学校特集

和洋九段女子中学校高等学校2018

グローバルクラスの1年間、その成果とは?
グローバルクラス1期生の成長に手応え。PBL通じ「考える」習慣が根づく

掲載日:2018年9月8日(土)

2017年から開設された「グローバルクラス」1期生の約7割の英語のレベルが中学校課程修了レベルに到達するなど教育改革を順調に進める和洋九段女子中学校高等学校。グローバルクラスと本科クラスはお互いによい影響を与えています。問題解決能力を養う「PBL(Problem Based Learning)型授業」も全教科・全学年で浸透し、その手法は、学校行事や部活動など学校生活全般にも波及しています。
多様な個性をより一層受け入れようと、2019年度入試からは「PBL型入試」や「英語コミュニケーション入試」を新設するなど、次のステージへと邁進を続ける和洋九段の取り組みについて、入試広報室の小口眞人先生に伺いました。

1期生の 約7割が中学校課程修了レベルに到達

和洋九段_小口眞人先生
小口眞人先生

2017年度にスタートした和洋九段女子中学校・高等学校の「グローバルクラス」。海外帰国生など英語を話せる生徒と、これから英語を学ぶゼロベースの生徒が混在していますが、英語の授業はレベル別に実施。「アドバンスト」は英検準2級程度の実力がある生徒を対象に、すべての授業をオールイングリッシュで行います。中学から本格的に英語を学ぶ生徒は、「インターメディエイト」で日本語を交えた授業から始めて、段階を踏んでオールイングリッシュの授業に移行します。英語の授業は中1が週8時間、中2・中3は週9時間です。

「担任は英語科教員で、ネイティブスピーカーの副担任も毎日ホームルームへ行きますから、朝礼や清掃、ホームルームなど、日々の活動も英語が中心。授業だけでなく日常に英語があることも、英語のレベルアップに寄与しています」と語るのは小口眞人先生。

1期生19名は、英検2級3名、英検準2級2名など約7割が中学校課程修了レベルに達しました。一から英語を学んだ生徒もいる中で、小口眞人先生は「順調な滑り出しではないでしょうか」と振り返ります。グローバルクラスは中学卒業時に英検2級以上、高校卒業時に英検準1級以上を目指し、海外の大学への進学も視野に入れます。

本科クラスから3名がグローバルクラスへ移籍

和洋九段_ネイティブ教員が学校生活に溶け込んでいます
和洋九段ではネイティブ教員が
学校生活に溶け込んでいます。

アドバンストとインターメディエイトは能力に応じてスライドが可能です。1期生は、3名がアドバンスト、16名がインターメディエイトでスタートし、中2に上がった段階でアドバンストへ移る生徒がおり、2期生はアドバンスト7名でスタートしています。

初年度はやや慎重になってか、学期ごとのスライドはありませんでした。しかし、意欲的な生徒たちのことですから、地力がついてきた中2、中3で加速度的に伸びる可能性がありますし、アドバンストへ移る生徒も増えることが予想されます。

2年目の今年度は、中2のグローバルクラスに本科クラスから3名が移籍しました。この3名は「グローバルクラスで英語をモノにしたい!」と強いモチベーションを持ち、努力を続けて結果を勝ち取りました。「私はやれる!」という自信もついたでしょう。本科クラスから移籍した「がんばり屋さん」たちに、グローバルクラスの生徒も負けるわけにはいかないと、切磋琢磨する良い雰囲気が生まれています。

「今後は、インターメディエイトからアドバンストへ、本科クラスからグローバルクラスへの移動を希望する生徒に対し、放課後の補習などでバックアップする体制を一層整えていきます」(小口先生)

また、今年度入学した2期生23名も、1期生に負けず劣らず元気いっぱいです。「グローバルクラスがある学年は、個性が多様で一段と元気がいい」と小口先生は言います。さらに「新しいコースをねらって勉強してきたグローバルクラスの生徒は、総じて学ぶ意欲が高く、授業でもこちらの投げかけに対する反応が良いですね。自分の考えを臆せず発言し、授業に活気があります」と小口先生。グローバルクラスのいろいろな"熱"が本科クラスにも波及して、学年全体が活気づいているそうです。

和洋九段_

留学先としては恵まれた環境が整う
マルタ共和国での欧州語学研修。

和洋九段_

アジアの現状を実際にみることで
視野を広げるシンガポールの中学修学旅行。

中3の社会科では時期によってPBL型授業が半分以上

和洋九段の授業改革の1つが、全教科・全学年で取り組む「PBL型授業」です(図1)。トリガークエスチョンに正解はありません。PBLでは根拠を見つけて最適な解を導き出すプロセスを大切にしています。

PBLが最もなじみやすい教科が社会科です。現実社会の課題の解決策をグループで話し合うスタイルは、まさに社会科の学びに沿います。議論できる基礎知識が十分備わる中3の社会科では、ひんぱんにPBL型授業が行われます。大学入試対策が中心の高2・高3も、PBLの要素を授業に取り入れています。

社会科を教える小口先生に、授業の様子を伺うと「中2の歴史の授業で、元寇前後の鎌倉幕府の政治に点数をつけてもらいました。各自評価するポイントが異なり点数は一様ではありませんが、たとえ何点でも根拠が妥当であれば、答えの一つとしてみなすことが可能です。歴史の場合、信頼性のある資料をもとに因果関係を整理して、説得力のある理論を提示できるかどうかが問われ、資料を読み解く力、事実関係の認識力に重きが置かれます」(小口先生)。和洋九段ではPBLの要所である『考える』ことを大切にしながら、教科の特徴を踏まえてPBLを広い視野で捉えて取り組んでいるのです。

和洋九段_

(図1)

相手の心情を思いやり答えに悩む場面も

和洋九段_フューチャールームでのPBL型授業
フューチャールームでのPBL型授業

PBLの成否は、生徒の多様な発想を呼び起こす「トリガークエスチョン」にかかっています。例えば、中1の社会科で、1年を締めくくる授業のトリガークエスチョンは、「世の中を変えるためには何が必要か? そのために自分はどのような貢献ができるか?」でした。生徒からは、環境と経済の共存、政治と教育、地球温暖化など、1年間学んだことを生かして、多角的な視点からの意見や提案がなされました。

インパクトがあるトリガークエスチョンの一例に「人間の心はどこにあるか?」(中学保健)があります。これは定期試験にも出題したそうですが、単に心と体の関係について習ったことをそのまま書いたのでは満点を取ることはできないそうです。

また、予想以上に議論が白熱したのが、中国が世界の航空会社に対し台湾を中国の一部として表記するよう求めた問題です。北京と台北の新聞記事をそれぞれ生徒に配布して、「あなたが日本の航空会社の社長だったら、どのような対応をしますか?」を投げかけました。

なかなか答えを出せない生徒が多かったのですが、「台湾の人たちの心情を慮って悩んだことに安堵しました」と小口先生。杓子定規に考えると、一方を一刀両断することにもなりかねません。PBLのトレーニング通りにしなかったところに、相手の心情に寄り添おうとした生徒たちの心の成長がうかがえます。

トリガークエスチョンは教科内で共有するのはもちろんですが、他教科と重複するテーマについては参考にし、住み分けを行います。教科にまたがるテーマでも教科によって切り口が異なりますし、同じテーマでも学年によって問いの深さが違えば、導き出される答えも違うでしょう。今後は、教科横断、学年縦断での連携を取ってPBL型授業を発展させていきたいそうです。

中学生全員がタブレット端末を保有。プレゼンに磨きをかける

和洋九段_プレゼンや情報収集に活用されるタブレット端末
プレゼンや情報収集に活用されるタブレット端末

PBL型の授業を実施するにあたりICTの充実は欠かせません。和洋九段では中学生全員がタブレット端末を保有。端末内蔵のアプリを使用してスライドを作成するなど、「わかりやすく伝えるためにはどうすればよいのか」と試行錯誤を繰り返しています。
「人前で話すのはあまり得意ではないけど、メッセージを効果的に視覚化するのが得意な生徒は、前向きにプレゼンに取り組んでくれます。見せ方がうまいということは、情報を整理する力もあるということ。個々の長所を見つけて伸ばしていきたい」と小口先生。

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(図2)

また、PBLの導入に伴い、2017年度の中学入学者から独自の評価基準を採用しています。「学校ルーブリック」には、各教科・単元で取り組む課題と、具体的な到達レベルをマトリクス形式で明示しています(図2)。縦軸に「個人」「集団」「社会(世界)」を設定しているところは同校の特徴と言えるでしょう。

定期考査の結果以外の評価は、従来は最大20%まででしたが、ルーブリック設定後は最大50%にまで拡大しました。PBL型授業でプレゼンテーションをまとめたレポートや、グループディスカッションのブレストシートなども評価の対象です。「ここぞ」というときに力を発揮できることも大事ですが、日々の努力をきちんと評価してもらえるというのは、生徒たちにとって心強いのではないでしょうか。「学習に取り組む姿勢なども、プラスに働くことがある」と小口先生が話すように、今後はブラッシュアップしてより良いものに仕上げていくとのことです。

PBLで日常的に「考える」姿勢が定着

和洋九段_PBLの導入で生徒たちの学びにも変化が!
PBLの導入で生徒たちの学びにも変化が!

PBLのねらいは「主体的に、協働できること」。課題は与えられるのではなく、自分で発見し、自ら考えます。個人でできることには限界があります。だから和洋九段では周りを巻き込み協働する力を育むのです。

「生徒が自分の意見をはっきり言えるようになり、ディスカッションも盛り上がるようになったのは、PBLの導入効果が大きい」と小口先生。またPBLの効果は授業以外にも波及しています。例えば学校行事や部活動などでも生徒が主体的に考え、行動することで自分たちの意見が形になる機会が増えているそうです。

「考えることが『いつものこと』になれば、自ずと疑問も浮かぶようになります。考える姿勢はかなり定着してきましたから、疑問を見つける次の段階へ踏み出そうとしているのではないでしょうか」
(小口先生)

多様な個性を求める和洋九段の2019年入試

和洋九段_オーストラリア・ターム留学
和洋九段に入学すれば留学のチャンスも!
(写真はオーストラリア・ターム留学)

これまでも受験生の個性に合わせた多様な入試を行ってきた和洋九段ですが、2019年入試ではさらに「英語コミュニケーション入試」と「PBL型入試」の実施が決定しています。

英語コミュニケーション入試は、英語エッセイと英語面接を実施。また英語1科目(英語筆記)での受験も可能なので、自分が得意な英語力(4技能)でチャレンジができます。

PBL型入試は、その名の通り、和洋九段のPBL型授業を入試に落とし込んだ入試です。提示されたテーマについて、個人で考えをまとめ、グループで話し合い、意見発表するPBLのプロセスの取り組みを評価します。

さらに来年度からは「適性検査型入試」が再度試験科目に加わったことで、入試は全6回となります。
そこには"オールラウンダー"の4教科入試や一芸に秀でた入試など、受験生の長所を生かそうとする学校側の思いが表れています。多様性を受け入れてきた和洋九段ですが、新たな入試でさらにバラエティー豊かな個性が集まりそうです。

突き抜けた長所を伸ばす一方、グローバルクラスの「日本語取り出し授業」のように、苦手科目へのフォロー体制も充実。従来からの面倒見の良さはしっかりと受け継がれています。

1897年創立以来、120年積み上げてきた礎の上に、新たな取り組みが根づこうとしている和洋九段。個性豊かな生徒たちがこれからどんな花を咲かせるのか、楽しみでなりません。

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