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学校特集

女子聖学院中学校・高等学校2021

「探究」と「ICT」を両輪に、社会に貢献できる女性を育む
トライ&エラーを繰り返し、問いを深めることで探究への第一歩を踏み出す

掲載日:2021年10月1日(金)

 創立から116年。生徒たちが生きる次代を見据える同校は、「Be a Messenger〜語ることばをもつ人を育てます〜」という教育スローガンの下、「社会に貢献できる女性」の育成を目指しています。その揺るがぬ基盤は、キリスト教主義の女子教育。そして今、生徒たちが主体的に自らを表現し、21世紀を創出していけるよう、中学3年間は「総合学習」の時間で「探究」に取り組んでいます。その具体的な取り組みについて、副校長の渡部克己先生と探究・ICT委員会委員長の川村明子先生(数学科)、広報室の中井嘉子先生(社会科)にお話を伺いました。

キリスト教の教えに基づく、探究学習の土台となる「3つの軸」

■「なりたい自分」から「期待される自分」へ

 人間は神から見守られている存在であり、人は生きていること自体に意味がある。ミッションスクールである同校は、キリスト教主義の教えを土台に一人ひとりを大切にする学びを実践しています。

 同校の教育スローガンは、「Be a Messenger〜〜語ることばをもつ人を育てます〜」。冒頭の「Be」には、存在(自分と他者を肯定する)、「a」には、個で立つ(学び続けられる学習者になる)、そして「Messenger」には、己が役割(自立して社会に貢献できる人材となる)という意味が込められています。

「若者に過ぎないと言ってはならない」(エレミヤ書1章7節)

「私はまだ若者に過ぎず、どのように語ってよいか知りません」......多くの若者は、そう言いたくなる時もあるかもしれません。でも、この言葉は、「どんな場面でもどんな相手にも、伝えようとする覚悟を持ちなさい。すべてはそこから始まるのです」という教えです。

女子聖_副校長の渡部克己先生
副校長の渡部克己先生

渡部副校長:「神と自分、仲間と自分、そして3つめの軸として、過去と未来が交差する時間軸の中で生きている自分が、社会の中で何をなすべきか。中高6年間で生徒たちは、自分は将来どうなりたいかを考えていきます。この時期は、『なりたい自分』から、自分に何ができるのかを考え『期待される自分』へと価値観を転換させていく時期でもあります。自らの役割を、覚悟をもって果たしていく。本校では、そうした集団の中で生きるための社会性を身につけた人間を育てていきたいと思っています」

■中学3年間を通して、「学びとは何か」を探究

女子聖_中1の「探究」はこれを知ることから始まる
[参考:「『探究』する学びを作る」藤原さと(2020)]
中1の「探究」はこれを知ることから始まる
[参考:「『探究』する学びを作る」藤原さと(2020)]

 多様な価値観が交錯する不確実な時代だからこそ、「社会に貢献できる女性」を育成する意味の重さが増していますが、同校では今、新たな取り組みとして中学3年間の「総合学習」の時間で「探究学習」に取り組んでいます。
 川村先生は、「中1から中3まで、それぞれ学習テーマを設定していますが、その『3つの柱』の奥行きをいかに広げていくかが大切」だと言います。

川村先生:「学年ごとの学習テーマは、中1は探究学習の導入として『学びとは何か』を学び、中2は『本物に触れる』をテーマにさまざまな社会課題を理解し、自分事として探究する力を身につけていきます。3年間のまとめとなる中3では『自分が理想とする未来を描く』ポスターや作品を作り、『未来の○○展』を実施します。○○を表現する手段は、各自が自由に考えていきます」

 ここで、中1・2の具体的な試みをいくつか紹介しましょう。

■中1で学ぶ「探究の進め方のサイクル」

 中1の最初の総合学習では、「探究」の意味をわかりやすく説明するために、川村先生はイラストをふんだんに使ったスライドを用意しました。そのタイトルは「これからみなさんは『探究』という旅に出ます」です。

女子聖_探究・ICT委員会委員長で数学科の川村明子先生
探究・ICT委員会委員長で数学科の川村明子先生

川村先生:「行き先は海なのか山なのか。移動の手段は船なのかヨットなのか、車なのか。ヨットなら操縦方法を覚えなければいけないよねと、身近な問題として考えるところから始めました。未知の世界に旅立っていくためにはいろいろな知識が必要であること、そして、自分で経験してトライ&エラーを繰り返しながら、自分にとって大切なことは何かを学びとっていくことが『探究』なのだと知ってもらうためです」

 小学生の時とは違ったやり方に最初は戸惑いながらも、生徒たちの関心は高かったそうです。
 例えば、先生が「大好きな『お肉』はどうやって運ばれてくると思う?」と問いかけ、「牛を飼うには餌が必要だよね。じゃあ、餌となる植物を育てる時に大事なことは?」と、質問を重ねていきます。

 先生から答えを教わるのではなく、自分で疑問や問いを見つけながら背景や知識を調べて深く掘り下げ、さらに問いを見つけていく。この「探究の進め方のサイクル」を学ぶことが、探究学習への第一歩でした。

女子聖_川村先生が作成したスライドより
川村先生が作成したスライドより

川村先生:「学びに対する動機づけを高めるには褒めることが重要だとされますが、生徒は褒められることで、自分の行動や考えを客観視できるようになります。認知心理学では自分を客観視することを『メタ認知』といいますが、メタ認知の力を高めることで、例えば数学でも○か×かという結果に終始するのではなく、計算を間違えたら、何が原因でどこで間違えたかを自分で気づくようになることが大事であると。こうした発想は、勉強だけでなく生活のあらゆることに関わってくるので、事あるごとに、『今、あなたがやっていることはメタ認知だよ』と言い続けています」

週2時間の「総合学習」で学ぶ探究は、1時間は講義、もう1時間は個人やグループで調べものをしたり話し合ったり、「振り返り」に当てています。

■中2では、レゴ®ブロックで自分の作品を作ることから考えを深める

「本物に触れる」をテーマとする中2では、さらに「探究」を深化させていきます。
 中1で「探究の進め方のサイクル」を身につけた生徒たちは、具体的な社会課題に向き合うことで、自分が何に関心が持っているかを探っていくのです。

女子聖_自分のイメージをレゴ®ブロックで表現する生徒たち
自分のイメージをレゴ®ブロックで表現する生徒たち

 その導入として、レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材を活用したワークショップ(レゴ®ブロックを思考やコミュニケーションのツールにして組織の問題解決を促進する研修メソッド)を行っています。
 これはGoogleやNASAなど欧米の企業で取り入れられている手法で、「第2の脳」と言われる「手」を動かし作品を作ることで、それぞれの心の奥に隠れた思いを形にし、作品を通して語ることで、お互いの考えに気づくことができるというもの。作品を作ったり仲間と作品について語ることで、想像力やデザイン力が発揮されます。

 レゴ®シリアスプレイ®の認定ファシリテータの資格を持つ中井先生は、「作品についてお互いに質問をし合うことで、生徒たちは自分が見ていたイメージと、作者の意図したところが違っていることに気づくことがあります。また、そもそも同じブロックで同じお題に取り組んでいるのに、まったく違う作品ができあがることに、驚き、興奮していました。お互いが違うということを、とてもポジティブに捉える姿が印象的でした」と言います。

中井先生:「お互いの違いを楽しみ、作品を通して語るというメタファー表現に親しんだあとは、『わたしの考えるよりよい世界』というテーマで作品を作ってもらいました。総合学習の時間だけではなく、さまざまな教科を通しても、生徒たちは『世界の現状』について学びを深めつつあります。個々人が『これをなんとかしたい』というテーマに対して、自分なりの理想の世界をイメージすることを狙いとしていました。ブロックで作品を作ることで、言葉だけで言い表すよりも奥行きや具体性のある思考につなげられればとの思いからです。今後もタイミングを見ながら、手を動かしてブロックを触り、お互いの考えやイメージを共有する取り組みを続けていきたいと思います」

 このように、自分のイメージを具象化することで「伝えることば」を獲得した生徒たちは、その後は「本物に触れる」をキーワードにさまざまな社会課題にチャレンジしていきます。
 SDGs(持続可能な開発目標)に関連した学びも行っており、実際に与論島でサンゴ礁の保全活動に取り組んでいる専門家(卒業生)とオンラインで結んでレクチャーしてもらいました。コロナ禍で制限はありますが、今後も可能な限り「本物に触れる」さまざまな出会いを創出していきたいと、先生方は準備を進めています。

「探究」と「ICT」を両輪に、「デジタル・シティズンシップ」と「リーダーシップ」を育成

■「デジタル・シティズンシップ」と、先生方の発想の転換

女子聖_ICT活用で生徒たちの学びがよりアクティブに
ICT活用で生徒たちの学びがよりアクティブに

 一昨年に、情報通信システムを完備したフューチャールームを開設し、生徒主体のアクティブラーニングに最適な環境が整いました。生徒全員が一人1台のタブレットを持ち、生徒たちは文房具のように普段から使いこなしています。

 そして特筆すべきは、情報リテラシーの学びとして、欧米では幼稚園から導入されている「デジタル・シティズンシップ」教育を導入したことでしょう。ICTの「善き使い手」となるため、話し合いなどを通して生徒自身がデジタル技術や思考法を身につけ、社会を主体的に作る力を培っていくのです。
 これまでの教育現場では、「こういう使い方はやめましょう」とあらかじめ決まったルールを教える方法が一般的でした。しかし、デジタル・シティズンシップ教育では、「こうあるべき」という解決方法を示しません。さまざまな考え方を示して、「あなたならどうする?」と問いかけていくのです。

川村先生:「これは学習と分断された、生徒指導的な情報モラル教育ではなく、指導者と学習者が共に学びの当事者になるという考え方です。個人の安全な利用のためだけではなく、人権と民主主義のための情報社会を構築する善き市民になるために、安全にかつ『責任をもって行動するための理由と方法』を学ぶのです」

 川村先生は授業の中で、デジタル・シティズンシップ教育教材として有名な米NPO・Common Sense Educationの10代の子どもたちが「デジタル習性」について体験を語る動画を見せて、生徒たちが感想を述べ合う時間を作りました。
 同世代が語る「ついつい動画をつけっぱなしにしてしまっている」「スマホが手放せない」などのあるある体験を、生徒たちは自分事に置き換えて真摯に話し合っていたそうです。「寝る前に親にスマホを預けようと思います」と、具体的な行動変容につなげた生徒もいます。

川村先生:「重要なのは、生徒たちに自分で考える時間を与えることです。教員はどうしてもいろいろなことを教えたいと思ってしまいますが、一番大事なことは生徒自身が成長していくこと。私たち教員の役割は、必要なタイミングで、最低限必要な情報を与えることだと痛感させられます。我々教員側の発想を転換することも必要なのだと思います」

■一人ひとりが自分の役割を自覚し、必要な時に必要な力を発揮するのが「リーダーシップ」

 ICT教育におけるデジタル・シティズンシップ教育と並行して、同校で大切にしているのがリーダーシップ教育です。どんな人とも、どんな状況にも、心を開いて向き合い、共に何かを創り出していける人になれるよう、先生方は生徒を励まし続けます。

女子聖_記念祭にて。「学校紹介の部屋」にスタンバイする高3生
記念祭にて。「学校紹介の部屋」にスタンバイする高3生

 同校が考えるリーダーシップとは、特定の人間の発言力や実行力を指すものではありません。多くの人間が関わって協働していく時に重要なことは、一人ひとりがそれぞれの役割を自覚して、必要な時に必要な力を発揮すること。つまり、それぞれが自らの能力を発揮することがリーダーシップであると捉えています。

 運動会や文化祭などさまざまな学校行事を生徒たちが運営する際、意見の違いを乗り越え、同じ目的に向かって協力し合う。そうした、全員がそれぞれに発揮するリーダーシップのあり方を学び、その時の立ち位置に応じて役割を実行できる人間こそが、同校が育成を目指す人物像なのです。

■「学びのサイクル」を身につけ、生徒の成長を待つ中高一貫教育

 若手の先生方を中心にスタートした「探究学習」について、「旧世代の教員にとっては刺激的かつ新鮮」と渡部副校長は話します。

女子聖_記念祭実行委員の発案で、受験生を各回とも50組ずつお出迎え
記念祭実行委員の発案で、受験生を各回とも50組ずつお出迎え

渡部先生:「生徒のやる気を引き出すことに止まらず、自発的に『学びのサイクル』を身につける仕掛け作りという発想は、かつてないものでした。教員にとって、生徒の成長を待つというのは、忍耐が必要です。逆に言えば、6年間共に学ぶ中高一貫校だからこそできる教育手法ではないでしょうか。卒業する時、生徒たちは口々に『自分たちの学年が一番良かった!』と言うのですが、これは自身の存在価値を確認できていた証です。仲間と絆を紡ぎあい、自分は生きていていいのだという思いを持ち続けられること。これはかけがえのない賜り物であり、生徒たちの人生の素地になっていくでしょう。中高時代は、自分の価値観を作り上げる大切な時間です。だからこそ、どのように過ごすかが大事なのです」

「共に喜び、共に泣く」(ローマの信徒への手紙12章15節)

 同校では学校行事などで、仲間と心を触れ合わせる機会を大切にしてきました。しかし、コロナ禍による休校期間(オンライン学習期間)の経験を通して、「友達と会っておしゃべりしたり喧嘩したり、部活をしたりする学校生活の大切さを再認識させられました」と、渡部副校長は語ります。
 女子聖学院では、上の写真にあるように、さまざまな制約がありながらも生徒たち自身は「今、できること」を模索し、果敢に実行し続けています。

 互いを尊重し共感し合うキリスト教教育を基盤に、この状況下でも可能な限りリアルにこだわり、生徒一人ひとりと向き合う同校。すべては、生徒の未来のために。その教育哲学は、確実に生徒たちの中に根を張っているようです。

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