ミライ教育Watching座談会【探究学習・グローバル教育編】(25年10月実施)Vol.2
my TYPE第15号(2025年11月24日発行)掲載
主催・ファシリテーター:ミライクリエ
ミライ教育Watching座談会とは!?
私学の教育者・先生方をお招きし、「ミライ教育Watching座談会未来の教育を語る(探究学習/グローバル教育編)」を開催しました。
近年、教育のあり方は変化し、知識の暗記に加え、思考力・創造力・問題解決能力が求められる時代となっています。座談会には各私学の教育者・先生方が集まり、未来の学びについて活発な議論が交わされました。受験を控える受験生や保護者の皆様にとって、進路選択の参考となる貴重な機会となるでしょう。
(主催・ファシリテーター:ミライクリエ)
今回の記事は、Webにて2部構成でご紹介しています。
3)各学校で実施されている探究学習 /グローバル教育の 代表...
【城西大学附属城西中学・高等学校】 探究型「修学旅行」
城西大学附属城西中学・高等学校の探究活動は、①異なる価値観を受け入れ他者に自分の意見を伝える力、②世界の成り立ちを知り自分の生き方を考える視点、③世界の中での自分の立ち位置を見定め専門性を高める姿勢の三つの観点から構成され、生徒が多様な価値観と向き合いながら未来を切り拓く力を育むことを目指しています。中高 6 年間を通じて「学ぶマインド」の醸成を重視し、その集大成として高 2 の修学旅行を位置づけています。 この修学旅行は、探究活動と体験型学習を融合させた「JFGLP(Josai Future Global Leaders Program)」の最終段階であり、生徒が主体的に課題を発見し解決する力を育むことを目的としています。プログラムは毎年固定せず、教員がカスタマイズしながら実社会との接点を重視しています。 修学旅行は「台湾」「ハワイ」「国内」の三つのコースに分かれ、いずれも持続可能な社会のあり方を探究の中心に据えています。台湾コースでは姉妹校との交流を通じて国際理解を深め、ハワイコースでは現地大学生とセッションを行い異文化を学びます。国内コースでは地域の人々と関わり、フィールドワークを通して持続可能な暮らしを体感します。いずれの体験も次の学びへの「気づき」となり、生徒の創造性と主体性を育んでいます。
【文京学院大学女子中学校高等学校】 タイ科学交流プログラム
文京学院大学女子高等学校のタイ科学交流プログラムは、2012 年に始まった「サイエンスフェア」を中心に、タイのプリンセス・チュラポーン科学高校(PCSHS-P 校)との教育提携に基づいて展開されています。目的は、国際的な視野を持つ人材の育成と異文化理解の深化です。生徒たちは、タイの高校生と共同で授業や研究を行い、成果を英語で発表することで、科学的探究心とコミュニケーション能力を磨いています。理数キャリアコースでは、高 1 の終わりに研究テーマを定め、高 2 で本格的な実験・分析に取り組みます。週 1 回の「探究英語」授業やネイティブ教員による指導を通じて、英語での発信力と専門的な知識を身につけています。この経験は大学進学や将来のキャリア形成にもつながっており、農業分野でイチゴの品種改良に携わる卒業生や、南極観測船の業務に関わる卒業生もいます。サイエンスフェアでの学びが、生徒たちの自信と可能性を広げています。
【工学院大学附属中学校・高等学校】 バングラデシュでの野球交流を通じた 国際理解教育
工学院大学附属高等学校の野球部は、バングラデシュで現地チームとの野球交流を行うという、非常にユニークな国際活動に挑戦しました。きっかけは、2023 年 12 月にインターナショナルクラスの生徒が行った「Mission on the Ground(MoG)」です。現地で野球チームの存在を知った生徒の一言から、「それなら、うちの野球部が行こう」という発想が生まれ、高校 2 年生の部員が現地を訪問することになりました。1 週間の滞在では、試合だけでなく学校訪問や運動会、文化交流など多彩な活動を実施。生徒たちはバングラデシュの子どもたちに野球を教える一方で、現地で人気のスポーツ、クリケットを教わり、スポーツを通じて相互理解を深めました。さらに、現地の警察官によるナショナルチームとの試合も行い、国境を越えた真の交流が実現しました。このプロジェクトは生徒たち自身が主体的に企画したもので、厳しい環境の中でも明るく礼儀正しい姿勢で交流に臨んだ姿勢が高く評価されました。お互いの文化や価値観を尊重し合う経験は、まさに工学院が掲げる国際教育の理念を体現するものであり、今後の新たな展開にも期待が寄せられています。
4)未来の教育のあるべき姿
未来の教育のあるべき姿に関する考えを教えてください。
【中野先生】多くの先生方は、ご自身が生徒だった頃に学校で良い経験をされたからこそ、教育の道を志されたのだと思います。素敵な先生との出会いや、心に残る学校生活が原点となり、「自分もあんな先生になりたい」「子どもたちに何かを伝えたい」と感じたことでしょう。ただし、私たちが心に留めておきたいのは、過去の教育をそのまま再現しないということです。時代は変わり、今は多様なツールを活用しながら、より分かりやすく、興味を引く授業が求められています。教員自身が学びを楽しみ、教えることを楽しむ姿勢こそが、生徒の学ぶ意欲を引き出します。教育は派手な改革ではなく、地道な改善の積み重ねが本質です。「昨年と同じ」で終わらせず、日々の小さな工夫を積み上げていくことが大切です。 そして、どれほどテクノロジーが進化しても、教育の中心にあるのは「人」です。生徒と教員、仲間同士が関わり合い、互いに学び合う中で成長していく――。これからの学校は、これまで以上に“人と人とのかかわり”を大切にしていかねばならないと考えています。
【佐藤先生】これからの教育は、従来の「教室」や「学校」といった閉じられた空間を超え、社会や他校、さらにはグローバルな視点とつながる学びが求められています。通信制高校の充実や DX ハイスクールの導入により、学びの場は多様化し、最新の機材や環境整備を通じて、外部との連携がますます進んでいます。例えば、文京学院大学女子では、女子校という枠にとらわれずに、男子校とのコラボレーションを行っています。協働新聞の定期発行、相手校で育てた野菜を用いて本校の調理部が主体となった料理作り、両校の写真部が撮影した画像を用いた新聞記事作成など、多くの生徒、教員がさまざまな側面から交流を深め、学びを広げています。今年の学園祭では昨年度に引き続き、両校美術部による共同企画を展示予定です。今年は互いの学校長を題材に、絵を完成させました。先に開催された男子校学園祭を訪問した本校生徒は、男子の大胆な発想に驚かされました。この時の「驚き」が、本校の学園祭を実施する上で活かされることでしょう。このように多彩な実践的な交流が進められています。また、文系・理系の枠を超えた学びも進んでおり、文系の生徒が情報科目を学ぶなど、DX 時代に対応した教育環境が整えられています。夏には、大学や企業(例:ソフトバンク)との連携により、データサイエンスを活用した社会課題解決型のアイデアソンも開催されました。教育の本質は、生徒の安全を確保しながら外の世界へ飛び出す「機会」を創出することにあります。各校の特色を最大限に生かし、枠を超えた学びを実現することこそ、これからの教育の鍵であり、生徒一人ひとりの未来を切り拓く力となるでしょう
【神杉先生】AI や ICTの急速な進化により、教育は大きく変わろうとしています。時間や場所、さらには教員までも自ら選べる時代が目前に迫り、生徒は他校の授業や体験も自由に選択できるようになるでしょう。そんな中、学校は「こういう教育をします」と明確な方向性を示し、生徒が自ら選び学ぶ場であるべきです。これまでの教育は、横並びの比較による「こうでなければならない」に支配されてきました。しかしこれからは、個々の価値が尊重される時代です。学校は知識を教える場であると同時に、困難な時に心の支えとなり、記憶に残る人間的なつながりを築く場でなければなりません。子どもは単に大人になるための存在ではなく、その時々に意味があります。成長を一律に整備するのではなく、自然な体験を通じて学ぶことが大切です。DX などのツールを活用しつつも、人間としての温かさを忘れず、生徒の記憶に残る教育を目指していきます。私立学校の価値は、卒業後も帰れる場所であることです。城西大学附属城西で行われる同窓会には、戦争を経験した90代の卒業生から19歳の若者までが集まり、学校の歴史と人のつながりが未来へと続くことを改めて感じることでしょう。
受験生と保護者様へメッセージ
【中野先生】「学校選びでは、ICTやグローバル教育などのカタログ上の特徴だけで判断せず、実 際に訪れて感じる『肌で感じる空気感 』を大切にしてください。生徒や先生の表情や 目の輝きから、学校の本質が見えてくることもあります。また、ご家庭はお子さまが 安心して帰れる心の安全地帯であってほしいです。成績や試験結果で責めるのでは なく、努力を認め、優しく包み込む場をつくることが大切です。言葉かけやスキンシッ プも、年齢に関わらず安心感を与えます。保護者が普段以上に優しく接することで、 子どもにとって揺るぎない心の拠り所となります。受験期も、どうかお子さまの頑張 りを信じて見守ってください。」
【神杉先生】「受験期は、保護者の皆様もお子さまのために心を尽くされる時期です。しかし、肩 に力を入れすぎず、自然体で接することが大切です。年明けには、親御さんの素の 姿を見ることで、子どもも平常心で受験に臨めます。学校選びでは偏差値や名前だ けでなく、「肌に合うかどうか」といった感覚的な要素に注目してください。在校生 の様子や学校の空気感など、目に見えない日常の雰囲気が、お子さまに合う環境か を知る大きな手がかりになります。どうか肩の力を抜き、お子さまと一緒に安心し て歩んでください。」
【佐藤先生】「受験や進学で大切なのは、学力だけでなく『感性』や『雰囲気』を感じ取る力です。 学校にはそれぞれ特色があり、規律を重んじる学校もあれば、自由な雰囲気を大切に する学校もあります。どちらが合うかは受験生自身の感性次第です。また、家庭では 外では全力で活動し、家では心を休めるオン・オフの切り替えが大切で、その役割を 保護者の皆さまが担ってくださいます。学校生活で得られる最大の宝物のひとつが 『友達』です。長く続く人間関係を育むためにも、自分の感性に合った学校を選び、 充実した日々を送ってほしいと願っています。皆さんの未来が輝くことを心より応援 しています。
中学入試情報誌『MyTYPE』とは
『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年11月24日発行のmy TYPE第15号に掲載しました記事をご紹介します。
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