学校特集

相模女子大学中学部・高等部2020

自己肯定感を高め命の大切さを学ぶ
マーガレットタイム
-さまざまな体験や共同学習を通して
自分や人の存在のかけがえのなさを認識する-

掲載日:2020年10月1日(木)

小田急線・相模大野駅から徒歩10分という通いやすい立地にある相模女子大学中学部・高等部。キャンパスは緑も豊かで、落ち着いて学校生活を送るにふさわしい好環境です。明治33(1900)年に創設された日本女学校を礎として発展し、昭和21(1946)年に現在の神奈川県相模原市に移転。創立者・西澤之助氏が掲げた建学の精神「高潔善美」の通り、学力だけでなく人間力やたおやかさを併せ持つ女性を育てています。今回は同校の核となる授業の1つ「マーガレットタイム」を取材し、担当の堤真美先生先生に話を伺いました。

自分と向き合い社会に目を向ける「マーガレットタイム」

相模女子_マーガレットタイムを担当する堤真美先生
マーガレットタイムを担当する堤真美先生

相模女子大学中学部・高等部は、幼稚部から大学院までを擁する広大な敷地の中にあります。
120年前の創設時からの建学の精神「高潔善美~固き心を以てやさしい行いをせよ~」の下、信念を貫く強さと、たおやかさを兼ね備えた女性の育成を目指しています。生きていく上での考え方や判断、行動の支えとなる「固き心」を育てる学びの1つが、中学部において2015年度から始まった「マーガレットタイム」です。これは自分自身や命と向き合うことで自己肯定感を高め、自分が信じた道を堂々と生きていくことを目指す同校ならではの授業。これからの時代に必要とされる主体的な学びの中で、失敗を恐れず挑戦する姿勢が養われます。

【高齢者の日常について考える中1の授業】
相模女子_自分の意見を書いてからグループで話し合う
自分の意見を書いてからグループで話し合う

マーガレットタイムは中学の各学年で週2回ずつ授業が行われます。高齢者の方の日常を知り、関わり方について考えることをねらいとした中1のマーガレットタイムの授業をご紹介しましょう。
1回目の授業では、「高齢者に対するマイナスイメージ」「お年寄りのすごいと思う点」「どのような高齢者になりたいか」について、自分で考えたり、グループで話し合ったりする時間を設けました。「優しい」「経験が豊富」「歩くのが遅い」「耳が遠い」といったイメージを共有する中で、「美しさや若々しさを保ち前向きに生きていたいと願うものの、知識や経験は豊富でも体や頭の回転が追いつかなくなる――理想と現実のギャップを高齢者自身も痛感しているはず」と気づきます。

さらに、堤先生は『私は三年間老人だった~明日の自分のためにできること』(パット・ムーア著)という本を紹介しました、26歳の工業デザイナー・ムーア氏が高齢者向けのデザインについて知るために、高齢者に変装して3年間を過ごした体験を綴った本です。"高齢者"として差別や虐待を体験したムーア氏は、著書の最後に認知症の老婦人のメモを紹介しています。

いま私はおばあさんになりました 自然の女神は残酷です
老人をまるでばかのように見せるのは自然の女神の悪い冗談
体はぼろぼろ、優雅さも気力も失せ、かつて心があったところには今では石ころがあるだけ
(中略)
年月はあまりに短すぎ、あまりに遠く過ぎてしまったと私は思うの
そして何ものも永遠ではないという厳しい現実を受け入れるのです
だから目を開けてよ、看護婦さん――目を開けてみてください
気むずかしいおばあさんではなくて、「私」をもっとよくみて!

『私は三年間老人だった~明日の自分のためにできること』(パット・ムーア著)より抜粋


これを読んだ生徒たちは、「高齢者が求めているのは、高齢者を特別な存在としてでなく、同世代と同じように普通に接してほしいということ」という結論に至り、それぞれ高齢者への思いや接し方をあらためて考え直すきっかけができました。

【高齢者疑似体験で思うように動けない辛さを実感】
相模女子_装具をつけて歩き始めるときは余裕でも...
装具をつけて歩き始めるときは余裕でも...

事前学習を踏まえて、2回目の授業では高齢者疑似体験を行いました。

2人1組になり、1人が高齢者を疑似体験できる装具をつけ、もう1人が介助にあたります。2人1組で校内を歩いたりパソコンを使うなど日常生活を体験し、高齢者がどんなふうに生活しているのか、どう感じているのか、そしてどのように介助すればいいのかを身をもって感じとります。

相模女子_「疲れた。もう歩けない」と座り込む姿も
「疲れた。もう歩けない」と座り込む姿も

最初はひじや膝に関節が動きにくくなるサポーターや筋力低下を体験できる重りをまいて、歩いたり階段を昇り降りします。歩き始めるときは笑顔を見せていた生徒も、階段を上ると息切れしたり、疲れて座り込んでしまったり。「こんなに大変だと思わなかった!」「たった10分でもぐったり」と生徒たちは思うように動けない辛さを訴えます。

堤先生が「下に落ちている物を拾える?」と聞くと、生徒は「かがむのが大変!」と話し、時間をかけて苦労しながら拾っていました。当たり前に行っている日常生活のちょっとした動作までできなくなることを体験し、生徒たちは驚きを隠せなかったようです。

相模女子_「えっ。文字が読めないよ」
「えっ。文字が読めないよ」

また、音が聞こえにくくなるヘッドフォンや、視界が白濁したり視野が狭くなるなど見えづらさを体験するアイマスクもつけてみます。「パソコンの文字がよく見えない」「小さい音が聞こえないから、孫と電話したくても話せないかも」と生徒たち。高齢者の辛さ、介助の大切さを身をもって感じられる貴重な体験をすることができました。

【体験を元に誰もが生きやすい社会に向けて話し合う】

事前学習と体験学習を経て、最後に振り返りとまとめの授業が行われました。生徒は次の項目に沿って自分の考えや意見を書き出したあと、班のメンバーと話し合います。

①高齢者体験をして感じたことを書き出し、班のメンバーと共有する
②体の不自由な状態のときに、どのような手助けをしてもらいたいと感じたか話し合う
③高齢者の活動の特徴を考える
④高齢者とはどうような関わり方が大切か
⑤高齢者との交流は自分たちに何を与えてくれるのか
⑥すべての人が「その人らしく」生きる社会に必要なものは何か


①では「おいしいものが美味しくなさそうに見えてしまった」「細かい生活音が聞こえないから、車や電車がどのくらい近づいているのか分からなくて怖い」「パソコンの文字がゴミみたいに見える」「落としたものが拾いづらい」など、具体的な意見がたくさん飛び出しました。

②では「下しか見られないから、信号の色が変わったら教えてほしい」「立つとき、座るときにサポートしてほしい」「とにかく、そばにいてほしい」など、体験したからこそ分かること、切実な思いや寂しさなどにも気づくことができました。自分の意見を書くだけでなく班で意見をシェアすることで「なるほど、そうだね」とお互いに気づきがあり、学びも深まります。

相模女子_皆で意見を出し合い役割分担してまとめる
皆で意見を出し合い役割分担してまとめる

③では「休む時間と場所が必要だよね」「"早く、早く!"なんてせかしたらダメだね」「役割がなくなると張り合いがなくなるし体を動かさなくなるから悪循環。どんな人にも"あなたが必要"という環境作りが必要」といった声もあがりました。中1とは思えないほど鋭い意見も多く、「私のうちにもおばあちゃんがいてね...」と身近な高齢者に思いをはせる姿も見られました。

④では「階段は一緒に降りる」「重い荷物は代わりに持つ」「話し相手になる」「なるべく一人にしない」など、高齢者を心身両方の面でサポートするさまざまな意見が出されました。

相模女子_班ごとに意見をまとめて掲示
班ごとに意見をまとめて掲示

⑤では「昔のことを学べる」「人への思いやりを学ぶことができる」「お互いをよく知ることでお互いのイメージが変わる(よくなる)」など、前向きな言葉をたくさん引き出すことができました。

そして⑥では「若者と高齢者の交流の場を作る」「若者と高齢者の扱いに差がないシステムを作る」「笑顔を増やす」など、班ごとに多様な意見が飛び交いました。最後の30分で班ごとに意見をまとめて書き出し、掲示用の厚紙に貼って完成させます。

マーガレットタイムで高齢者をテーマにするのは今年で2回目ですが、堤先生は「模擬体験はもう少し軽い雰囲気になるかと思っていましたが、皆とても真面目な態度で真剣そのもの。"こんなに大変だと思わなかった""この痛みや不自由さがずっと続くなんて耐えられない"といった声が上がり、生徒たちは想像以上に真摯に取り組み、高齢者の辛さを受け止めたようです。

授業の中で、生徒たちが他人事ではなく自分の課題として高齢者の問題に向き合い、真剣に考えている様子がひしひしと伝わってきます。また高齢者に対する気持ちや接し方を話し合う場面では、生徒たちの真剣な中に織り込まれた優しい言葉や表情が印象的でした。座学では得られない気づきや意識の変化を生む貴重な授業となりました。

【中2、中3では命の尊さや未来に目を向ける】

このように、中1のマーガレットタイムは自分を含めて人間の存在のかけがえのなさを学びます。「まずは自分のことを学んで自己肯定感を高め、次に友達、そして今回の高齢者のように周囲の人たちに少しずつ視線を広げていきます」(堤先生)。

中2では林間学校の農業体験などを経て自然の恵みや命の尊さを、中3は「未来と出会う」をテーマに助産師に話を聞いたり妊婦ジャケットを着て妊婦体験を行うなど、女性としてのライフステージを意識する時間を作ります。一般教科の授業では得られない学びを経て、生徒は自分がかけがえのない存在であることを心に刻み、自信を持って将来に向けて踏み出すことができるのです。

マーガレットタイムの学びを学外で発表

相模女子_調べたことを学外でも発表
調べたことを学外でも発表

マーガレットタイムで学んだことは学外の活動にも広がりを見せています。たとえば6月に相模女子大学キャンパスで開催された「かながわSDGsフォーラムinさがみはら」でも同校の生徒が発表の機会を得ることができました。

市内の企業や団体のパネルディスカッションに続き、同校の生徒がマーガレットタイムでの取り組みを発表しました。「"中1でもここまでできるなんて立派!"と参加した方から褒めていただきましたが、発表した生徒は"もっといい発表がしたかった"と悔しがっていました。学外での発表の機会が増えてきたので、生徒たちは"学んでいることが社会につながっている、世の中で求められている"と手ごたえを感じ、刺激を受けています」(堤先生)。

スーパーで「SDGsを意識した商品が並んでいた」「コンビニで恵方巻やうなぎを予約販売にして食品ロスを減らす取り組みを行っている」など、生徒たちは普段の生活の中でもマーガレットタイムでの学んだことを意識するようになりました。マーガレットタイムを核として、これからも生徒の意識や取り組みはさらに広がり、人としても女性としてもより一層の成長を見せてくれるに違いありません。

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