海外在住のご家庭

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現在、海外にお住まいの小学生と保護者の皆さまにご覧いただきたい、中学受験のための「帰国生入試」の情報です。

「帰国生受け入れ校」は増えている

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、これまでの日本の教育を大きく変える契機となる可能性のある「2020年大学入試改革」が実施されます。
2018年から先行実施も始まっている次期学習指導要領の英語導入は、小学校3年から「外国語活動」、5年生から教科化され、大きな転換点を迎えています。移行措置絵を経て2020年には、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニングの実施)」、「小学校でのプログラミング教育の必修化」を盛り込んだ新学習指導要領の完全実施となります。
こうした改革の背景には、グローバル化する世界の動きがあります。当然のように、教育環境も多様化(=ダイバーシティ化)する必要性が叫ばれるようになっています。
そうした時代の要請のもとで、海外での在住経験のある「海外帰国生(海外帰国子女)」といわれる子どもたちへの期待は、これまで以上に大きくなっています。

たとえば首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城など)には現在、約350校の私立・国立・公立中高一貫校がありますが、そのなかで約140校(約40%)が、中学入試でも帰国生入試を行っています。一般入試で何らかの配慮をする学校を加えると、その数はさらに多くなります。
2019 年入試に向けても、10数校が、新たに帰国生入試を実施したり、日程を追加したりする予定です。その2019年の首都圏における「帰国生(別枠)入試カレンダー」のページをご覧ください。

各中学校の「帰国生(別枠)入試」の受験資格を調べておこう

そうした中学入試段階での、私立中学校の「帰国生入試」の受験資格は、おおむね「海外在留1年以上、帰国後2年以内」というのが平均的な条件になっていますが、なかにはそれ以上に受験資格を広げて(帰国後3年以内など)いる私立中学校もあります。たとえば東京都の私立中学高等学校協会では「帰国後3年以内」という条件を、「帰国生(別枠)入試」の受験資格の目安として申し合わせています。
したがって、現在海外にお住まいで、お子さんが現地校やインターナショナル・スクール、もしくは各地の日本人学校に通っているご家庭では、日本への帰国に際しては、そうした帰国生受け入れ校や「帰国生入試」の受験資格を幅広く調べておくとよいでしょう。
帰国後にお住まいになる地域から通学が可能な私立中学校や、あるいは保護者の再びの海外赴任に備えて、寮のある私立中学校を調べておくことで、帰国後にお子さんを通わせる学校を的確に選択することが可能になります。
また、そうした情報と合わせて、入学後の受け入れ体制や、各教科の学習サポート体制などを調べていくことで、わが子に合った帰国生受け入れ校を見つけることができると思います。

大きく分けて2つのタイプがある「海外帰国生(別枠)入試」

いま国内で実施されている「帰国生(別枠)入試」には、大きく分けると、次の2種類のタイプがあると考えられます。

①一時期、英語圏の国々に在留し、現地の小学校やインターナショナルスクールで英語力を身につけた子どもたち(非英語圏でも英語で授業が行われるインターナショナルスクールなどで学んだ子どもたち)の英語力を評価し、そうした子どもを受け入れて、さらにその子たちの英語力を伸ばすと同時に、国内で育った一般生と異文化を体験している帰国生とが相互に刺激しあう環境を作りたいと考える学校(入試)。
② 英語圏の国々に限らず、海外の現地校、日本人学校で貴重な海外生活の体験をしてきた子どもたちの感性や自己表現力、積極的に意見を発信する力、異文化体験などを評価し、帰国生を受け入れることで、多様な体験、バックボーンを持つ子どもたちが共存する教育環境の実現(="ダイバーシティ化")を図ろうとする学校(入試)。

このうち①のタイプの学校(入試)では、「帰国生(別枠)入試」の科目や作文のひとつに英語が課され、国語・算数などの基礎学力以上に、受験生の英語力を重視して合否が決められます。典型的な例としては、頌栄女子学院〈東京都港区・女子校〉、洗足学園〈神奈川県川崎市・女子校〉の帰国生A方式入試、渋谷教育学園渋谷〈東京都渋谷区・共学校〉の「英語・国語・算数・英語面接」選択入試、などがあげられます。2014年には聖光学院(神奈川県・男子校)が英語の配点を引き上げ、2016年には多くの学校で帰国生入試に英語選択を導入する動きが続いたのも、記憶に新しいところです。
一方の、②のタイプの学校(入試)では、「帰国生(別枠)入試」の科目に英語や外国語を含まず、一般受験生と同様に、国語・算数の2科目か、あるいは国語・算数・社会・理科の4科目の学力(筆記試験)で合否が決められます。「帰国生(別枠)入試」に4科目を課すケースは少なく、国語・算数の基礎学力を中心に合否が決められるケースが大半と考えてよいでしょう。

「帰国生入試」を一般生と分けた別枠の形にせず、一般入試と同様の形で帰国生入試を実施し、帰国生に対しては何らかの配慮(多少の加点や面接などの要素を考慮)を加える学校も、こうした「国・算」の基礎学力型のタイプの入試と考えてよいでしょう。

首都圏の中学入試は、1月10日埼玉、1 月20日千葉、2月1日東京・神奈川でスタートします。いずれのタイプの「帰国生(別枠)入試」も、現在のところ、各都県の中学入試がスタートする(解禁となる)日よりも前に実施することが認められていますので、早い学校では前年の10月から「帰国生(別枠)入試」がスタートし、一般入試スタート直前の1月末まで多くの私学で行われているのが現状です。

海外帰国生には、一般の中学受験生より多くの受験チャンスがある!

このように、「帰国生(別枠)入試」には、大きく分けて2つのタイプがあるなかで、毎年の帰国生(の受験資格に該当する小学生)は、10月~翌年1月末にかけて、受験可能な、志望校のひとつに考えられる私学の「帰国生(別枠)入試」を複数校受験し、その結果に応じて、2月1日からの一般入試にもチャレンジしていくという形が一般的です。
もちろん「帰国生(別枠)入試」で合格できた場合には、同じ学校の一般入試を受ける必要はありませんが、入学手続きは、各校の定めに従い行っておく必要があります。最近では、帰国生入試の入学手続き期間を一般入試の手続き期間に合わせて長く設定する学校も、徐々に増えています。受験する年の最新情報を確認するようにしましょう。
日本女子大学附属慶應義塾湘南藤沢のように、2月1日以降の一般入試と同日に帰国生入試も実施しているところがあるため、多くの受験生は、そうした2月1日以降の受験チャンス(一般・帰国)も生かしていけることになります。
つまり、「帰国生(別枠)入試」の受験資格がある中学受験生は、一般の(国内の学校に通ってきた)中学受験生よりも、多くの受験チャンスがあることになります。それならば、この特典を生かさない手はありません。海外在住年数や日本への帰国後年数の条件は目安こそあれど、学校ごとに異なりますので、数え方に不安や疑問がある場合は、各校に個別に相談されると良いでしょう。

現在、首都圏の中学入試では、男女とも「一人あたり平均5~6校を受験(出願)する」のが一般的ですが、帰国生の場合はこれ以上に多くの学校を受験(出願)しているのが現状です。それだけ多くの学校を探して(各校の教育内容を調べて)受験するのは大変と思われる方もいるかもしれませんが、「1校が平均3回の入試を実施している」現状のなかで、「受験できるチャンスをできるだけ多く生かす」ことが、合格へのカギになっていることも事実です。
もし親子で気に入った学校があり、その学校が一般入試と「帰国生(別枠)入試」を実施しているならば、この学校の帰国生入試と一般入試を受験することを軸にして、帰国生(別枠)入試の併願と一般入試の併願とを組み合わせて受験するという形でもかまいません。現に、首都圏の帰国生入試では最も高い人気を集める洗足学園や渋谷教育学園渋谷などは、こうした受け方でチャレンジしている受験生も少なくありません。
また、たとえば保護者は仕事の都合により、まだ帰国の予定がなく、父または母とお子さんが先に日本に帰国するようなケースで、帰国のタイミングを計っている場合には、志望する(関心のある)私立中高一貫校の「帰国生(別枠)入試」の受験資格をあらかじめ確かめておいて、受験時にうまく該当するタイミングで帰国するというもの、ひとつの方法でしょう。
最近の一般入試には、様々なタイプの科目が増えています。英語やプレゼンテーションといった特技を生かすことができるものもその一例で、子ども達の可能性を探り発掘したいという思いで行われています。帰国生だからといって、帰国生(別枠)入試実施校、もしくは帰国生入試のみに選択肢を絞らず、学校も入試も幅広い視野で見つめてみることをお勧めします。