順天堂大学系属理数インターの新タイプ型入試レポート
多彩な新タイプ型入試を実施している、学校法人宝仙学園 順天堂大学系属理数インター中学校(東京都中野区)。2月1日(日)午後に行われた、同校の特色ある入試についてお知らせします。〈取材・撮影・文/市村幸妙〉
各受験生がもつ、多様なバックグラウンドを尊重
「日本一入試方法が多い中学校」を称する順天堂大学系属理数インター。例年2月1日午後には、さまざまな新タイプ型入試を実施しています。
2026年入試での出願者数は以下の通りです。 「理数インター」33名、「リベラルアーツ」11名、「読書プレゼン」7名、「AAA(世界標準)」4名、「オピニオン」2名に加え、英語型×新タイプ型入試の「グローバル」7名。
同校がこうした多彩な入試を行っているのは、それぞれの受験生が自分の好きや得意を活かして受験してほしいという思いから。そしてそこからどんな学びを得てそれをどう表現するのかという“学習歴”を見たいためです。
自身の経験からどんな問いや気づきがあり、それを学びとして、どのような成長につながったのかを振り返ることは、改めて自分の“伸びしろ”を実感する機会にもなっているのではないでしょうか。
それぞれの「学習歴」を重視する、新タイプ型入試
同校の新タイプ型入試について、入試広報部長で教科「理数インター」・探究科主任の米澤貴史先生はこう話します。
「これらの新タイプ型入試は、すべてプレゼン型で実施しています。中でも『リベラルアーツ』と『AAA(世界標準)』は学習歴を自己PRするという点で似通っていますが、勉強だけではなく、運動や音楽など、なんでも大丈夫です。『リベラルアーツ』を標準とした場合、『AAA(世界標準)』は規模感は問いませんが、全国レベルでの大会出場を条件としています。
いずれもそれらの経験を通じて、どんな学びを得たのかをアピールいただきたいということです」
同校HPに記された「各入試について」という項目を見ると、例えば「読書プレゼン」のところには「本当の本好きのための入試」とありますが、どんなことを求められるのでしょうか。
「説明会などでお伝えしているのは、好きな本の感想やビブリオバトル的に本の魅力を伝える場ではなく、本を通してどんな学びがあったのかということをやはり問います。ただ、この入試は本好きの教員が試験監督を担当するので、『それを読んだなら、この本は?』などと、本好き同士の会話が繰り広げられることもあるようです」と米澤先生は笑います。
入試の最中であっても、このように新たな知識が増えたり、成長を実感できたりするのが、この入試の特徴ともいえるでしょう。
深い思考と広い視野が求められる「オピニオン」入試
ユニークだと感じたのは「オピニオン」入試です。2020年から始まったこの入試では、「事前に調べて、意欲をもって自分の言葉でプレゼンしようとする生徒のスカウト」を狙いとしています。前年10月頃に翌年入試のテーマが発表されますが、2026年のテーマは新一万円札の肖像となっている渋沢栄一。渋沢による数々の功績を読んだ上で、「2030年に渋沢栄一が生きていたらどんな事業を起こすと思うか」という設問です。筆者の好奇心がそそられたのは「あなたが渋沢栄一になったつもりで考えてください」とされた出題形式です。
受験生は、その回答と理由を考えて臨みますが、入試当日には新たな条件が与えられます。受験生はその条件に沿うようにテーマに対する回答を15分間で考えて、5分のプレゼンに取り組みます。
「その新たな条件をどの程度付け加えるのかなどは受験生にお任せしていますが、例えば過去には、AI(人工知能)の便利さやメリットについて考えさせた上で、その反面のデメリットについても目を向けさせるような出題をしました」と米澤先生。
受験生たちは与えられた条件のどんな部分に着目し、自分なりに答えをどうまとめるのか。一歩進んだ深い思考と広い視野、そして自分の考えてきたことにも一度疑問を持ってみるというような柔軟性も求められます。
こうした自ら考える力やプレゼン力は、同校での6年間でさらに磨きがかかるのでしょう。
多くの有志の在校生たちが活躍中
2月1日の午前中は多くの受験生が入試に臨んでいることもあり、開門は13時50分、14時30分が集合時間となっています。もちろん、午前に順天堂大学系属理数インターの「2科入試・4科入試」や2025年から始まった「医学進学入試」を受けたという受験生も多くいました。
ホール門では、校長の富士晴英先生が笑顔で受験生一人ひとりを出迎え、声をかけながら握手を交わしていきます。何度も学校を訪れ、すっかり顔見知りといった受験生親子の姿も見られました。
集合場所のホール(体育館)は、入試区分別にエリア分けされており、受験生がスムーズに各試験会場へ進めるような工夫がなされています。その案内役として有志の生徒たちが活躍していました。
すべての受験生共通の時間割として、試験会場移動後の14時30分から45分までは諸注意が行われます。14時45分からの45分間は「医学進学入試」以外の入試区分で、45分間の「日本語リスニング」のテストが実施されました。
これは2分程度の音声問題を聴き、出題に答えていきます。メモは取ってもOKですが、注意深く耳を傾け、問題の意図を汲み取れるかが求められるものです。
入試終了後にどんな声かけをされたかったか、在校生の答えは?
ホールでは15時から学校説明会が開催されました。
まずは富士先生から「2月1日ですから、午前入試を受けていらしたことでしょう。受験生も保護者の皆様もお疲れだと思います。しかし何よりも、今日無事に入試を受けられていることが、本当に良かったと思います」といったお話がありました。
その後登壇したのは3人の在校生。毎年恒例になっている、富士先生からの「受験終了時、保護者からどう声をかけられたかったか」という質問に応えます。
中2男子は「僕は『頑張ったね』とか『お疲れ様』、『よくやったね』と言われてうれしかったんです。『試験はどうだった?』と聞きたくなると思いますが、試験が終わって疲れているので、まずは頑張りを讃えてあげてほしい」と話します。
一方で、中2女子は「私は『今日のテストはどうだった?』と聞かれるのが、心配してくれているようでうれしかったです。その辺りはお子さんの性格によって、慎重にお声かけください」と言い、笑いを誘います。
ちなみにこの生徒、2月1日が誕生日であることを発表。保護者たちから大きな拍手が贈られます。
「第1志望としてここを受けましたが、誕生日と受験という、喜びと緊張のふたつの気持ちをうまく両立できませんでした」と苦笑いし、聴衆の心を掴んでいました。
なお、中1女子への質問は「この学校とご縁があった際のアドバイスは?」
入学当初、学校が広いために特別教室などの場所を覚えるのが大変だったそう。
「でも、周りにいた先輩たちが優しく教えてくれたので、心配不要でした。この学校はすごく楽しくて、いい人ばかりだし、先生も面白いし授業もわかりやすいです」と語っていました。
受験生の個性あふれるプレゼン入試
各入試のプレゼンの様子をほんの少し、教室の外から覗かせていただきました。
「グローバル」は声こそ聞こえませんが、緊張しつつもネイティブの先生方と楽しそうに、かつ流暢に話している様子が窺えます。
また「リベラルアーツ」や「AAA」では、空手やホッケー、ヨットや体操など、中には新宿区の伝統野菜である内藤とうがらしの研究を頑張ってきたという受験生たちが集まっており、さまざまな個性が炸裂していました。
プロジェクターを使用したり、競技用のユニフォームに着替えたり、それぞれが趣向を凝らします。バイオリンを披露した受験生には、音響面に配慮した別室が用意されていました。
受験生から「楽しかった!」と声が上がる「理数インター」入試
年々出願者数を増やしているのが「理数インター」入試です。
2026年入試のテーマは「利用者がワクワクする、山手線の新駅を作ろう」
受験生たちはその場で7つのチームに分かれ、自己紹介などのアイスブレイクを経て、話し合いを重ねながら打ち解けていく様子が印象的でした。
同校の授業を再現したようなこの入試、進行役を務めた青木優樹先生に伺いました。
「2025年、山手線が環状運転になり100周年を迎えたこともあり、この出題にしました。山手線の駅を5つのエリアに分け、そこに住む方々や駅職員などさまざまな視点から、みんながワクワクする駅を考え、いくつかのステップに分けブレインストーミングしてもらいました。
今回はJRの願い、住民の願い、場所の選定という流れで考え、具体化し発表するという流れを作りました」
エリアの選定を最初と最後のどちらで行うかで迷ったのだとか。
それでも、まずは人々の願いに焦点を当てたことに、同校が大切にする人間教育の一端を見た気がしました。
「まずワクワクすることを考えると、なんでもアリの大喜利のようになってしまうことを懸念しました。最終成果物として、その駅に関わる方たちの希望に寄り添いつつ、現実味を保ちながらも理想的な駅を考えていく過程を重視しました」
こうした受験生や生徒だけでなく、先生方による試行錯誤が常態的に行われているのが同校の魅力の一つです。
「まず自分の意見が言えること、そして他人の意見を受け入れる力も必要です。難しい課題だったと思いますが、諦めずに取り組んでもらえました」
あえて個性を混在させて学ぶ理由とは
さまざまな入試を経た生徒たちは入学後、同じクラスで学びます。ただし「グローバル」で入学した生徒は英語で、「医学進学」の入学者は数学と理科で取り出し授業を受け、先取り学習を行います。その他の教科は多彩な個性を持つ生徒たちと同じクラスで学びますが、混在させる理由について、米澤先生が教えてくれました。
「独立したクラスにするメリットもあるのかもしれませんが、そこだけのコミュニティーが形成されてしまったり、場合によっては生徒間でのヒエラルキーのようなものが生じてしまったりという可能性もありえます。それよりも本校には本当にいろいろな子がいるので、独立するよりも交流を図ってほしいのです」
「医学進学」コースでは、中2では「医師志望論」という学びが開始されます。現在、高校生ではすでに実施されており、現中1生たちはその様子を見学しました。
「医師になるためには、学力だけでなく多様な視点を持っていることが重要です。病気の方と接する医師こそ、人の痛みがわかる、想像力豊かな人間性が必要です。この『医師志望論』では、実際の医療現場のことを知ること、医師の偏在などを考えることも大切にしています。そのため、新潟大学の医学部を出て、現在は佐渡島で研修医を務める卒業生に話を聞いたり、新潟大学の基幹病院を訪ねたりということも行っています」(米澤先生)
それぞれの学習歴は、生徒たちにとって多くの学びや刺激を生み出すものであり、ここで出会ったさまざまな個性は、一人ひとりの人生にとって豊かな彩りを与えてくれる存在となるのです。
なお、順天堂大学系属理数インターは2028年に学園創立100周年を迎えます。現在、2028年3月竣工予定で新校舎の建設が進められており、ソフト面はもちろん、ハード面もより充実していきます。
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