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学校特集

八王子学園八王子中学校・高等学校

「離れていても心はそばに」生徒の主体性から見る「八学」の底力
休校中は動画配信の授業と細やかなフォロー、自ら動く生徒たちの活躍で仲間たちとつながる輪を実感

掲載日:2020年9月1日(火)

1928年創設の伝統校・八王子学園八王子。八王子の地に根付き、近隣住民からは通称「八学」として親しまれています。教育理念に「人格を尊重しよう、平和を心につちかおう」を掲げ、人間教育に重点を置いて、主体的で多様性を分かち合う生徒を育んでいます。
2012年には中学を新設し、中高一貫校へ。さらに16年には「八学イノベーション」と題した学校改革を実施。タブレット端末を生徒に1人1台導入し、電子黒板を取り入れICT化を推進。最難関の国公立・私立大学への進学をめざす「東大・医進クラス」と確かな学力と人間力を育む「一貫特進クラス」のコース制を開設しました。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のために休校措置が取られている間、同校はどのように対応したのでしょうか。募集広報部長の吉村昌輝先生にお話を伺いました。

「離れていても心はそばに」。行動で伝え続けた休校期間

リアルタイムを意識して、朝礼はスプレッドシートで情報共有
八王子学園八王子_募集広報部長の吉村昌輝先生
募集広報部長の吉村昌輝先生

八王子学園八王子では新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための休校期間を経て、6月第1週目から分散登校を開始。3週目からは通常登校となりました。
大人でさえ不安に陥る未曾有の事態。生徒たちの心労は計り知れません。休校期間中、同校の先生方が最も意識したのは「離れていても心はそばに」という姿勢を態度で示し続けることでした。

休校が決まって初めに導入したのは中学生へ向けた朝礼です。インターネットを介して使用するWebアプリケーション「Googleスプレッドシート」を使い、朝礼の時間にリアルタイムで出欠を取りました。生徒はスプレッドシートに書かれた自分の出席番号の空欄にコメントを書きこむだけ。同時刻にスプレッドシートを共有することで、ほかのクラスメートやクラス担任のコメントが追加されていく仕組みです。リアルタイムで次々と埋まっていくメッセージに、励まされた生徒は多かったことでしょう。
この出欠に参加できなかった生徒は、教員から家庭へ電話などを使ってアプローチ。メンタルケアや家庭のインターネット環境などにあわせフォローしていきました。

八王子学園八王子_ICTなどを活用して、教職員一丸となって最大限のフォローアップを行いました。
ICTなどを活用して、教職員一丸となって最大限のフォローアップを行いました。

「4〜5月はクラスの雰囲気作りに欠かせない重要な時期です。生徒の中には新しいクラスメートと話したことのない子もいるでしょう。自己紹介をする時間を、ビデオ会議などに用いられる『Google Meet』を使って設けたクラスもありました。そうやって同じ時間を一緒に過ごすことで、みんなと離れていてもつながっている体験ができるように配慮しました」

また、養護教諭やスクールカウンセラーによる「電話相談」も実施。5月からは「Google Meet」を使い、担任の先生と生徒の2者面談も行いました。
「定期的に生徒から質問を募り、『Q&A』も公開していました。できるだけ生徒の不安の声を拾う仕掛けづくりに努めました」

この取材に伺った時期はちょうど分散登校が始まった頃。ある程度従来の生活に戻ったとはいえ、クラスの雰囲気はまだ重たいと吉村先生は言います。
「普段は授業中に冗談を言ったら笑ってくれるクラスでも、今は難しい状況ですね。それだけ彼らの心の負担は大きいということでしょう。これからも生徒たちの心に寄り添いながら、フォローを続けていく方針です」

授業動画の成果が実感された分散登校

授業を動画で配信。ロイロノートで確認テストも
八王子学園八王子_電子黒板とタブレットを用いて、授業のレベルアップをはかると共にICTリテラシーを身につけています。
電子黒板とタブレットを用いて、授業のレベルアップをはかると共にICTリテラシーを身につけています。

「八学イノベーション」と題し、2016年からICT化に取り組んできた同校では、生徒に1人1台のタブレット端末を配布しており、教員も指導に慣れています。休校期間中のオンライン学習にも迅速に対応していきました。

新学期が始まった4月上旬から「Google Classroom」を使って教員が作成した授業を動画で配信。Googleドライブを使って生徒たちと共有しました。
動画はパワーポイントを使って作成するなど、先生方それぞれが工夫を凝らしました。中2・中3の社会科を担当する吉村先生は、週に1度は学校を訪れ、授業動画を撮影。学校の臨場感を少しでも生徒に伝えたくて、黒板を背に顔を出して動画を作成したと言います。
「教員としては、現場の授業と違い、生徒の反応がわかりにくいのが難点ですね。パワーポイントの資料では重要語句を穴抜きにして問いかけるなど、理解度を測れるよう工夫しました」

そんな授業動画の成果が感じられたのは、教室で生徒と実際に授業をした時だったそう。
「授業動画の内容を生徒に尋ねるときちんと答えてくれました。その時に初めて、授業動画を見ていてくれたことが実感できました。それと共に、普段と異なる環境下でも勉強を続ける生徒たちの精神力には感心しましたね」

八王子学園八王子_日々の学校生活の中で、話し合いをしたり、相互理解を促す姿勢が自然と浸透しています。
日々の学校生活の中で、話し合いをしたり、相互理解を促す姿勢が自然と浸透しています。

ほかにも「スタディサプリ」で配信されている動画を使った学習や「ロイロノート」を活用した課題提出・添削・ライブ授業を実施しました。中には「Google Meet」を使い、生徒と教員の双方向の授業を実施した先生もいます。

「これまでのICT化が功を奏し、さまざまなアプリを使うことで、生徒を戸惑わせることなくオンライン授業に臨めました。
ただ、アンケートを実施すると、画面を見続けるので目が疲れるといった回答が。休憩する時間を設け、少しでもストレスなく学べるよう、配慮しました」

休校期間中、学校からは1時間目、2時間目と学習教科を指定はしていましたが、家庭のネット環境などの違いを考慮して、朝礼以外の時間を厳密には定めず、自由な時間に学習できるよう配慮しました。また、単元の確認テストなどもグーグルフォームを使って実施。学習環境に差異があることを鑑みた上で成績への反映を予定しています。

生徒から発信された繋がりを感じる動画

学校行事も生徒が主体。体育祭や文化祭は生徒に可能性を探らせる場へ
八王子学園八王子_野球部と吹奏楽部がコラボした動画。その他のものも学校HPで多数紹介しているので、ぜひご覧ください。
野球部と吹奏楽部がコラボした動画。その他のものも学校HPで多数紹介しているので、ぜひご覧ください。

休校期間中、ほぼ毎日公式ホームページを更新していた八学。その中でも、生徒発案の動画は視聴者に勇気を与えると人気を集めました。
高校吹奏楽部では「おうちで部活プロジェクト」と題し、部員がリモートでの合奏を実現。顧問に掛け合い、YouTubeに25本もの動画を作成・配信しました。また、公式試合の中止が宣告された野球部でも、部員が野球ボールを投げる様子を個々に撮影。バトンのようにキャッチしていく様を動画編集して配信しました。

生徒発信の動画は部活動だけに留まりません。2019年に発足したオープンキャンパスや学校説明会、学園祭(八学祭)ツアー、入試模擬体験会などで活躍する「生徒広報委員会」も、これまでに母校の魅力を伝えてきた経験を活かし、受験生向けの応援メッセージ動画を作成しました。
このように生徒からオンラインを使った企画が立ち上がったのは、主体性を育む同校の教育の成果といえるでしょう。

「これまで授業を通して、自分と異なる他者の意見を理解し、話し合う機会を豊富に持たせてきました。それが生徒同士の集まりの中でも発揮されたと感じています」

八王子学園八王子_自主学習をしていた生徒の観察日記。知的好奇心を育む環境が揃っています。
自主学習をしていた生徒の観察日記。知的好奇心を育む環境が揃っています。

また、注目すべきは生徒自ら発案し、続けていた中1生の野鳥観察日記です。自宅の近くにある多摩川へやってくる鳥たちを毎日観察して、写真を撮影し鳥の特徴を記していきました。
「この生徒は好奇心旺盛で、観察日記は休校期間中に5冊以上も完成させていました。写真の撮影技術も素晴らしく、担任がうまく生徒の力を引き出したのだと思います。このような生徒発信の企画には励まされる思いでしたね」

一方で、文化祭や体育祭などの行事は、さまざまな学校で中止が見込まれています。八王子学園八王子の学校行事は生徒たちが運営するのが伝統。同校ではただ中止するのではなく、生徒たちの意見を積極的に取り入れていきたいと考えています。
「本校の行事は生徒がつくるものです。教員が一方的に行事の中止を決めるのではなく、生徒に可能性を模索させたいと思っています」

生徒会からはすでにオンラインでの文化祭開催などの案が上がっているそう。教員はこれも「生徒の主体性と協働性を育む場」として、安全を確保してできるよう全力でサポートしていく方針です。

今後はより協働性を重視した教育へ

暗記する単元は動画で学び、授業はクラスメートと話し合う時間へ
八王子学園八王子_自信を持って使える英語力を身につけるべく、ネイティブ教員による授業など、独自の戦略的語学教育を実践しています。
自信を持って使える英語力を身につけるべく、ネイティブ教員による授業など、独自の戦略的語学教育を実践しています。

コロナ禍で、学校という場の役割がもう一度見直される機会となりました。吉村先生は今後の学校教育の必要性について考えさせられたと言います。
「外出自粛中、人との出会いや話し合いがどれだけ貴重か、身に染みた方が多いのではないでしょうか。どれだけ技術が発展したとしても、オンラインツールだけでは世の中は回りません。未来は予測不可能ですが、生身の人間が顔を合わせて話し合う必要性を感じています」

例えば、授業ではクラスメートとさまざまな意見を交わすことで、多様性が育まれています。こういった双方向の意思疎通が複数人で行われる場面はオンラインでは難しいそうです。
そこで大事になってくるのが、八学で最も特色ある学びの『探究ゼミ』です。このゼミは歴史、社会、自然、産業、八王子、世界などのテーマから一つを選び、中学3年間を前期と後期に分けて向き合う授業です。同時に中1は「調べる」、中2は「話す」、中3は「書く」を学年別の目標に設定し、調査能力、プレゼンテーション力、自分自身で考え方を整理しまとめる力を、段階を踏まえながら育みます。

八王子学園八王子_「探究ゼミ」は、地域の大人とも触れ合い多様な考え方を知ったり、自分自身を見つめ成長できる機会です。
「探究ゼミ」は、地域の大人とも触れ合い多様な考え方を知ったり、自分自身を見つめ成長できる機会です。

「このゼミは、生徒が自分で考え、発信していく力を高めていく学びです。オンラインではなかなか難しい授業ですが、答えのない課題に向き合う、これからの未来に必要となる力です。より重視していきたいと思っています」
一方で、オンラインツールを使えば学習が容易になる単元も見えてきました。

「社会科でいえば、覚えるという作業は感染のリスクを負ってまで通学し、授業内に行う必要はあまりないでしょう。オンラインツールを使って自宅で覚え、学校ではクラスメートとディベートをする流れに変わっていくと思います」

学校再開後はより主体的な学び・協働性を重視した授業となり、生徒同士がさらに活発に議論し合うような授業を重視する見通しです。
「分散登校が開始され、まだまだ不安な中ですが、生徒はそれでも登校してくる。メンタルを維持するのも大変だと思いますが、がんばってくれているのが伝わります。教員としては感謝の思いでいっぱいです。『離れていても心はそばに』。学校内が一丸となって頑張ろうという気力で満ちています」

2日の午後入試を「東大・医進クラス入試」へ

勉強だけでなく自ら課題を見つけ、答えを考えていく。社会で役立つ人財の育成
八王子学園八王子_学校生活の中でプレゼンする機会が豊富です。主体的に発信していくことで、より充実した学びとなります。
学校生活の中でプレゼンする機会が豊富です。主体的に発信していくことで、より充実した学びとなります。

「離れていても心はそばに」は、同校から受験生へ伝えたい思いでもあります。休校期間中、ホームページでは、受験生向けの勉強のアドバイスも発信し続けていました。受験生が外出して自分で情報を入手しにくい時期だからこそ、コンテンツを充実させ、よりオープンな学校の雰囲気づくりに一役買いました。

2021年入試では、2日の午後入試を入学希望者の多い「東大・医進クラス入試」へ変更。また、「東大・医進」クラスはこれまで全員を特待生として受け入れてきましたが、一般合格も出すことで、より意欲のある生徒を受け入れる方針です。

「本校は主体性を尊重する学校です。勉強だけでなく、追いたいテーマを自分で見つけられる子どもたちを応援しています。コロナ禍で受験勉強が十分ではないと不安に感じる方もいると思いますが、みんな同じ状況です。安心して受けに来てほしいですね」

受験生への温かな気遣いが学校ホームページからも感じられる八王子学園八王子。生徒の主体的な活動を促し、見守りながら、学問への深い探究心を導いていく。八学の学びは生徒たちの中に息づいています。

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