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「失敗から学ぶ力」に焦点を当てた相模女子大学中学部のプログラミング入試(2月1日午前実施)

2022年2月1日午前に実施された、相模女子大学中学部のプログラミング入試を取材しました。

2022年2月1日、相模女子大学中学部ではプログラミング入試が実施されました。新設4年目の今回の入試では、実施日時が2月1日午後から2月1日午前に変更されました。一見、プログラミング能力だけが重視される入試に思われがちですが、実は違います。従来の入試では測れなかった様々な非認知能力に焦点を当てた同校のプログラミング入試を取材しました。〈取材・撮影・文/福原将之〉

プログラミング入試の当日の流れ

2022年2月1日午前、相模女子大学中学部(以下、相模女子)ではプログラミング入試が実施されました。新設4年目となる今回の入試では、開催日時が2月1日午後から2月1日午前に変更して開催されました。一見するとプログラミング能力だけが重視される入試に思われがちですが、実は違います。これまでの入試方式では測れなかった様々な非認知能力に焦点を当てた、相模女子大学中学部のプログラミング入試を取材しました。


今年度から午前入試となった第1回プログラミング入試の集合時間は8時30分です。試験会場である教室では、コロナ対策のため十分な換気がされつつも、受験生たちが寒くないようにと温められていました。受験生がリラックスできるようにと、教室には優しいBGMが流れていました。「リラックスして存分に力を発揮してほしい」という学校側の配慮が伺えます。

受験生が全員揃うと、試験監督の先生から受験生に向けて「試験中でも水分補給やトイレは自由です」とアナウンスがありました。一般的な筆記試験とは異なり、席にじっと座って取り組むような試験ではないということです。2月1日の受験で少し緊張した表情の受験生も、このアナウンスを聞いて少し肩の力が抜けたようでした。机の上に置かれているロボットを興味津々といった顔で見つめながら、試験開始時間を待っていました。


プログラミング入試の試験開始は8時45分です。試験当日の流れは次のようになります。


① 導入授業(約30分)
② プログラミング実習(70分)
③ プレゼンテーション(20分)
④ 基礎計算力テスト(20分)

ロボティクス教育研究の第一人者・川原田先生による導入授業

プログラミング入試の最初は、これから使用する車型ロボットのプログラミング方法についての導入授業が行われます。導入授業の講師役は、プログラミング入試の発案者で小学部の校長でもある川原田先生です。


川原田先生は、世界で初めて人型ロボットPepper(ペッパー)を活用したプログラミング授業を小・中学校教育に導入したことで有名です。20年近く前からロボキットを使った教育コンテンツ開発をされており、ロボットプログラミングの国内および国際大会の運営等にも携わってきました。

そんなロボティクス教育研究の第一人者である川原田先生によって、約30分間の導入授業が行われました。車型ロボットの基本操作の説明やアームの動かし方、ターンの方法、センサーの活用方法など、後半の実習に必要なポイントが丁寧に解説されていました。受験生たちは講師の説明を聞きながら、ロボットプログラミングの方法を理系的に理解していくことが求められます。受験生たちはみなウンウンと頷きながら川原田先生の講義を聞いていました。


講義の途中には動作確認として、手元のロボットをプログラミングで動かすワークも用意されていました。ワークの際には、サポートの先生たちによる丁寧なフォローが入ります。実際にロボットが動くと、思わず顔を見合わす受験生たち。マスクで表情ははっきりと分かりませんが、おそらく笑顔だったことでしょう。


忘れてはいけないのは、導入授業のパートも入試の評価対象になっているという点です。講義を聞きながら必要なことを記録しているか、講師の話を理解するよう努めているか等、受験生の学ぶ姿勢がチェックされています。「プログラミング能力があればOK」という単純な入試ではないことがわかります。

試行錯誤と集中力、発想力が試されるプログラミング実習

川原田先生による導入授業の後は、いよいよメインパートであるプログラミング実習になります。


実習では「提示された条件をクリアするプログラムを作ること」が課題となります。受験生の前の長机の上には、黒テープで区切られたコースが用意されています。


このコース上にあるスタート地点からゴール地点まで車型ロボットを移動させつつ、「ブロックを指定の場所に運ぶ」「ピンポン玉を落とす」などの条件をプログラミングでクリアしていくことになります。

今回のプログラミング実習のポイントは、試行錯誤と集中力、発想力だと著者は感じました。プログラムを作っては車型ロボットの動作確認をし、問題点を見つけたらプログラムを改善させる。基本はその繰り返しになります。この試行錯誤を70分間続ける集中力、さらには課題に行き詰まったときに状況を打開するための発想力などが求められることになります。


例えばある受験生は、スタート地点にロボットを置く位置が毎回ずれてしまうと、プログラミングによる正確なコントロールが難しくなることに気づきました。そこで彼女は、スタート地点にテープで印をつけることで、毎回同じ場所にロボットを置けるようにするという工夫をしたのです。素晴らしい創意工夫ですね。

評価基準はアドミッションポリシーに基づくルーブリック評価

このような受験生の創意工夫や試行錯誤は、試験官である3名の先生方によってしっかりと見取られていました。受験生への評価は、同校が求める生徒像(アドミッションポリシー)を突き詰めて練られたルーブリックに基づいて判断されます。


冒頭の導入授業やプログラミング実習中の様子はもちろんのこと、後述するプレゼンテーションにおける立ち振る舞いも評価の対象になります。単にプログラミング能力の優劣だけではなく、非認知能力も重要な評価点になっているのです。

思考の筋道を説明するプレゼンテーション

70分間のプログラミング実習の時間が終わると、受験生たちは2グループに分かれます。一方は基礎計算力テストへ、もう一方はプレゼンテーションの試験に移り、時間が来たら交換するという流れです。基礎計算力テストの内容は、筆記試験の算数における大問1の(1)のような内容の計算テストになります。小学校で学ぶ基本的な内容となっているので安心してください。


プレゼンテーションの試験では、受験生が順番に自分の作ったプログラムについて説明をしていきます。最初に「どのような動きのプログラムを作ろうとしたのか」について説明した後、作成したプログラムでロボットを実際に動かします。そしてプログラミング実習で工夫した点や苦労した点などを発表し、試験官の先生からの質疑応答に答えてプレゼンテーション試験は終わりになります。

プレゼンテーションの試験で重視されるポイントは、プログラミングしようとしたことを言語化して説明すること。そして難しかったり工夫したりした点を相手にわかるように伝えることです。もちろん受験生たちの工夫や苦労したところは、実習中の様子から先生たちは見取っていますが、それをちゃんと意識して発表できるのかがポイントになります。


受験生たちは少し緊張した面持ちでしたが、ゆっくりと自分の言葉で発表をしていました。緊張して上手に話せない受験生には、先生からのフォローも行われます。受験生たちはブロックを指定の場所に運ぶのに苦労したこと、ブロックを置く位置や運び方、ロボットの移動速度に工夫をしたことなど発表してくれました。中にはロボットの移動経路を斜めにセッティングした受験生もおり、とても感心しました。


11時25分、全ての受験生のプレゼンテーションと質疑応答が終わり、相模女子のプログラミング入試は無事に終了となりました。受験生の皆さん、お疲れ様でした。

「失敗から学ぶ力」に焦点を当てたプログラミング入試

試験終了後、講師役を務めました川原田先生にお話を伺うことができました。「プログラミング入試を受験されるお子さんたちは、他にやりたいことがあって塾には通っていない子が多いです。しかし、塾に通っていないからといって勉強ができないわけではありません。忍耐強く頑張れる素養があれば、入学してから勉強はすぐに追いつけます。


プログラミング入試で大事な『失敗から学ぶ力』は、これからの子どもたちに必須の能力です。」と話していただきました。実際、プログラミング入試で入学した生徒たちはクラスの中でも存在感を発揮し、探究活動などでも活躍しているそうです。今後も相模女子のプログラミング入試には注目していきたいと思います。


なお、相模女子の第2回プログラミング入試は、2月12日(土)の午前に実施されました。2022年度も相模女子大学中学部では、プログラミングの体験会が月1回程度開催されるそうです。このプログラミング入試に興味のある受験生はぜひ参加してチャレンジしてみてください。