洗足学園中学・高等学校

海外大学にも果敢に挑むチャレンジ精神と実力を育て、英語で思考する力とコミュニケーション力で群を抜く未来型グローバル志向の女子進学校 _

洗足学園は、東急田園都市線の溝の口駅から徒歩8分ほどの閑静な場所にあります。川崎市宮前区や横浜市青葉区など、帰国生が多く住むエリアからのアクセスが便利であるということもあり、年々人気が上がっている女子校です。神奈川ではフェリス女学院に迫る難関校の位置にありながら、東京エリアともいえる港北地区で、東京と神奈川からハイレベルの英語力を持つ女子帰国生の人気が集中している同校の帰国生教育の様子を今回は見せていただきました。

幼稚園から大学院までが集まるキャンパスは、斬新なデザインの校舎が印象的です。校舎の中に入ると、開放的で明るい雰囲気のエントランスが広がり、来訪者を楽しい気分にさせてくれます。

洗足学園が帰国生に支持される理由

_ 私たちを案内してくださった校務主任の玉木大輔先生は、洗足学園の人気の秘密について、大きく二つの要因を挙げていました。一つは帰国生教育を本格的に始めてからの歴史です。現校長の前田隆芳先生が帰国生教育の道を切り拓いてから25年ほどが経過するそうです。その25年の歴史の中で、ノウハウを蓄積してきたことが洗足学園の強みの一つです。そしてもう一つは、グローバル化する社会に対応した教育内容です。英語教育が強いことはもちろんですが、英語だけでなく、他の科目にも力を入れていくという教育方針が評価されているのではないかと玉木先生は分析します。実際、いくら英語が強くてもグローバルな教養を身につけていなければ英語ネイティブと伍していくことはできません。

洗足学園では、そのような人材を育てるために、数年後には文理の区別をなくす方向で準備を進めているとのことです。経済学をやるにも統計をやるにも数学は付いて回りますし、医者になるにも患者さんとのコミュニケーションがある以上、文系の学びも大切になります。単に職業に役立つということ以上に、リベラルアーツとして、ものの考え方や人の生き方に関わってくる学びをすべて大切にしようとしているわけです。

帰国生入試の制度について

_ 帰国生入試は、受験直前まで海外に滞在していて英語力が強い生徒を重視するA方式と、海外滞在期間がそれほど長くはなかった生徒、あるいは帰国して数年経過している生徒を選考するB方式とがあります。A方式で入学してくる生徒の英語力が年々上昇しているだけでなく、B方式で入学してくる生徒も、国語や算数の得点が高くなっているということです。帰国生が選ぶ神奈川の女子校として、洗足学園は人気・レベルともに最高峰に位置する学校になっているのです。

試験科目はA方式が英語のみ、B方式は英語に算数と国語が加わります。どちらの方式でも、英語の面接が行われます。筆記試験でライティングを課さない分、面接で英語の表現力を見るということです。礼儀とか態度などは評価の対象とはせず、あくまでも英語による表現力を重視しています。

受験生にとって入試というのは、実際に体験をしてみないと分からない部分が少なくありません。筆記試験であれば過去問を配ることを通して問題傾向を伝えることができるけれど、面接の場合はそれが難しい。ならば、実際に面接を体験してもらうのが近道なのではないかということで洗足学園では模擬面接というイベントを受験生向けに行っています。模擬面接を行うことで、面接でのポイントを事前に伝えることができ、有効な「過去問代わり」になっているようです。

帰国生の英語クラスについて

_ 帰国生向けの取り出し授業は、アドバンスクラスとレギュラークラスの2レベルで行われます。このレベル分けは、どの方式で入学したかということとは関係なく、あくまでも英語力のレベルで分けるということですから、B方式で入学した子がアドバンスで受ける可能性もあれば、あるいは、一般入試で入って来た生徒でも、海外体験があったり英語力が高かったりする場合は、帰国生クラスの英語を受ける可能性もあるわけです。

 

洗足学園が帰国生保護者に支持を受けている理由の一つに、カリキュラムや教材へのこだわりがあります。英語力をキープするとか落とさないという次元ではなく、海外に住んでいた頃よりもさらに磨きをかけるということを前提にして教材が選ばれているということです。 現在のカリキュラムや教材選定の礎を築いたネイティブの先生は、アメリカ全土の学校現場で指導していたこともあり、アメリカ東海岸から西海岸に至るまで、様々な指導法や教材に精通していたそうです。その関係で、文法的なことや語源的なアプローチを重視する方法論と、全体を概括的に理解する方法論を統合させたプログラムが構築されたということです。

_ それぞれの先生が個人的に良いと思う教材に依存するのではなく、洗足学園としてスタンダードとなるカリキュラム・教材を有しているという点が、洗足学園の帰国生英語教育の強みの一つでしょう。そこにはディレクターと呼ばれる、ネイティブの先生を統括する立場の先生がいるということも大きく関わっています。学校としての英語教育の方針を一つにまとめ、それぞれの先生の教える方向がバラバラにならないよう配慮されているわけです。

帰国生英語の授業内容

_ 授業見学へと移動する前に、たまたま授業の空き時間だったEvan先生に授業内容についてお話を伺うことができました。 授業では文学作品を扱い、それについてのディスカッションをすることが基本だということです。生徒は、詩や戯曲、短編小説などの部分を授業までに読んでくることが課され、授業では登場人物や文章表現、また時代背景などについて議論し、理解を深めていくというスタイルです。 15人から20人程度のクラスというのは、ディスカッションでの議論が盛り上がり、活発に意見を出し合うのにちょうど良いサイズだとのことです。ノンフィクションも扱うことがあり、そこでは時事問題などにも触れるのですが、中学生のうちはフィクションが人気とのことでした。

ちょうどEvan先生をインタビューした図書館は、帰国生がリサーチをしているところでした。図書館の書棚には洋書がずらりと並び、英語でのリサーチに対応するべく英語の蔵書を増加させているようです。

_ 洗足学園は宿題が多い方だそうですが、帰国生もまたリサーチなどの宿題が多いとのことです。しかし、それを生徒たちがむしろ楽しんでいるように見えるところがこの学校の強さです。 ところで、Evan先生の言う文学には、歴史や哲学も含まれています。「グレートギャッツビー」の作品について議論する中で、古代ギリシアの哲学者に言及したエッセイを読んだり、あるいは、カミュの「異邦人」を読みつつ、実存主義という思想に触れたりするということです。

アカデミックで、かつ楽しい雰囲気の授業

_ 続いて、帰国生英語のディレクターを務めているMatthew先生の授業を見学させていただきました。単語の語源や語根に触れながら、新しく覚えるべき英単語を確実に記憶に定着させていきます。ギリシア語やラテン語起源の語根に触れるアカデミックな内容ですが、明るく楽しい雰囲気を維持しているのは、生徒の発言が多いことによるのかもしれません。 語源などの知識を教える授業というのは、えてして一方通行になりがちですが、Matthew先生は、巧みに生徒からの発言を引き出していきます。すでに学習した語根を思い起こさせながら、新出の英単語の意味を推測させていくのです。つまり、覚えることが考えることと一体化していて、思考で得た気づきによって記憶が定着するという仕掛けになっています。さらに、楽しい雰囲気というのも重要な要素です。クラスの中で時々生徒たちに笑いが起きるというのは、それだけ脳がリラックスしている証拠で、そのような状態であるからこそ、記憶の定着にも良い効果があるのでしょう。

授業後半は、読み進めている文学作品についてのディスカッションとなりました。モリエールの戯曲の1場面を題材に、生徒の感想を引き出しながらテンポよく授業を進めていきます。 Evan先生の取材でも文学について触れていましたが、英語の授業は、ランゲージアーツの考え方が浸透しているように思われます。つまり、外国語学習というよりは、文学作品から様々な方向へと対話が拡がっていく授業が行われているのです。作品の舞台となった時代を調べ、その時代を支配していた考え方に思いを巡らせたり、あるいはまた、登場人物を通して、人の性質について考えるきっかけを与えたりしてくれるのが文学作品です。ですから、先生が一方的に作品の表現について解説を行うという光景はほとんど見られず、生徒との対話をし、また生徒同士の議論のきっかけを提供しながら授業が進められているのです。

海外大学を含めた多様な進学先

洗足学園では、昨年ハーバード大学への合格者を輩出しました。この結果について玉木先生に伺うと、この生徒は英検1級を所持し、英語力が高いことはもちろんですが、学校外の活動にも積極的に参加する生徒だったそうです。そのような活動を理解し、サポートするというのも洗足学園の強さの一つです。 海外大学進学については、ふだん指導をしている先生以外にも専門のカウンセラーがアドバイスを行っていて、さらに、TOEFL対策や、インターネットを利用して自宅で受講できるSAT講座なども自由選択講座として用意されているなど、海外大学への進学サポートが充実していることはもはや洗足学園にとって当たり前と言ってもよい環境なのです。

_ もちろん国内の大学を目指す生徒も大勢いますが、英語が強い大学に限定せず、文系にも理系にも進学できるような体制を用意していることも洗足学園の特長です。たとえ私大文系を志望校とするのであっても数学を最後まで履修することは決して不利になることはありませんと玉木先生は強調します。そのことは、慶應義塾大学の合格者数93名という今年度の合格実績が証明していると言えるでしょう。そういった合格実績に対する自信が、洗足学園の教育の質をさらに深化させていくことにつながっているわけです。