2016年入試における帰国生の動向

2016年5月4日

帰国生が受験する入試は、各校の一般入試とは別枠の帰国生入試だけに限定されるわけではありません。御三家など、特別に帰国枠を設けていない学校を受験する帰国生も存在します。そのような帰国生は、多くの場合一般の受験生と同様に、滞在国の塾に通うか、あるいは早めに帰国して中学受験準備のための塾に通って対策を行っています。

一方、現地校やインター校に通っていて、日本の学校に入学する準備をほとんどしないまま、急な帰国で中学受験をすることになる帰国生も存在します。

ここでは、多岐に渡る帰国生の受験パターンを、1)入試制度、2)入試科目の2つの観点から検討し、帰国生の入試動向を考える上での手がかりとしたい(データ元は「Biblos 2016年版」を参照。部分的に鈴木が編集した)と思います。なお、分析対象は都内の中高一貫校に限定しています。

1)帰国生入試制度の分類

A型:帰国生の受け入れ枠があり、入試日・入試科目・入試内容が一般入試とは別に用意されている学校

 江戸川女子、大妻、大妻多摩(第1回)、大妻中野(第1回)、海城、開智日本橋、かえつ有明、学習院、学習院女子、共立女子、共立第二、啓明学園、京華、京華女子、工学院、攻玉社、佼成学園女子、國學院久我山、桜丘、実践学園、実践女子、芝浦工大、渋谷渋谷、順天(第1回)、頌栄(12月)、聖徳学園、女子聖学院、白百合、聖学院、成蹊(国際学級)、聖心女子、星美学園、高輪、玉川学園、田園調布、東京女学館、東京都市大等々力、桐朋女子(1月)、広尾学園、富士見丘、文化学園杉並、宝仙理数インター、三田国際、目黒星美、目白研心、山脇、立教池袋、立教女学院、お茶の水女子大付属、都立立川国際中等教育、東京学芸大附属国際中等など

B型:帰国生の受け入れ枠があり、入試科目・入試内容が一般入試とは別に用意されている学校(入試日は一般入試と同じ)

 穎明館、大妻多摩(第2回)、大妻中野(第2回、第3回)、恵泉女学園、順天(第2回)、頌栄(2月)、成蹊(一般)、東洋英和、三輪田など

※都内の学校ではないが、渋谷幕張の入試制度はB型である。

 

C型:帰国生の受け入れ枠があるが、入試日・入試科目・入試内容が一般入試と同じである学校

 暁星、普連土、早稲田、早稲田実業など

 

D型:帰国生の受け入れ枠がなく、入試日が一般入試と同じであるが、入試科目・入試内容などが一般入試とは異なる学校

 駒澤学園女子など

※このタイプの学校はほとんどないが、茨城の江戸川学園取手、智学館中等教育はD型。

 

E型:帰国生の受け入れ枠がなく、入試日・入試科目・入試内容などが一般入試と同じであるが、合否の選考において帰国生であることに配慮する学校

 桜美林、鴎友学園、香蘭女学校、品川女子学院、巣鴨、桐朋女子(2月)、豊島岡、獨協、明治学院、明大明治など

※E型は埼玉の学校に多く、浦和ルーテル、開智、西武文理、芝浦工大柏、八千代松陰、麗澤などがこのカテゴリーに入る。

 

F型:帰国生も一般入試と同じ扱いにしている学校

 麻布、上野学園、桜蔭、開成、川村、慶應中等部、慶應普通部、駒場東邦、昭和女子大昭和、女子学院、女子美術大学付属、帝京八王子、桐朋、雙葉、武蔵、早稲田高等学院、筑波大付属駒場、都立桜修館、都立小石川、都立両国など

言うまでもなく、F型は帰国生を(入試においても入学後も)特別扱いしない学校です。一応帰国生枠があるC型や帰国生に配慮をするというE型も、入試問題が一般入試と同じであるからには、帰国生を特別扱いしないと考えている学校(ただし、桐朋女子の2月入試は、1月入試で合格できなかった帰国生に対する再チャレンジの意味合いがあるので例外と考えるべき)であると言ってよいでしょう。

これらの学校は、帰国生も日本のやり方に合わせるべきであるというスタンスが明確な学校であり、そういう意味では、将来の難関大学受験におけるポテンシャルに期待して帰国生を受け入れていると考えられます。

一方、A型・B型・D型は、一般入試とは別の入試を行っているということで、海外での学びや体験を評価しようとする姿勢のある学校です。しかし、これらの学校の中でも、どのような受験科目を設定しているかによって帰国生に対するスタンスの違いが表れてきます。続いて受験科目についての分類を見てみましょう。

 

2)帰国生入試における受験科目の分類

帰国生入試における受験科目も多岐に渡りますが、英語力(外国語力)の要素と思考力(作文などを含む)の要素が合否に与える影響を考え、下図のように出題パターンをカテゴライズしてみました。

 帰国生入試科目によるカテゴリ

まず、左から縦に見ていくと、Ⅰ列は、英語(外国語)が使われないタイプの入試、右端のⅢ列は、英語(外国語)しか使われないタイプの入試で、真ん中のⅡ列は、英語と日本語(算数などを含む)の両方を使うタイプの入試です。

続いて、横に見ていくと、一番下のA行は、作文やEssayの要素が入試科目として含まれていないタイプです。一番上のC行は、作文や思考力テスト、Essayが入試科目に含まれているタイプ。真ん中のB行はその両方が組み合わされているタイプです。

帰国生入試を別に行っている学校であっても、AⅠのような、一般入試と同じタイプの受験科目を課す学校は多いと考えてよいでしょう。

 

ちなみに、上の図における各カテゴリーは入試の難易度とは全く関係がありません。4教科型の入試が作文だけの入試よりも易しいか難しいかというのは受験生のタイプにもよるし、出題の中身を検討しないと何も言えないのです。

ただし、この入試科目のカテゴリーによって、それぞれの学校が帰国生をどのように受け入れようとしているかということが見えてきます。国語・算数といった日本型学力を最低限確認しておこうという意識の表れがAⅠタイプの入試科目を課すことにつながっているでしょうし、海外での学びの質を問おうとする学校は、CⅢのような出題をしていくわけです。

当然受験生の側の準備も異なってきます。AⅠのような出題に対しては、帰国生であっても中学受験の塾に通うといった対策をすることになるでしょうし、インター校や現地校に通う生徒は、そのような入試を敬遠しがちです。

 一方で、CⅢのような科目は、インター校や現地校に通っている子どもにとっては対策しやすいでしょうが、日本人学校に通う生徒は、受験しづらいということになります。

 

まとめ

入試問題は学校の顔とよく言われますが、帰国生入試ほどそれが如実に表れるものもないのではないでしょうか。というのも、例えばCⅢのような出題をして、英語でEssayを書くことが得意な生徒を獲得しても、仮に入学してからの英語クラスが一般受験の生徒と同じであったら、事実上そのような生徒を活かすことはできないからです。帰国生クラスの充実やそれをサポートする教員やスタッフが充実していないとCⅢのようなタイプの出題はできないという意味で、入試科目や入試問題が学校の教育の在り方を反映してしまうわけです。

最近の海外赴任の親は、日本人学校よりも現地校・インター校を選択する傾向が強くなっているといいます。もちろん、日本の学校には日本型学力を伸ばしてもらうことを期待するという親は大勢いますし、その流れが消えることはありません。しかし、グローバル化が進展する流れを考えれば、全体の傾向としては、AⅢ・BⅡ・BⅢ・CⅠ・CⅡ・CⅢといった入試タイプの人気が高まっていくことが予想されるのです。

帰国生入試の応募倍率は、受験者総数が少ないだけに、年度によって大きく変わってしまうことが多いのですが、ここに述べた2つの観点から考えていくことで、帰国生入試の大きなトレンドが見えてくるはずです。