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学校特集

東京成徳大学中学・高等学校2023

未来を切り拓く力を生み出す、独創的な「自分を深める学習」

掲載日:2023年6月27日(火)

開放的な校舎に、300席超を有するホール、およそ39,000冊の蔵書を誇る情報図書館など様々な施設を擁し、ICTや留学制度など先進的教育が光る、東京成徳大学中学・高等学校。「人間力・グローバル力を伸ばす」をスローガンとし、生徒たちの可能性を広げるカリキュラムが評価され、注目されている完全中高一貫校です。先鋭的なプログラムがクローズアップされがちですが、長年続け、ブラッシュアップしてきた「自分を深める学習」もその躍進の原動力となっています。生徒たちの将来へと向かう推進力を高めるこの学びはどのようなものか、自分を深める学習科を担当する長原潤一先生に聞きました。

中1から「自分はどう生きていくか」を問い始める

東京成徳_和やかに行われる「自分を深める学習」
和やかに行われる「自分を深める学習」

 東京成徳大学中学・高等学校が行う「自分を深める学習」は、建学の精神である「徳を成す人間の育成」を実現するために20年前から実施されている授業です。開始当初は中3で週1回行われていたものを5年前から拡充。現在は、中1〜高2がその授業を受けています。

 中学生は週に1時間、探究活動の一環として、道徳の時間を利用しています。担任と担当によるチームティーチング(TT)で生徒同士のディスカッションや発表メインのアクティブラーニングを行い、最後に「内省」として文章化、授業から受けた所感を記録として残します。

大きな各学年の主題は以下の通りです。

1年次(中1) 人と人とのつながりを考える 心の内側を見つめる時間
2年次(中2) 命のつながりを考える 自然の中で多様性を体感
3年次(中3) 社会とのつながりを考えよう 日本以外の国を体験してみる
4年次(高1)以降 つながりの中でどう生きるか 自分が将来どう生きたいかを探る

 長原潤一先生は「自分を深める学習」とは、「問い続ける授業」であると捉えています。自分とは何か、なぜ学ぶのか、どう生きるのかを基本テーマとして、書き、話し、自問し、生徒の将来に向けて役に立つものとなるように提案しています。

思春期に答えのない問いを考えることが、将来の糧になる

東京成徳_長原潤一先生
長原潤一先生

 長原先生の場合は、ひとつの授業に10時間以上の準備期間を設け、楽しく、わかりやすく、ためになる授業をと心を砕いています。

 アプローチは文章、映像鑑賞、漫画と様々な切り口から多様な問題を提示します。ルビを振る、単語の意味を書くなど入り口を広げておきますが、問われる内容は大人でも考え込むようなものばかりです。

 もちろん、生徒全員の意見が同じようにまとまるわけではありませんし、明確な正解が出る内容でもありません。

「子ども扱いをせず大人でも歯応えのあるテーマを教材にしているので、中学生には難しすぎるのではと言われることもありますが、この時期に生徒たちが考え、結論を出しておくことを重視しています」と長原先生。

 思春期のいまだからこそ出た結論を書き留めておくと、10年後、20年後に見返して、彼らが自分の成長を実感できるはずだと考えているのです。

 2022年度の授業で取り扱ったテーマをいくつかご紹介しましょう。

東京成徳_いろいろな三文字熟語に触れます
いろいろな三文字熟語に触れます

●「真善美」(中1)
 長原先生の提唱する、3文字熟語から考えるシリーズの中のひとつ。2022年度は、9回に渡って「真善美」について考え、議論し、10回目にまとめる時間を取りました。

「『真=善=美』というシンプルな結果にはならないだろうと予想しつつ始めました」(長原先生)

 ある時間は、NHKのドキュメンタリー番組を教材とし、「ナホトカ号重油流出事故」のボランティアに参加し、その後、自身の行動が変容した人々の姿から、善について生徒たちは考えました。また、夏休みの課題として「一日一善」を行い、実体験から考える機会を持ちます。

 生徒たちの理解を促すために、真について考える授業を、次は善を、そして美について1コマずつ、この組み合わせを螺旋状に何度も繰り返して考えを深めていきます。

「善の行動を続けることが自分のなりたい姿(真)を見つける機会になるのではないか、そこに行き着くまでの姿勢やその結果が美である、というのが今の私としての答えです。もちろん、生徒は自分なりの答えを見つけ出してほしいですね」(長原先生)

東京成徳_様々な視点から気づきを促します
様々な視点から気づきを促します

●「対立を3つの軸で総合化する」(高1)
 コーヒーを例に、対立するもの、矛盾を内包するものの捉え方を考える内容です。

 コーヒーの苦みの先に甘さも感じられるのではという感想から、苦い←→甘いという対立構造が生まれ、その間に「香り高い」「安い」などの縦軸を設定できれば、対立していた要素が調和するということを生徒に伝えています。そこから、他に対立する、例えば、好き←→嫌い=人間関係や恋愛感情、ありがたい←→迷惑=親子関係といった、二律背反する中に心の機微や現象などの何か他の軸を入れられるのではないかと考え始めるのです。

「こうして言語化して再認識しておくと、将来、対立するものに直面した機会にもう1本軸を立てられ、解決法を探るための考えるきっかけになるのではないでしょうか」(長原先生)

●「身近な題材から様々な要素を読み解く」
「学校説明会でお話しすると、保護者の方が熱心に聞いてくださる課題です」(長原先生)

『孤独のグルメ』(久住 昌之 <原作>、 谷口 ジロー<作画>/扶桑社刊)という漫画を題材にしています。輸入雑貨商を営む主人公が各地の飲食店をひとり訪れ、目の前の風景や料理について淡々と考えながら食事をする様子が描かれています。主人公の思考の中に「洞察する姿勢」「察知」「内省」「関連付け」「自己肯定」「共感」など様々な要素が浮かび上がってきます。

「主人公を通して、物事の見え方の多彩さを明らかにし、この力をつけていくことが『自分を深める学習』です、とお伝えしています」(長原先生)

東京成徳_社会でも必要な協働する力を培います
社会でも必要な協働する力を培います

 これらの課題から身につくのは「察知と受容」です。それは、周囲をしっかりと観察し、人の意見をきちんと聞いて、その状況から何かを読み取る力、それを受け入れて肯定する寛容さを持つことに繋がります。

 すなわち、「察知と受容」は、国内外を問わずより多くの人と接し、彼らと意見を交わしながらお互いを尊重し合い共存していくことができる、そのような懐の深い人間となるための礎となるのです。

「生徒たちが出した結論を肯定し、考え方を補強して安心感を持ってもらうこともありますし、『違う見かたもあって』と一度敢えて壊して、知識欲をかき立てることもあります。そこは上手にバランスをとっていきたいと思っています」(長原先生)

 授業中、長原先生も自分自身の思考の流れと結論を生徒たちに共有します。その際に「自分の今の答えはこうだけれども、これはまた数年後には変わっているかもしれない」と生徒たちに正直に伝えます。その姿から生徒たちは、大人になっても自分で問いを立て、考え続けていくものなのだという姿勢をも学びます。

「答えが出なくとも、その問題について一度考えたことがあるかないかでは、素地が全く違います。①中学生が大人と対話した時に手応えのある話ができる、②何かと対立した時に解決する糸口を見つけることができる、③人の気持ちや意見を察知して、自分と異なるものでもそれを受けとめることができるという、これらの力をつけられるようになるのが『自分を深める学習』なのです。この経験は彼らの将来へのお土産になると思っています」(長原先生)

自分の志向を見つめ、深掘りして主体的に学ぶ

東京成徳_プレゼンする先生方も本気です!
プレゼンする先生方も本気です!

 同校では、中学3年間は知識や思考を横に広げる期間=「夢を広げ、世界を知る」、高校からは縦に掘り下げる期間=「自分を啓く」と捉えています。
 高校では中学で受講してきた「自分を深める学習」の総まとめとして、週2時間、ゼミ形式の探究型授業を展開します。この授業は「主体的かつ自主的に学ぶ」ことを趣旨としています。

 ゼミの選択方法は希望制です。2人1組の先生方のプレゼンを見てから、生徒が受けたいゼミを選びます。生徒の支持を得られなかった先生は人気ゼミの補佐に回るというシステムです。生徒は自分の志向を真剣に考え、教員側は魅力ある内容を提案できるかを試される機会です。

 2022年は下記のゼミが設けられました。

1 人と自然の関わり(7月尾瀬・3月沖縄or小笠原)
2 アプリを開発(Everyone Can Codeによる)
3 沖縄から学ぶ基礎教養
4 SDGsと社会貢献
5 芸術文化の可能性を探ってみよう
6 美味しい珈琲を淹れよう
7 ものづくりとSTEAM
8 もったいないをサイエンスしよう
9 医療従事者への道

 生徒は全講座を予備履修してから、志望動機を提出します。そして、必ず第1希望のゼミを受講することができるようになっています。高1の今、自分自身が学びたいのはどれかを真剣に考える、この機会が将来の進路選択へと思いを馳せることに繋がるのです。

東京成徳_自分で焙煎する機会なんてなかなかありません
自分で焙煎する機会なんてなかなかありません

 長原先生は、ここ3年、6の「美味しい珈琲を淹れよう」というゼミを担当しています。先述の「対立と調和」に関する思考法のほか、生豆を買い自分で焙煎するなど、実地的な作業もしています。そして、その豆を家族にプレゼントし、もらった感想を自主的に報告してくれる生徒もいるそうです。

 長原先生は、最初は生豆の価格ばかり見て、「こんなに旨いコーヒーが安く飲める!コスパがいい!」とずっと生徒に伝えていました。でも、手間暇を考えると実は高いのでは、と気づいたそうです。

「コーヒー1杯からワークライフバランスにまで思いを馳せました。実践して初めてわかる、自分が最初に持っていた答えが壊れて新しい答えを見出せる衝撃を、生徒にも体感してほしいですね」(長原先生)

 高2の総合探究では、修学旅行の代わりに実地踏査型研修旅行を行います。生徒自らテーマを選び、課題と仮説を設定して、現地調査をした後、考察をまとめてプレゼン発表をすることで1年間が終了します。

 行き先もテーマも自由。自分がすべて自由に決定できる権利を持つことと引き換えに、自分でその決定の責任を持つ必要があります。その真剣さのなか、生徒たちは探究テーマを見つけ、その内容を追究します。

東京成徳_自分たちで学びたいテーマを設定する「実地踏査型研修旅行」
自分たちで学びたいテーマを設定する「実地踏査型研修旅行」

 2022年度、学校側の課題は、どうやったら全員を希望する研修先に行かせることができるかでした。

「『全員の希望通りでは広範囲すぎる、それは無理だ』ではなく、『どうやったら実現できるか』をベースに教員同士で話し合いました」と長原先生。

 その結果、生徒の希望する研修先に合わせてグループ化。大阪、札幌、博多に宿泊拠点を作り、そこから各々分かれて研修を行うことにしました。生徒たちは拠点から分かれて自分の希望した土地へ赴き、事前調査から出した仮説をしっかり検証・調査してきました。この努力が実り、このカリキュラムで探究した「地方創生」をテーマに、慶應義塾大学のAO入試に合格した生徒もいます。

 これらの「自分を深める学習」に、ICT教育や中3でのニュージーランド学期留学や国内グローバル教育による英語力と自主性の向上、通常授業のきめ細やかさや様々な学習フォローなど教員の面倒見の良さが合わさり、生徒が飛躍的に成長しているのが東京成徳の姿です。

 事実、2022年度の卒業生は、総合選抜や一般入試を見事に通過し、千葉大や東京外語大、早慶上智などの難関大学、海外大学進学制度により海外大学への進学を決めた生徒もいます。

"東京成徳らしさ"が伝わる入学試験とは

東京成徳_DL入試で入学後の授業のイメージがつかめます
DL入試で入学後の授業のイメージがつかめます

 東京成徳が、丁寧に長い時間をかけて「生徒の地力を伸ばせる」と信じ、続けてきた教育により、生徒たちが将来の方向性をきちんと見出し、夢を形に変えていける教育を行う学校であるという評価を得てきています。

 先生方も、入学してきた生徒たちの持ち合わせているものを引き出し、大きく伸ばすのが、東京成徳の面倒見の良さだと自負しています。こういった潮流を受け、近年、同校を第一志望とする生徒が増加中です。

 同校は、従来から行っている2科または4科の教科型入試のほか、2023年度より「Distinguished Learner選抜入試」(DL入試)を開始しました。
 東京成徳に入学してめざましく伸びるのは、主体的に学んでいける生徒です。

 DL入試には、同校が求めるグローバル人材、①主体的な思考、意見を持ち行動できる、②チャレンジ、リトライができる、③多様性を理解し、受容し、多様なものと連携できるマインドがある、④日本人としてのアイデンティティを持つ者を、受験生の学力を問わず求めたいという学校側の姿勢が表れています。

 2023年度の問題はSDGsから、ゴミのアップサイクルについて。
①紙に自分の考えをアウトプット→一時提出→採点官の先生と話し合い、その内容を参考にしながら具体化させて最終提出
②3人1組のグループワーク→プレゼン

 これらをルーブリック評価に照らし合わせて合格者を決定します。

※実際に2023年2月の入試で行われた様子は、この記事をご参照ください。
  ↓
https://www.syutoken-mosi.co.jp/blog/entry/entry003866.php

東京成徳_DL入試でのプレゼンの様子
DL入試でのプレゼンの様子

「私たちが、どのような生徒と共に頑張り、成長していきたいのか、東京成徳らしさを実感してもらえる試着的入試として、DL入試にもぜひトライしていただきたいです」(長原先生)

 このように、先生方の生徒たちに向けた情熱は並大抵のものではありません。大学生活よりもさらに先の未来を見据え、一人ひとりの生徒が着実に伸びる仕掛けを6年間の至る場所に散りばめています。

 この学校の一員として、何を見出し、どこに進んでいくのかは本人のやる気次第です。しかしきっと、これを学びたい、これに関わりたいと熱望する道が見つかり、そこに確実に歩いていけるはず。同校で過ごす6年間は濃密で充実し、将来の自分を輝かせる礎となるに違いありません。

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