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学校特集

足立学園中学校・高等学校2019

「志」をもった若者が集う学舎
教育改革は9年目、「生徒第一主義」をモットーに掲げ、今なお進化中

掲載日:2019年9月10日(火)

今年創立90周年を迎えた足立学園。2011年度より教育改革を推し進め、2018年度からは高校で「探究コース」「文理コース」「総合コース」の3コース制が始動しています。中でも注目を集めているのが、2020年度入試から始まる「志入試」です。足立学園流の"志"とは一体何か、その実現のための教育実践について、校長の井上実先生と授業研究係副主任の飯山泰介先生に伺いました。

熱い"志"を抱き、実現するために

足立学園_校長の井上 実先生
校長の井上 実先生

足立学園で今最も重んじられている言葉が「志」です。創立以来の校訓「質実剛健」「有為敢闘」に加え、「志(ゆめ)なき者に成功なし」と井上先生は志をもつことの重要性を訴えています。

「生徒たちを見つめ続け、在学中に大きく成長するのは自分の志を明確にもっている子だという思いを強くしました。私たちは彼らが自らの志を叶え、満足のいく人生を送れるようバックアップしたい、どのような環境においても自分の力を発揮できるような太い人間力をもった人材に育ってほしいと考えながら生徒に向き合っています。新入生にも、足立学園で精一杯学んで夢や志を叶えるんだという気概をもって入学していただきたいのです」(井上先生)

この思いを叶えるべく、来春入試より形態が大きく変化。新設される「志入試」は、生徒の意志を確認し、入学への希望を尊重するために行われる内容で、募集人員の過半数を占めます。

●2020年2月1日実施「第1回(志入試)」概要

<事前提出>
・エントリーシート(志望理由100字、入学後の抱負や将来の目標100字)
・通知表のコピー(全面)
<選考方法>
・国算基礎学力テスト
・親子面接


足立学園_近年ますます同校を第一志望として入学する生徒が増加しています。写真は中1の授業風景。
近年ますます同校を第一志望として入学する生徒が増加しています。写真は中1の授業風景。

井上先生は「『志入試』は、入学前に一度、自分がなりたい未来の姿を真剣に考えてもらうことを狙いとしています。その上で"志"を叶える手段として本校を選んでいただきたいという思いがあります。自分の将来をきちんと思い描いて入学してきた生徒の伸びは、目を見張るものがあるからです」と話します。

「志入試」におけるエントリーシートと親子面接は、受験生が小6の現時点で、自分は何になりたいか、どんな夢を描いているかをしっかり考えて文章化し、家庭で話し合って共有してほしいという、足立学園からのメッセージです。どんな目標であれ一度はっきりと意識して発してみるという経験は、同校の合否にかかわらずお子様自身の財産となるはずです。

では、入学後の6年間で志を遂げる力を身につけるために、どのようなことを重視しているのでしょうか。

足立学園_能を観たり、茶道を嗜むなど、日本文化も学びます。
能を観たり、茶道を嗜むなど、日本文化も学びます。

「キーポイントは経験です。私たち教師は入学後の生徒たちにあらゆる経験をしてほしいと思っています。その体験を超えていくことによってたくましい男子となり、志を見据えて努力し、自分の夢を実現する人材に育つと信じているからです」(井上先生)

生徒に学習以外にも様々な体験をして人間的に大きく成長してほしい。そのために用意されているのが「課題探究」の授業と豊富な海外研修プログラムです。次章以降で具体的な取り組みを見てみましょう。

学校生活を通して"守破離"を経験し、志の実現へ踏み出す

足立学園_5月の連休明けに実施される「強歩大会」では、上級生が下級生を支え33kmを踏破。達成感と感動を味わえる行事です。
5月の連休明けに実施される「強歩大会」では、上級生が下級生を支え33kmを踏破。達成感と感動を味わえる行事です。

「課題探究」の取り組みの前段階として、入学したての中1・中2生はまず、基礎学力の確立を徹底します。一見、あらゆる経験とはかけ離れているように思えますが、この過程を経てから経験を積み、己を知ることで、初めて志に向かう力がついてくると同校では考えているからです。

「武道や茶道などの芸道の心得に"守破離"というものがあります。まずきちんとした基礎・基本を確実に身につける"守"、それから試行錯誤して新しいものを取り入れ心技を発展させる"破"、さらに離れて自分独自の新しいものを確立させる"離"。中高6年間でこの段階を経験し、自分の人生を自在に生きられるようになってほしいのです」(井上先生)

つまり、中1・中2は"守破離"の"守"として基礎を身につけ、中3からはその基礎を発展させて応用力を養い、"破"に向けて準備を整えます。そうしてしっかりと型を身につけた生徒たちが高1から出合うのが「課題探究」の授業なのです。探究コースで週2回行われ、答えのない課題を協働しながら調べてディベートし、その成果をまとめて発表することで、未知の世界を切り開く探究力、論理的・批判的な思考力、他者の考えを受け止め自分の考えを伝える対話力を養います。殻を破るための力を蓄えるのです。

足立学園_音楽の教諭でもある飯山泰介先生
音楽の教諭でもある飯山泰介先生

「課題探究」では新紙幣の肖像の予想、エッグドロップ®などが行われましたが、足立学園ならではの取り組みも生まれています。
このカリキュラムを主導しているのが、授業研究係副主任の飯山先生。今最も力を入れている課題内容が「足立区の活性化」です。足立学園の所在地・足立区はどのようなイメージをもたれているか、より魅力的な街にするにはどうしたらいいかを様々な視点からおよそ3ヶ月かけて調査し、各々の意見を交換します。中間発表の場には、足立区役所の建設課、健康福祉課など、生徒の発表内容に合わせた方々も同席してくださいました。

「最終結果を9月21日の学園祭で発表しますが、その場に足立区長がお越しになり、発表への評価をいただくことになっています。学園祭には外部の方も見学可能ですので、ぜひ発表をご覧ください」(飯山先生)

この厚い協力を望外の喜びと先生方は語りますが、足立学園が地域に根ざした教育を行い、地元の方々にも愛されている証左なのでしょう。

足立学園_積極的に外へ出て、世間や世界の広さを実感します。写真は「松下政経塾」での研修時のもの。
積極的に外へ出て、世間や世界の広さを実感します。写真は「松下政経塾」での研修時のもの。

その他、高1全員と高2希望者による松下政経塾での研修も実施。各界のリーダーを育てる機関で自分の志について真剣に考え発表することで、そのヴィジョンを具現化させます。また9月中旬には、探究活動で高い評価を得ている京都市立堀川高校のポスターセッションを見学し、自らの学びを高める機会を得ることになりました。

「高いレベルにいる同世代の姿を見てみたいという声が、生徒たちから自発的に出た結果です。ぜひ行ってほしいと、学校側が全面的にバックアップし、有志10名が参加します」(飯山先生)

こうした得がたい経験や自由闊達な意見交換を通して、生徒たちは徐々に、与えられた課題を考えるのではなく、自ら課題を見出す姿勢を学びます。そうして視野を広げ、自分の可能性や将来に思いを馳せ、"志"の実現へ近づいていくのです。

人間力向上を飛躍的に向上させる海外研修

足立学園_今年度から始まった「オーストラリア・スタディツアー」は35名が参加。現地校の生徒たちとの交流やホームステイを体験しました。
今年度から始まった「オーストラリア・スタディツアー」は35名が参加。現地校の生徒たちとの交流やホームステイを体験しました。

足立学園の海外研修は、中1から高2までの希望者が参加可能で、ヨーロッパからオセアニアまで、自分の英語力に合わせて選択し、ESL(日本人向けの英語の授業)クラスを受けつつ現地での生活を満喫することができます。

・オーストラリア・スタディツアー
8月中、12日間程度。中1から参加可能。別学年の生徒2〜3人一組でホームステイし、現地高校の授業に参加。ESLあり。先輩後輩と協力し合いながら生活し、自立心と国際感覚を身につけられる。

・イギリス語学研修
8月中、16日間程度。中3〜高2対象。名門ラグビー校でのサマースクールに参加し、寮に滞在。他国の生徒と同室となる可能性もあり、様々な国の生徒と交流できるのが特徴。午前中はESL、午後はスポーツなどのアクティビティに参加する。

足立学園_得がたい機会となる「カナダ特別プログラム」の様子。「帰国報告会」も実施され、経験を共有して学びを高め合います。
得がたい機会となる「カナダ特別プログラム」の様子。「帰国報告会」も実施され、経験を共有して学びを高め合います。

・カナダ特別留学プログラム
2019年1月から始まった高1希望者対象のプログラム。1月上旬から3月下旬までの約3ヶ月間、単独ホームステイを体験しながら、現地高校でESLクラスや歴史・美術などの現地の授業を受ける。カナダ人バディのサポートあり。

上記に加えて、来年度からはオックスフォード大学と提携した研修プログラムも始まります。9月上旬から14日間程度オックスフォード大学の寮に宿泊し、教授陣の授業を受けられるプログラムです。4〜5人でチームを組み、協働して調査・プレゼンの探究活動を3セット行い、名門大学での生活を垣間見ることができます。

足立学園では、これらの充実した海外研修を英語学習の場だけとは捉えてはいません。

「参加した生徒たちには、とにかく海外での生活を満喫して人間力を向上させてほしいのです。そのために様々なしかけを考えています」(井上先生)

オーストラリア研修では、先輩後輩をバディ制にするため、上級生は下級生に誇れる姿を見せようと奮闘し、下級生は上級生に憧れをもちます。そして帰国後も、学年を超えた交流を続けることができます。カナダ研修では保護者との交流を禁じ、現地生活を自力で乗り越えることで自信をつけ、その後の学園生活に活かしていきます。

社会貢献のできる"たくましい"男子の育成

足立学園_部活動も盛ん。今年度は写真の中学柔道部が全国大会で個人戦優勝、中学バスケットボール部が地区4大会で優勝を飾るなど好成績を残しています。
部活動も盛ん。今年度は写真の中学柔道部が全国大会で個人戦優勝、中学バスケットボール部が地区4大会で優勝を飾るなど好成績を残しています。

このような様々な体験を積み重ねながら、中高の学習を5年で終え、1年間は受験に専念する通常授業、活発な部活動、いじめ問題などの心のケア(スクールカウンセラーによるカウンセリング時間あり)、いのちの大切さや尊さを学ぶ特別授業「いのちの授業」などを受け、生徒は充実した学校生活を送ります。足立学園での6年間は、生徒を井の中の蛙とせず、自分は社会の中でどのような位置にいるのか、自分の能力・できることは何か、それを社会のために貢献できる活動は何かを追求する力をもつ人材へと育てるのです。

 昨年度は現役合格数574名、東京大学含め国公立・早慶などの有名大学への合格者も100名近く輩出していますが、井上先生はその結果を重視していません。

「現状では、本校の進学実績は頭打ちのように見えるかもしれません。それは、本校では、偏差値や大学名にとらわれずに心から自分が学びたい学問を修められる大学を受験するように指導しているからです。自分が本当に行きたいと感じた大学に入学し、そこで志をもって学び続けること。それこそが、生徒が本当に求めている、充足した未来につながるのではないでしょうか」(井上先生)

足立学園_4路線利用可能な北千住駅からわずか徒歩1分。立地条件が抜群で、地域との関わりも密接です。
4路線利用可能な北千住駅からわずか徒歩1分。立地条件が抜群で、地域との関わりも密接です。

2011年から始まった足立学園の教育改革は今年で9年目を迎えますが、まだその最終形に到達していません。

「2020年の大学入試改革しかり、将来はAIによる働き方の変化なども盛んに論じられているように、社会情勢は日々動いていきます。私たちはこの流れに遅れぬよう、生徒たちの未来を考え、彼らのためになる情報を得たら速やかに精査し、『生徒第一主義』をモットーに改革を続けます。お預かりしている生徒たちを第一に考えて相対している様子や、6年間で成長した姿をご覧になり、その姿勢に共鳴してくださる方に入学していただければ。そして在校生には、毎朝校舎に足を踏み入れる度に『自分の志のために学ぶのだ』と日々決意を新たにするような、凜とした雰囲気を醸成していきたいと思っています」(井上先生)

夢や志を見出してしっかりと育み、それを自らの力で実現するたくましい男子へ。足立学園の教育は、生徒たちが希望する未来への道標になるはずです。

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