2026年1月10日 栄東中学校 Ⅰ入試(東大・難関大)が実施されました。
清々しい空気の中、JR東大宮駅から受験生たちが、未来への階段を登るように学校へと向かいます。1月10日、埼玉県の栄東中学校で行われる「Ⅰ入試」は、首都圏の中学受験シーズンの幕開けを告げる象徴的な日です。5,000人近くの受験者がなぜこの場所を目指すのか。そこには、単なる「試験会場」の枠を超えた、受験生を一人の大切なゲストとして迎える「おもてなしの心」がありました。(取材・撮影/北岡優希)
「待たせない」工夫
集合時間は9時ですが、早い受験生は7時30分には到着します。他の学校では開門まで外で待つことも珍しくありませんが、同校では早朝から校内を待機スペースとして開放。凍える寒さの中で受験生を待たせることはありません。
スムーズな教室誘導
受験番号順に並ばせるのではなく、到着した順に空いている教室へ案内する「先着順」の誘導を採用しています。これにより入り口の混雑を防ぎ、受験生は余計な緊張を強いられることなく、スムーズに自分の席へと着くことができます 。
こうした運営は、受験生が「自分はどこへ行けばいいの?」となりにくく、校内に入った瞬間から落ち着きやすい工夫だと感じました。
また、保護者への配慮も忘れません。待機場所となる体育館には、昨年、大規模な改修によって空調が完備されました。広い空間でも温かな環境で過ごせるようになり、見守る保護者の心にも余裕が生まれる工夫が施されています。
公正さと利便性を追求した「最先端の入試運営」
栄東中学校の凄さは、温かさだけでなく、その圧倒的な機能性にもあります。
昨年度から10日と11日の試験問題を作り分け、判定も個別に分けることで、より公正な入試を実現しました。また、複数回受験する児童には1月16日のⅢ入試の難関大クラスの合否判定において30点の加点制度を設けるなど、第一志望として挑戦し続ける受験生を力強く後押ししています 。
さらに、試験運営を支えるのは、独自のICT活用です。机に貼られたQRコードシールを受験生が答案用紙に貼るシステムを導入し、大規模入試でありながら「誰がどこに座っているか」を把握。これにより、保護者から預かった忘れ物や薬などを、一時間目が終わる頃には正確に本人の手元へ届けることができるのです。このスピード感と正確さは、ICTの力を「生徒への愛情」のために使っている同校ならではの風景と言えるでしょう。
入学後を彩る「探究」と「自律」の環境
入試の日の対応を見れば、その学校がどれだけ生徒を大切にしているかが分かります。栄東中学校の「生徒一人ひとりと向き合う姿勢」は、入学後の学びの環境にも反映されています。
その一例として、食堂は、IKEAの提案を取り入れた開放的な学習空間「ラーニングコモンズ」へと生まれ変わりました。一人一台の端末活用、ホワイトボードの壁、充実した電源。生徒たちが自主的に集まり、議論し、探究学習を深めるための「ワクワクする場所」が提供されています 。
生徒がいつでも教員に相談できる窓口としてキャリアカウンターも設置されました。学習だけでなく、日々の悩みまでをサポートする体制がハード面からも整えられています。
また、先生方も現状に甘んじてはいません。入試業務と教科指導の研究を組織的に切り離し、先生一人ひとりが「教える力」を磨くための模擬授業や研修に専念できる体制を整え始めています。
可能性を信じ、共に歩む6年間
先生ともお話をさせていただき、その中で印象的だったのは、「入学時の学力ですべてが決まるわけではない」という言葉です。かつてボーダーラインギリギリで入学した生徒が、学校との「ソリ」が合うことで劇的に学力を伸ばし、難関国立大学へ進学。現在は同校の教員として教壇に立っているという実例もあります。
学力指標の最上位層を増やすことを目標にしつつも、その本質は「生徒がいかに化けるか、いかに伸びるか」に置かれています。在校生たちが、入試当日に献身的に受験生を支える姿は、まさに自分たちが学校から受けてきた愛情を次の世代へと繋ごうとする心の表れです。
「人を大切にする学校だからこそ、安心して預けられる」。栄東中学校が放つその確かな輝きは、受験生親子にとって、単なる合格以上の「一生の財産」となる温かな出会いを約束してくれているように感じました。
- この記事をシェアする
