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学校特集

富士見丘中学高等学校2024

校内外で培うグローバル感覚。独自の海外フィールドワークとは

掲載日:2024年9月5日(木)

英語教育の充実ぶりから"英語の富士見丘"と呼ばれ、中学卒業時には英検2級合格者が約45%に到達する同校。2015年度より文科省指定のスーパーグローバルハイスクール(SGH)に認定され、2020年度からはワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム構築支援事業のカリキュラム開発拠点校に指定、オリジナリティあふれる探究学習への熱心な取り組みにも注目が集まっています。そうした教育活動を通して飛躍的に伸びた大学合格実績により、『週刊ダイヤモンド』(24年4月6日号)における「入学しやすいのに6年間で学力を伸ばす大学受験に強い学校」の指標であるレバレッジ度ランキングで首都圏第1位に輝いた富士見丘。中でも、理数系進学や世界トップレベルの海外大学への合格など、多様な進路の実現に尽力している数学科の渡邉咲弥先生と広報副部長で英語科主任の田中裕樹先生に同校の教育について伺いました。

生徒のロールモデルとして立ち、
身近な存在として共に学ぶ

 少人数制できめ細やか、寄り添いつつ自立を促す教育に定評のある富士見丘。2024年の卒業生100名のうち、早稲田大に11人、上智大に14人、さらに海外大には7人など、国内外のさまざまな大学・学部に合格者を輩出しています。SGHやWWLの取り組みを通して生徒がさまざまなことに積極的にチャレンジする雰囲気が校内に定着し、英語資格の取得状況は難関校をはるかに凌ぐ勢いです。年を追うごとに受験者数・入学者数が増え、校内は年々活気を帯びています。

富士見丘_渡邉咲弥先生。現在は、自身が中高時代に打ち込んだバトン部の顧問を務める
渡邉咲弥先生。現在は、自身が中高時代に打ち込んだバトン部の顧問を務める

 富士見丘に着任して3年目の数学科の教諭・渡邉咲弥先生は、東京理科大学で数学と理科の2教科の教員免許を取得し、さらに語学も堪能という人物です。

渡邉先生:「就職活動でいろいろな学校を見ていた時に、自分が経験してきたことを活かして、生徒たちに携わっていけるのではないかと感じたのが富士見丘でした」

 自身も都内の私立中高一貫校の卒業生で、母校に戻ることも考えたものの、さらに自分の世界を広げたいと思ったと話します。富士見丘も渡邉先生の母校も従来型の教育からの脱却を掲げる21 世紀型教育機構の加盟校。グローバル教育にも熱心で、渡邉先生にとっては中高時代の経験を発揮しやすいかもしれません。

渡邉先生:「中高時代からグローバルな活動に参加し、人前で発表することも好きな生徒でした。例えば、国内で日本語を習っているベトナム人と交流していましたが、実際にベトナムに行ったり、高2の時にはフィリピンでストリートチルドレンへのボランティアに取り組んだりという経験をしました」

 そうした経験から、一時は海外で劣悪な環境に身を置かれた子どもたちの救済などの仕事も検討したと話します。なぜ教職を選んだのでしょうか。

富士見丘_中学では毎週2時間続きの「理科実験」を実施する富士見丘。学習機会は豊富で恵まれた環境です
中学では毎週2時間続きの「理科実験」を実施する富士見丘。学習機会は豊富で恵まれた環境です

渡邉先生:「小学生のとき、東京理科大の研究室が主催する実験教室に通っていました。子ども向けとしながらも歯応えのある実験が行われ、理科への興味関心を伸ばし、理系の子どもを増やそうという試みでした。
 そこで活躍していたのは教員になろうと学んでいた学生たちです。実験が楽しかったのはもちろんですが、その方たちがおもしろくて優しくて、『こんなふうになりたい』と憧れたのがきっかけです。
 また、中高時代は周りの友人に数学や理科について訊かれることが多く、人に教えることがけっこう好きだと感じたことも一つの動機ですね」

 渡邉先生は現在高1の担任を務め、生徒たちの良きお手本であり、年齢が近いことから親しみを感じられる存在として、日々信頼関係を構築しています。理数教科の教員として、自身の経験を踏まえ、生徒たちとどう接しているのでしょうか。

渡邉先生:「今は高2進級後の文理選択について、一人ひとりと毎日面談で話し合っています。生徒たちに伝えているのは、まず自分が本当に好きなことを選んでほしいということ。例えば、実験がおもしろいとか、計算していて楽しいとか、そういう楽しさを伴う進路を考えないと、やはり大学入学以降のことを考えると続きにくいのではないかと思います。

 もちろん、今はまだ夢がなく将来が見えづらいと悩む生徒もいますが、それもまた自然なことです。私自身が体験してきた活動を強いるつもりはありませんが、中高時代の経験は貴重なものなので、本校でさまざまな体験に前向きに取り組んでほしいのです。そして、少しでも興味が湧くものがあった時に思い切ってもう一歩踏み出してみることを勧めたいですね。どんなことでもやってみたら必ず力になりますし、絶対にあなた自身のためになると伝えています。その上で、何かに喜びを見出せることはすごく大事だよという話をよくしています」

富士見丘_イギリスでの教員研修中の渡邉先生
イギリスでの教員研修中の渡邉先生

 理系や文系、英語教育に限定することなく、生徒たちが好きなことを見つけられるさまざまな機会を設けている同校。だからこそ、生徒たちは多彩な進路を実現し、希望を叶えるべく頑張り抜くことができる土壌が整っています。

 そうした学びの多様性は教員にも開かれています。同校では毎年、担当教科に関わらず若手の教員を海外での研修に送り出しています。渡邉先生は今夏、イギリスに渡航し語学学校や大学での研修に加え、2 校ある富士見丘の現地姉妹校での実習を行うなど、実りある約ひと月の学びを経験し、レベルアップして帰国しました。

富士見丘_広報副部長の田中裕樹先生。英語科主任として英語資格の取得状況の伸長に大きく貢献している
広報副部長の田中裕樹先生。英語科主任として英語資格の取得状況の伸長に大きく貢献している

田中裕樹先生:「教員が海外研修を経験することで生徒に還元できるものが大きいと学校長が判断し、毎年夏に派遣しています。彼女は現場の教員として本校の理数教育を支えている一員であり、しっかりとしたタレントを持っていますし、イギリス研修でさらに磨きがかかったものと思います。
 本校の理数教科は、グローバル教育の陰に隠れがちですが、実は充実していることに着目いただきたいですね」

 生徒だけでなく、教員も学び続ける姿勢を貫くことができるのが富士見丘なのです。

探究学習で自ら課題を見つけ、調べ、動き、
自ら結論を出せる生徒を育成

 さまざまなアクティブラーニング型の学びで主体性を持った生徒の育成を目指す富士見丘。各教科の授業に加えて毎週水曜日のロングホームルームでは、プロジェクト型学習の基礎作りとして、4~5人のグループで協働し、課題を設定して議論した結果をプレゼンテーションの形で発表します。クラス内に活発な議論ができる土壌を養い、忌憚のない意見を伝え合える関係性が築けるので、日々の学校生活の中で互いの個性を尊重する姿勢を培い、自尊心を高めることもできます。

 こうした基盤の上で、中1から高2(高2は選択)で取り組むのは、個人探究の「自主研究5×2」です。これは通常授業など平日5日間から得た学びを、週末の2日間を使ってさらに掘り下げ、それぞれの興味関心を育む自主研究の時間。取り組むテーマは自由で、入学以来毎年継続しても年度ごとに変えてもかまいません。

田中先生:「自分自身の関心事をとことん掘り下げるので、探究のおもしろさに気づけるだけでなく、自身の成長に伴って視点の持ち方や視野の広がりに気づくことができます。そして、ただ生徒の自主性に委ねるのではなく、学級担任が寄り添い、研究のあり方や参考文献の使い方、レポートのまとめ方、発表方法などを共に考え、学び、総合的に指導することによって、生徒のさらなる意欲と主体性を引き出すことを心掛けています」

 4月には新入生に向けて、前年度の優秀賞受賞者が各自の取り組みを報告。テーマの見つけ方や研究の方法など、取り組みへのヒントを得る場になります。ボランティア活動への参加を通して課題に向き合う生徒や弁護士や議員へのインタビューに出向いた生徒、中にはアプリを開発して普及を進める生徒までいて、活動は多岐に渡ります。社会課題に対する解決方法を考えるだけでなく、実際に行動する様子に先生方も胸が熱くなったそうです。

富士見丘_「グローバルスタディ基礎」は、デザインシンキングの手法を通して、グループ探究の土台を作ります
「グローバルスタディ基礎」は、デザインシンキングの手法を通して、グループ探究の土台を作ります

 1人ひとりが個人探究のスキルを向上させることと並行して、高校ではグループ探究にもチャレンジします。高1の『グローバルスタディ基礎』は全員が取り組む高大連携のWWLプログラムです。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の教授の指導を受けながら、研究室の学生や留学生たちと共に学びます。

田中先生:「SDGsをテーマに社会課題を探究するグループでのプロジェクト学習ですが、ブレインストーミングしながらデザインを構築し、ものづくりを通してグループ内の対話を促進しています。手法は毎年アップグレードしていて、今年度はSTEAMへの関心強化を意識しつつ、レゴなども活用し、より創造性とコミュニケーション能力が涵養されるプログラムになっています」

 そのほかにも、生徒たちの見聞を広げるための取り組みが多数行われています。例えば、この夏休みに中2で実施された探究フィールドワークでは、食品や医薬品の研究開発に関心のある生徒は「明治イノベーションセンター」(東京都八王子市)、海洋環境に関心のある生徒は「カワスイ川崎水族館」(神奈川県川崎市)を訪問。また、地域振興に関心のある生徒は「日曜まつり」(東京都杉並区)にボランティアとして参加するなど、低学年のうちから、さまざまな経験を積み重ね、ステップバイステップで学ぶことができるプログラムが用意されています。

探究学習の集大成・
グローバルスタディ演習とは

富士見丘_グアムでのフィールドワークの様子。実地調査で探究内容に磨きをかけます。現地の方々とのコミュニケーションも
グアムでのフィールドワークの様子。実地調査で探究内容に磨きをかけます

 高2で取り組むのは、「グローバルスタディ演習」。実地探究が可能な海外フィールドワークがセットになっており、さらに深くテーマを掘り下げ、徹底して研究を突き詰めたいと意欲を持つ生徒が取り組みます。ここでは富士見丘がWWLコンソーシアムの拠点校としての強みを発揮。海外にも持つ強固な高大連携のネットワークを生かし、フィールドワークのテーマと渡航先は以下となっています。

●海洋と地域経済:グアム
●環境とライフスタイル:マレーシア
●災害と都市生活:台湾


 渡邉先生は着任以来2年連続で台湾への引率を担当。年間の探究活動を支えてきた中で、生徒たちの成長ぶりについてこう話します。

渡邉先生:「興味関心に則り、クラスの枠を取り払った3〜4人グループで探究に取り組みます。最初は具体的にどう探究していけばいいのか戸惑う生徒もいたので、有用な書籍や論文を提示し、ワークを指示しました。9月に開催される文化祭で中間発表を行いますが、その頃には、生徒たちは自らグループで役割を分担し、話し合い、考えながら進めていました。現地では具体的にどういう施設で誰にどんな話を聞きたいのか、そのためにはどうしたらいいのかなど、次第に主体的に考え、行動できるようになっていたのが印象的です」

 現地入りしてからは、台湾の人々に英語を使ってインタビューしたり、街頭でアンケートを取ったりしていく中で、日本と台湾の文化や防災への意識の違いを肌で感じ、比較検証を重ねた生徒たち。
 これらの成果は2月に開催されるWWL課題研究発表会にて英語プレゼンテーションの形で報告します。この会にはWWL連携校である池田高校(鹿児島県)も来校し、互いの探究学習について活発な意見交換を行います。

富士見丘_「生徒たちのプレゼン能力の高さに驚きました」と渡邉先生
「生徒たちのプレゼン能力の高さに驚きました」と渡邉先生

渡邉先生:「発表は、優秀賞など順位が付けられるので、嬉し涙も悔し涙も見られます。中には英語が得意ではないという生徒もいますが、熱心に練習していただけでなく、統計処理や課題抽出など、自分の強みを還元し、グループに貢献しようとしていた姿が印象的です。そうした生徒たちの成長には一人ひとりにドラマがあり、とても感慨深いものがありますね」

「海洋と地域経済」は、ハワイ大学の神末武彦教授によるオールイングリッシュでのオンライン講義『Destination Management』を毎月受講し、環太平洋地域における海洋経済を中心とした社会課題に対し理解を深めます。その上でフィールドワークはグアムで実施し、グアム大学の海洋研究所を訪問。富士見丘には、個々の関心と強みに応じたさまざまな学び方が用意されているのです。

富士見丘で得られる学びと
先生方の矜持とは

 生徒たちの様子について「職員室は開放的にしていますが、教員が驚くくらい生徒たちがたくさん入ってきます」と田中先生は笑います。

渡邉先生:「毎日のように放課後、質問に来る生徒もいます。学習の理解度も深まりますし、より距離が縮まっていく喜びを感じます。進路指導の中心は学級担任ですが、理数系を志す生徒には、話を聞いて具体的な志望校を提案することも増えてきていますね」

 最初に触れた通り、富士見丘はその教育内容が認められ、人気が年々上昇しています。

富士見丘_ICTなどを含め、他校に先駆けた教育が実施されています
ICTなどを含め、他校に先駆けた教育が実施されています

田中先生:「ありがたいことに年々受験者数や入学者数が増えていますが、それは同時に、本校が教育の質の維持向上について、しっかり向き合わなければならないことを意味していると考え、一層気を引き締めなければならないと感じています。若い教員の採用機会が増え、数学に関しては現在若手が3人いますが、向学心が強いだけでなく、生徒のモチベーションを引き出す存在として労を惜しまず頑張っていることがよくわかります。それは英語科ほか、さまざまな教科も同様です。エネルギーに満ちた若いスタッフをしっかりと揃え、中堅とベテランが経験を基に安定した基盤を整えることで、教職員が一枚岩となって生徒たちを迎えられる体制が組めているので、校内がより活気づいていると感じます」

 なお、英語教育に定評のある富士見丘のネイティブ教員は8人。1学年4〜5クラスの学校規模にしてはかなり多いといえます。

田中先生:「高度なICTスキルを持ち、その指導力が高い教員もいれば、帰国生の教育に長年従事してきた教員、カリキュラム開発で力を発揮する教員や他業種の経験を持つ教員など、本校にはいろいろなタイプの教員がいます。学年団における男女比や年齢層、教科などできるだけバランスよく配置されており、生徒は必ず相談しやすい教員が見つけられることと思います」

 中学入学後は一般コースと3つに細分化される英語特別コースに分かれますが、基本的に英語以外は同じカリキュラムで学びます。探究学習では、各コースの生徒が一つのグループで力を合わせて協働することになります。

田中先生:「日頃、一緒にいるクラスメイトとは違うメンバーや自分とは異なる学習歴を持つ仲間と共に学べるということは大きな刺激になると思います。助け合える環境が生徒たちの成長にとてもいいんですよね」

 英語というぶれない軸を持ちつつ、探究学習や理数教育といった一人ひとりにマッチした強みを組み合わせた学びを行う富士見丘。

渡邉先生:「自分が中高で学んだ経験は生かしていけたらとは思いますが、年々生徒を取り巻く状況や彼女たちの考え方、学校や社会・時代も変わっていきます。私自身も生徒たちから学ぶことが多々あります。
 勉強だけではなく、探究学習やクラスでの日常、進路選択など、生徒たちに寄り添い、時間を共有していけることが、改めて教員としての生きがいや楽しさにつながっています。
 一生懸命やる、ということは当たり前なのですが、何ごとも全力で取り組んでいる姿勢が生徒たちに伝わって、共に成長していけたらと願っています」

 田中先生はこの日、「このあと、卒業生たちが遊びに来るんです」とうれしそうに教えてくれました。聞けばしょっちゅうOGたちがやってきては、先生方とおしゃべりしていくのだそうです。富士見丘での6年間はかけがえのないものであり、ここはいつでも安心して帰ってこられる場所ということ。

 学校説明会や行事などに足をお運びいただき、学校の様子をぜひ感じてみてください。

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