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学校特集

日本学園中学校・高等学校2023

2026年度から明治大学系列校となり
女子を受け入れ共学校に
-創発学をベースに得意な分野でなりたい自分を目指す-

掲載日:2023年7月29日(土)

明治大学和泉キャンパスの徒歩圏内にある日本学園(東京都世田谷区)は、2026年4月1日から明治大学系列校となり、校名も「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に変わります。さらに女子を受け入れて共学校となり、新たなスタートを切る予定です。1885年に創立された歴史ある同校は、伝統を大切にしながら常に時代の先端をゆく教育を実践してきました。これまでの教育が、明治大学系列校化でさらにブラッシュアップされると期待される今後の展開について校長・水野重均先生に話を伺いました。

高大連携で日本学園の教育をさらに発展させる

 京王線・井の頭線の「明大前駅」から徒歩5分という便利な場所に位置する日本学園。前身は1885年に創設された東京英語学校で、創立138年の歴史を誇る伝統校です。校門をくぐると豊かな緑の中にたたずむ国の登録有形文化財指定の瀟洒な校舎が目に飛び込んできて、都心にいることを忘れるほど豊かな環境に驚きます。創立者である教育者・杉浦重剛(しげたけ)氏が掲げた建学の精神は「身心清潔見義明決者得稱大日本人」。身も心も清らかで筋道の通った正しい行いをし、世界の人と交わり活躍できる人物となれ、という意味です。さらに杉浦氏は「人は得意な道で成長すればよい」と提唱しており、個性や能力を育みのびのびと人財を育てることを重視していました。

日本学園_卒業生でもある校長・水野重均先生
卒業生でもある校長・水野重均先生

 自由闊達な校風で社会に貢献する人財を育ててきた同校の卒業生には、吉田茂元首相や画家・横山大観など錚々たるメンバーが名を連ねています。そんな同校が2026年度から明治大学系列校として、新たな時代を築いていくことになりました。2026年4月1日から校名が「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」となり、女子を受け入れて共学校となるのです。そして明治大学への推薦入学枠については、協定書に「卒業生のおよそ7割(約200名)以上が、明治大学へ推薦入学試験によって進学できる教育体制の構築を目指します」と記載されています。

 校長・水野重均先生は系列校化の経緯をこう振り返ります。「明治大学と本校は創立年代がほぼ同じで、個を大切にするという教育理念も共通しています。さらに明治大学和泉キャンパスは徒歩圏内にあり、10年ほど前から高大連携のプログラムを実施して関係や信頼を構築してきています。こうして信頼関係を積み重ねてきた中で系列校化の話が持ち上がり、正式調印に至ったのです」。

 日本学園創始者の杉浦氏は、昭和天皇に倫理を進講した経験もあり、人の心を育てることを大事にしていました。「明治時代に来日した外国人が、『日本は貧しい国だが、世界で類を見ないほど豊かな国だ』と言ったそうです。つまり経済的には貧しいけれど、日本に根付いている教育が豊かな心を育んでいる、ということでしょう。日本人ならではの倫理観や道徳観を大切に継承しながら世界でも通用する学力をつけるには、大学との連携が必要です。わが校でもさまざまな独自プログラムに取り組んできましたが、大学の知見を活用することで世界が広がり、生徒に多彩な機会を提供できるはずです」(水野先生)。

 明治大学の和泉キャンパスは徒歩圏内ですが、駿河台キャンパスにも京王線・都営新宿線1本で、理工学部のある生田キャンパスにも豪徳寺駅より小田急線1本で行ける好立地。今後は明治大学と連携して高大連携プログラムを推進し、付属校ならではのカリキュラムに取り組んでいく予定です。

【系列校化後のグランドデザインが完成】

【画像をクリックすると拡大します】

 明治大学付属世田谷中学校・高等学校のグランドデザインも、形になりつつあります。
「得意な道で成長すればよい」という理念はそのままに、国際理解教育、キャリア教育、理数教育に力を入れることで、
① 自ら課題を見つけ、課題に向き合い考え抜く力
② グローバル社会の中で自分を表現するコミュニケーション力
③ 情報化社会における最先端技術に対応し応用する力

の育成を目指します。

 これら全てのプログラムの根底に位置するのが、日本学園が伝統的に続けてきた創発学です。2003年から行っているオリジナルプログラム「創発学」は、さまざまな体験や行事を通して学びを深めていくもの。新学習指導要領に盛り込まれた「探究活動」の先をゆく内容で、最終的には生徒自身が得意なことや興味をもったテーマについて調べ、中3で研究論文の執筆や発表を行っています。「創発」の「発」は発見、発信、発問などさまざまな意味を含んでおり、探究学習よりさらに奥の深い学びを実践しています。
 明治大学との連携を機に、創発学はさらに深みのある内容に発展していきます。「まだ計画段階ですが」と前置きしたうえで水野先生はいくつかの構想を披露してくれました。

【創発学をベースに理系脳を育てる】

「創発学は理系の考え方を育て、さまざまな事象に興味関心を持つきっかけになる、実に面白いプログラムです」と水野先生は力を込めます。たとえば同校で創発学の第一歩として伝統的に行っているのが、中1の「林業体験」です。今年の林業体験の様子を、水野先生はこう話します。
「明治大学付属校化が発表されてから初実施となった23年度入試は受験生が激増し、120人ほどが入学しました。競争を勝ち抜いて入学した今年の中1生はテストへの向き合い方など集中力の高さは感じますが、中1ならではの素直さや感性の豊かさはこれまでの生徒と変わりません。林業体験では林の中を1時間ほど散策させ、疑問を感じたら案内役の林業に従事される方に質問するように、と話しました。すると『歩いていると地面が柔らかいところと固いところがあるのはなぜですか?』『遠くの山を見ると上は明るい緑で下が暗い緑ですが、どうしてですか?』といったその場に居るからこそ浮かぶ質問が出てきました」。

日本学園_木の伐採に挑戦する貴重な体験
木の伐採に挑戦する貴重な体験

 生徒の質問に対して林業従事者の方々は、地面の固さは地面の下に水の通り道があるかどうかで決まることや、山の上のほうに実のなる広葉樹があることで獣が山裾の人家に降りてこないようにしていることを丁寧に説明してくれました。
 さらに、代表生徒が大きな木にのこぎりで切りこみを入れてから皆で引っ張って木を倒す体験をしたり、切り出した丸太を2人1組でのこぎりで伐採したり。8つに切った丸太を組み上げて元の形に戻す木取りパズルや、間伐材を使ったスマホスタンド作りなどにも挑戦しました。

日本学園_生木の感触や香りに興味津々
生木の感触や香りに興味津々

「森で木を倒す体験は、多くの生徒にとって初めての経験だったはずです。木を切る時や倒れる時の感触を肌で感じ、たくさん飛び散る木くずの質感を体感するのは貴重な体験です。木の皮を水圧で剥く作業の見学後は、生木を触ったり香りをかいだりする生徒もいました。木取りパズルは木の太さだけでなく節目などにも注目して組み立てるなど、立体感覚の優れた生徒のいる班は組み立てスピードも速かったし、皆とても楽しそうに取り組んでいました。五感をフル活用して盛りだくさんの体験ができ、どの作業も生徒の前のめりの姿勢や生き生きした表情が印象的でした。」(水野先生)。

日本学園_林業体験を元に各自で新聞を作って掲示
林業体験を元に各自で新聞を作って掲示

 こうした体験行事にはなるべく同行しているという水野先生は、「生徒が目を輝かせていろいろなことを感じ取り、質問したり友だちとシェアしたりしている様子が面白いんです。自分で感じたことを素直に言葉にし、それが物事の本質に迫ることも多い。生徒のスイッチが入る瞬間に立ち会うことが、とにかく楽しいですね。全てを学んだり記憶に留めたりする必要はないので、何か1つでも自分の心に残るといいなと考えています。体験を元にひとりずつ『林業新聞』を作って貼り出しますが、それぞれ心に残っていることが違って、お互いの新聞を見るだけでもたくさんの学びや気付きにつながります」と笑顔で話します。

 こうした同校の創発学は、明治大学の先生方からも好評を博しています。コンテストや評価を目標に探究活動を行っている学校も多い中で、「日本学園の創発学は"生徒の気持ちに火をつける"」と高く評価されているといいます。座学による「認知能力」と、自然の中でのフィールドワークで「非認知能力」を鍛える学びの相乗効果で、生徒は持っている力を大きく伸ばしていくのです。

 近年はデータサイエンスが注目を集め、文系学部でも理数の知識や考え方が必要とされる場面が増えました。そこで同校では、進路に関わらず理系の基礎能力を鍛えていきたいと考えています。理論的な考え方や理数の基礎知識を身につけ、興味を持って創発する素地を作っていきます。現在、理系志望者は非常に少ないので、将来的には4割ほどが理系に進むことを目標に考えています。林業体験や漁業体験、農業体験などの校外学習や創発学を通して、興味関心を広げることは今後も続けていきます。さらにドローンやプログラミング講座なども実施して、理系に興味をもつ生徒を育てていく予定です。

【留学を見据えた英語教育やキャリア教育も視野】

 東京英語学校としてスタートした同校は、創立当初から英語教育に力を入れ、オリジナル英語プログラム「NGP(にちがく・グローカル・プログラム)」を導入しています。 国際理解教育についても今後はさらにブラッシュアップして、世界で活躍できる人財を育てていきます。

日本学園_日々の積み重ねで得意を伸ばす
日々の積み重ねで得意を伸ばす

 具体的な構想の1つとして、水野先生はTOEFLの受験を挙げます。これまでの中学・高校の英語教育では英検取得が主流でしたが、大学での留学を視野に入れると、アカデミックな環境で必要とされる英語力を測るTOEFLが必須となってきます。そこで中学・高校の早い段階から英検だけでなくTOEFLも受験させることで、留学や海外大学・大学院進学の素地を作ってほしいと考えているのです。

 また、高大連携プログラムはこれから具体的に形にしていきますが、キャリアに結びつけたプログラムを考えています。「例えば簿記検定試験や公認会計士試験などの資格試験や司法試験などに結びつく講座が設置できないかと考えているところです。明治大学和泉キャンパスとの共同事業や、ゆくゆくは『プレカレッジプログラム』なども導入するのが目標です。これは高校在学中に大学の講義を受講し、そこで取得した単位が大学入学後の単位に充当できるような仕組みが理想です。それが実現すると大学に対しての興味も湧いてくるでしょうし、付属校のメリットを活かせると思っています」(水野先生)。

着々と進む共学化準備や新校舎建設

 2026年度から女子を受け入れて共学校となるため、旧校舎のリニューアルや新校舎建設にも取り組んでいます。登録有形文化財に指定されている現在の校舎の真向かいに高校生用の新校舎を建設中で、2025年夏には完成予定です。現在の校舎は中学生棟になりますが、女子の更衣室やトイレなどの設備を含めてリニューアル工事に着手し、女子を受け入れる準備を整えていきます。女子の制服も時代に合わせてスラックスやオプションを作るなどさまざまな意見が出ており、検討を進めているところです。

 グランドデザインの具体化にあたっては、明治大学の先生と意見交換しながらカリキュラム作りに取り組んでいます。「理数教育のカリキュラムは、大学の先生と定期的に会議を行って内容を詰めているところです。系列校になるといっても大学側が提示することを実践するのではなく、大学側も『あくまでも日本学園が主体で、できることは大学側も協力を惜しみません』という姿勢で臨んでくれており、とてもいい関係が構築できています」(水野先生)。

 創発学が「生徒の気持ちに火をつけている」と高評価を得ている同校ですが、系列校化が決定し具体的なプログラムの策定や新校舎建築の準備が進んでいる今、「先生方の気持ちにも火がついている」と水野先生は話します。先生方が系列校化後に挑戦したいこと、取り組みたいことを意欲的に話し合い、形にしているからです。

 明治大学系列校化を発表後、同校は受験生や保護者からの注目度が上がり、大きな期待が寄せられています。そして同校の先生や明治大学の先生方も、具体的なプログラム作りに前向きに取り組む日々です。「課題や決めなければならないことは山積みですが、視野を広げ、より良い学びを提供できるチャンスでもあります。先生方と力を合わせ、大学との連携による相乗効果で、"なりたい自分"になれる(自走できる)ように生徒の成長に伴走していきます」(水野先生)。

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