものを読めばいいと思います。

新美先生:本屋さんに平積みしてある本から選んでもいいですし、かつて読んだことのある作家さんの新作でもいいと思います。

金澤先生:昔、読んでおもしろかった本をもう一度読み返してみては? 読書は自転車と一緒で、しばらく読んでいないから読めなくなっているということはありませんから。当時のときめきを呼び覚ますところから始めて、それを呼び水にして、次へ行くという方法も一つだと思います。