コラム

男子ラグビー 福澤慎太郎選手。学校から世界へインタビュー②

~高校時代~(2/3)

「学校から世界へ」第4回のアスリートは、進学校で学業も頑張る傍ら、ラグビーに打ち込んで、昨年、U17日本代表メンバーとして日韓中ジュニア交流競技会に出場、高3になった今年も強豪校の精鋭が集まる高校日本代表候補メンバーに選出されている本郷高校の福澤慎太郎(ふくざわ・しんたろう)選手です。【取材日:2019年6月28日】(取材・構成:金子裕美 写真:永田雅裕)

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自ずと花園が目標に

---全国大会で準優勝のメンバーはそのまま高校ラグビー部に上がりましたか。

福澤さん「主力メンバーは揃って高校に上がりました。だから自ずと花園出場が目標になりました。さらに高校から新たな仲間が5人加わって、僕らは高校でも大人数の学年です」

---高校から入部したメンバーはみなさん経験者ですか。

福澤さん「4人は一貫生で、違う部活をしていた初心者です。1人は高校入試で本郷に入学した経験者です。未経験から始めても、言われたことを素直に受け入れて練習にしているうちに力がついて、スタメン入りする選手もいます」

---経験よりも取り組む姿勢が大事なのですね。

福澤さん「僕もそうでしたが、まじめに練習に取り組んでいれば、練習した分、うまくなりますし、仲間がいて、自分がいいプレーをすると褒めてくれるので、それがモチベーションになります。ゼロからのスタートだとワクワクしかないので、僕の場合はどんどん欲張りになって行きました。体が強いだけじゃダメ、足が速いだけじゃダメ、パスがうまいだけじゃダメ、キックがうまいだけじゃダメ…。すべてのプレーがうまい選手になりたいと思うようになって、今もそうですが、トップリーグの選手の動画を見て、いいなと思ったプレーはすかさず家で練習しています。プレースキックも中学のときから練習していました。今も時々蹴っています。やることが次々出てくるので、時間がいくらあっても足りないというか…。やりがいの大きい競技です。こんなことを言うと先生に叱られそうですが、ラグビーをするために学校に来ていると言っても間違いではないくらい、毎日、頭と体を使っています」

---足は速いほうですか。

福澤さん「50mは6秒5です。ポジション的には速いほうだと思います」

---ところで、世代別の日本代表を意識するようになったのはいつ頃からですか。

福澤さん「高校に入った頃は全然意識していなかったですが、視野は確実に広がっていて、高1の年に個人で1ヵ月間ニュージーランドにラグビー留学しました。インターネットで調べて、自分から親に話して行かせてもらいました。コーディネーターさんが同行するので安心でしたし、ニュージーランドの人はみんなラグビーをやっているので、英語はそこそこでも意外と通じて、たくさん友だちができました。めちゃくちゃ楽しかったです。日本代表を意識し始めたのは高1の終わり頃です。高2の先輩が高校日本代表に選ばれて海外遠征したんです。そのレポートをインターネットで見たことがきっかけです。そういう世界があることを知り、自分も行けたらいいなと少しだけ思いました。『選ばれたい』と思ったのは、高1の終わり頃に行われる関東ブロックのU16強化練習会(高1対象)に呼ばれたときです。『次はU17のトライアウトだよ』と言われて、そのときはこのチャンスをものにしたいと思いました。学校の練習を一生懸命やる、というスタンスは変わりませんが、その上で代表の活動に参加したいという気持ちを強く持つようになりました」

---関東ブロックのトライアウトを経て意識は変わりましたか。

福澤さん「それまでは、自分も強くならなければいけないし、チームも強くならなければいけない中で、強くなる方法を中心に考えて、実践していましたが、関東で選抜されてからは、そこでどう自分の力を出すか、を意識し始めました」

---そういう場では、インプットよりもアウトプットが重要なのですね。

福澤さん「U17関東ブロックのトライアウトに行ったときに、U17日本代表の監督が来ていて、いきなり『福澤、お前の強みはなんだ』と聞かれたんです。とっさに出たのが『突進です』という言葉でした。特にリアクションはなかったですが、自分では体の強さが強みの1つだと思っているので、それを機に『福澤といえば突進力が持ち味だよね』と言ってもらえるように印象づけていきたいと思うようになりました」

--U17日本代表のメンバーからはどのような刺激を受けましたか。

福澤さん「高2の夏にU17関東ブロック代表に選ばれて、他のブロックと対戦するコベルコカップに出場しました。そこで活躍した選手が次のU17日本代表候補に選ばれて、その後、何回かのセレクション合宿(メンバー選考合宿)を経て日韓中ジュニア交流競技会に出場するという流れでした。関東ブロックのセレクションにはチームメイトもいましたが、それ以降、選ばれたのは自分だけだったので最初はビビりました。セレクション合宿に呼ばれているのはラグビー強豪校の選手ばかり。みんな顔なじみがいて、知り合い同士で固まるんですよ。だから入りにくいですし、みんな初対面でもどんどん話ができる、コミュニケーション能力の高い人が多く、入る隙がありませんでした。『本郷なんて知らないよな』と思うと、ますます萎縮してしまい、コミュニケーションに苦戦しました。打ち解けたのは韓国に行ってからです。同じ部屋の選手たちと話ができるようになって、だんだん自分のことを話せるようになりましたが、それまでの間は辛かったです。特に韓国に行く直前の強化合宿では、練習試合のハーフタイムでロッカー戻るるなり監督から指をさされて、『お前は日本代表の自覚があるのか』と叱られたんです。もう、しょんぼりしちゃって。その時はだいぶめげました。その後に監督と話す機会があって、それはチーム全体に喝を入れるためのパフォーマンスだったことが判明したのですが、僕は本気にしてしまい、一人で落ち込んでいたのです。グチる友だちもいないので、母にLINEしてしまいました(苦笑)。『帰りたい』って(笑)。母からは『帰ったらなに食べたい?』って返ってきました。それが心の支えになりました」

---チームメイトには連絡しなかったのですか。

福澤さん「しなかったですね。ただただグチる相手がほしかっただけなので、普段、母とは全然LINEはしないんですけど、その時だけは…、はい。助かりました」

---日本代表として戦ってみて、収穫はありましたか。

福澤さん「その時の経験でメンタルは強くなりましたね。自分の成長を感じましたし、チームに帰ると先輩方も自分の話を聞いてくれたので、高2でしたがチームを引っ張る気持ちがより強くなりました」

--昨年は、花園出場に向けての手応えを感じていたのですか。

福澤さん「スタメンに高2の選手が多かったので、行けるかなという感じでしたが、先輩を連れて行きたいという気持ちが強く、大会ではそれが力になりました。予選での山場は、準決勝の東京高校戦でした。新人戦で一度負けていました。しかもひどい負け方だったので、絶対に負けないという強い気持ちで戦い、結果、完封勝ち(34-0)しました。決勝の目黒学院とは新人戦と春季大会で対戦していて1勝1敗。決着つけるぞ、という強い気持ちでぶつかって勝利することができました」

---目標にしていた花園はどんな大会でしたか。

福澤さん「出場が決まってから、花園に出発するまでの1ヵ月間はものすごく充実していました。また、花園で日本代表のメンバーと再会できたことは、とても嬉しかったです。毎年、出場するのが当たり前の学校ばかり。『花園でまた会おう』と言って別れたので、チームでその場に行くことができてちょっと誇らしかったです。ただ、大阪に着いたら緊張してなかなか眠れませんでした。試合の前日も全然眠れなかったので、試合中の記憶がないくらい、力を出し切れずに終わってしまいました。広島の尾道高校を相手に、あまりにも不甲斐ない負け方をしたので、その悔しさが現在の練習を支えています。『花園で年を越す』を合言葉に、まずはその場に立つことを目指して頑張っています」

---ライバルとなる学校は?

福澤さん「今年の新人戦、春季大会ともに決勝の相手は早稲田実業でした。新人戦では勝ちましたが、春季大会では負けてしまったので、気持ちを引き締めていかなければいけません。チームの意識をワンランク上げるのは僕の役割だと思っているので、方法を考えているところです」