【東京学芸大学附属国際中等教育学校】適性検査から迫る、教育の本質!
my TYPE第13号(2025年7月13日発行)掲載
取材・文/石坂康倫 ※写真:雨宮校長先生とご一緒に記念撮影
西武池袋線大泉学園駅から徒歩8分、JR吉祥寺駅からバス26分で到着する東京学芸大学附属国際中等教育学校。24クラス720名という学校です。校地が広くて緑の多さに驚きました。一クラスも30人とこじんまりしていてアットホームな感じです。今回の訪問は、この学校で実施しているA方式と適性検査B方式を探るのが目的です。併せて、この学校の魅力も織り交ぜながら紹介します。
学校全体の教育方針について
石坂(取材者):まず、貴校が掲げる教育方針の核となる考え方をお聞かせください。
雨宮真一校長:本校の教育の核となるのは、「知識をどう社会課題と結びつけ、活用するか」です。学力というものを“知識量”ではなく“知識の使い方”として捉えています。中等教育の6年間で、自分自身の考えを深めながら社会と関係づける力を育むことが重要だと考えています。
B方式の適性検査について
石坂:B方式の適性検査は、一般的な学力検査とは異なるようですが、その意図を教えてください。
雨宮校長:B方式は、本校のアドミッション・ポリシーに沿って作られています。求める資質は以下の4つです。
1.現代的な課題を読み解く力
2.知識とイメージを再構築する力
3.対話を通して関係を築く力
4.異文化への寛容性と耐性
これらの資質に基づき、「この子は社会とどう向き合うだろうか?」という視点から問題を作成しています。ですので、暗記型の学力では測れないような思考の深さ、柔軟性、発想力を重視しています。
問題作成の工夫と想い
石坂:適性検査の問題はどのように作られているのでしょうか。
雨宮校長:日々の社会の動きや報道などをもとに、「このテーマなら、受検生はどう考えるだろう」と想像しながら問題を作ります。作問は決して簡単ではありませんが、受検生の答えを想像することはとても楽しく、やりがいがあります。
教員の視点から見る教育の姿勢
石坂:貴校では日常的に“対話”を重視していると聞きました。実際の授業ではどのような工夫をされていますか?
手塚史子教諭(英語科):本校では授業内外で対話があふれています。たとえば中学2年生の授業では「良いクラスとは?」「死後の世界はあるのか?」など生徒から生み出されたテーマで“哲学対話”を行っています。自分の考えを深めるだけでなく、他者と考えを交差させる中で新しい気づきが生まれる瞬間があります。また、IBのTOK(知の理論)の授業では「知るとは何か」という本質的な問いに2年間かけて向き合います。EE(課題論文)では各自がテーマを決めて探究を深め、論文を完成させます。さらに、CAS(創造性・活動・奉仕)と合わせて国際バカロレア(IB)資格の取得を目指します。
A方式の評価について
石坂:A方式では外国語(英語・中国語・韓国語など)作文、または基礎日 本語作文が課されると聞いていますが、どのように採点されているのでしょ うか。
雨宮校長:本校独自のルーブリックを用いて評価しています。評価の観点は 大きく分けて3つあります。
1. 理解の的確さ
2. 内容の具体性
3. 読みやすさと論理性
多言語作文の過去5年分の出題と評価観点は公開していますので、実際に 取り組んでみることで対策になると思います。
生徒の声から見える学びの価値
石坂:実際に学んでいる生徒の皆さんにも、学校での学びや入試についてうかがいたいと思います。
▼武井知瑛さん(高校2年・5年生)
石坂:入学のきっかけや入試について、どのような印象を持ちましたか?
武井さん:文化祭で感じた雰囲気や、生徒の姿勢に惹かれて入学を決めました。私はB方式で受験しましたが、適性検査では“考えながら理解が深まっていく”ような感覚があって、単なる知識の問題とは違って面白かったです。
石坂:入学後、印象に残っている学びはありますか?
武井さん:人間関係に悩むこともありましたが、どう関わるかを考えること自体が学びになっています。困難も成長のチャンスだと思えるようになりました。
▼渡辺森伽さん(中学2年)
石坂:受検のときにA方式とB方式で迷われたそうですね。
渡辺さん:はい。母が帰国子女で私も英語には慣れていたのでA方式も考えましたが、柔軟な思考力を問うB方式に魅力を感じて受検しました。適性検査はSDGsや地域課題などについて、自分の考えを論理的に書く問題で、柔らかい頭で取り組む感じがしました。
石坂:学校生活の中で特に印象に残っている活動はありますか?
渡辺さん:レポート作成で「自己肯定感が上がる」と感じたことがありましたし、ボランティア部の活動で練馬区産の野菜を使った商品開発(サトイモのパイやカブチーズ餅パンなど)もすごく楽しかったです。難しいことにも挑戦したくなる学校だと思います。
教育の本質を体現する学校
石坂:本日は、貴重なお話をありがとうございました。
所感(石坂):校長の明快な教育哲学、教員の熱意、生徒たちの真摯な姿勢。そのすべてが、この学校の“生きた教育”を物語っていました。表面的な派手さではなく、本質を見据えた静かな情熱がここにはあります。未来を見据え、思考し、行動する力を育む場として、東京学芸大学附属国際中等教育学校は、間違いなく唯一無二の存在です。また、A方式(作文)もB方式(適性検査)も最も好ましい対策は過去5年分の問題をすべて解答することだと強く感じ取りました。過去問を解答することで問題傾向が徐々に分かってきて、どう解答するのが適切なのかが見えてきます。これがこの学校の一番の入試対策であると強く思いました。
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