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受験情報ブログ

2月1日午後。宝仙学園理数インターでは8通りの入試が同時進行

12 歳の学習歴を「まっすぐ評価したい」宝仙学園理数インター。2月1日午後の入試を取材しました。

宝仙学園理数インターは「オピニオン入試」を導入。11通り(帰国生入試2通りを加えると13通り)の入試で、多彩な12歳の学習歴にさらに門戸を広げました。2月1日午後には8通りの入試が行われました。<撮影/北一成、取材・文/市川理香>

12歳の「学習歴」にフォーカス

体育館で受付を済ませると、受験生は在校生に案内されて試験会場へ移動します。東京入試の初日、2月1日とはいえ、少し表情に余裕が見られるのは、多くの受験生が午前中に何らかの形で入試本番を終えてきたためだけではないでしょう。これから始まるのが、自分が頑張ってきたこと、好きなこと、得意な点を活かせるタイプの入試であることも大きいのでは。

宝仙学園共学部理数インターの2021年入試を、大きく分けると、2科4科入試、公立一貫(適性検査)型入試、プレゼン型入試、入試『理数インター』、英語AL入試。労力をかけて多彩な入試を続けていることに、12 歳の「学習歴」を「まっすぐ評価したい」との信念がうかがえます。

取材に伺った1日午後には、2タイプ(新4科特別総合入試、プレゼン型入試)8通りの入試が、校内いたるところを会場として実施されました。

「学校に来たかったので入試をお手伝い」

さて、受付を済ませ最後のエールを送った保護者は、そのまま控え室となる体育館で試験終了を待つことができました。生徒集合時刻になると、控え室では校長の富士晴英先生と在校生からのお話がありました。
富士先生は、受験生を穏やかに送り出す保護者の雰囲気の良さや、この日に行われている入試に込めた思いを伝え、生徒在校生(中1)4名は、校長先生の質問に答える形で入試や学校生活を自分の体験から話してくれました。

「新4科特別総合入試」は2月1日午後にしか行われない入試。その狙いについて校長先生は、特定の科目の枠にとらわれないリード文に科目をまたぐ設問が埋め込まれており総合力を問うもの、そしてそれをおもしろいと思う受験生に入ってほしいと説明。「入試『理数インター』」や「リベラルアーツ入試」は、入学後の教科活動と一致した入試であり、プレゼン型は通塾経験の有無ではなく自分の見識を語れるかどうか。こうした言葉の端々に、“only one”、“uniqueness”を評価する入試を行っているという自負がうかがえます。

入試の手伝いをしてくれる生徒は公募で自主的な参加。今年は、例年以上に立候補が多かったそうです。
「どうして、今日の入試を手伝うことにしたのか」という校長先生からの問いかけに「オンライン授業で学校に来られず友達とも会えていなかったので、学校に来たかった」と答えてくれたのは、昨年グローバル入試で入学した生徒でした。
壇上の4人は、他にも昨年、入試「理数インター」、リベラルアーツ入試、AAA入試から入学した中学1年生。2021年入試の受験生は、コロナ禍が小学校生活のみならず受験勉強に大きな影響を及ぼし、学校説明会や相談会などの機会を奪われ制限された学年です。受験を諦めず迎えた今日までには、一人ひとりに迷いや苦労もあったことでしょう。無事に本番を迎えたこの日に、今まさに我が子が受けている入試タイプで入学した生徒の姿と、校長先生からの「入試は、成長、自立のプロセス」という言葉に触れて、中学受験をした意味を再確認した保護者は少なくないと思います。

14:45、試験開始。「一人ひとりにカスタマイズ」

新4科特別総合入試以外は、まず14:45から45分間の「日本語リスニング」に臨みます。プレゼン型の試験で、「日本語リスニング」の感想を聞かれたある受験生は「練習したよりも情報量が多く、整理が難しく大変だった」と話していました。

リベラルアーツ入試、AAA(世界標準)入試、グローバル入試、読書プレゼン入試、オピニオン入試(プレゼン型新入試)、英語AL入試は、一人ずつ入試を手伝う受験生に案内されて、それぞれの入試タイプの試験会場へ移動してきます。

白衣を着て理科研究の発表をする受験生がいるかと思えば、自分の読書歴からオススメしたい本を紹介する受験生あり。はたまたミュージカルさながらに情感たっぷりの歌唱が聞こえてくる会場あり。どのタイプの入試も、2人の試験官を前に堂々とした態度が印象的でした。一人の受験生の発表をじっくり見ていたくなりますが、多彩な入試の全体像も見届けねばと思い直しては次の入試タイプの会場へ、その先を聞きたいと思ってはまた別のタイプの会場へ移動の繰り返し。

いずれの入試タイプの受験生も自宅で練習した上で試験本番に臨んでいるのだと思いますが、大人を前にも動じないのは、自分の好きなこと、頑張って来たことを披露できる喜びがあるからかもしれません。

2021年入試で新設された「オピニオン入試」。事前に提示された「20年後、どのような未来が待っているかを創造しなさい」という壮大なテーマに1名が挑みました。事前に用意したものに、当日、試験会場で新たに与えられた資料を見て要素を追加した上でプレゼンするというもの。残念ながらグループワークは行われませんでしたが、「そのキーワードを選んだのは、なぜですか」、「身近に体験した例を教えてください」、「あなたの言葉で考えを説明してください」、「今日見た新しい資料を、どのように加えましたか」など、試験官の先生との質疑応答を楽しんでさえいるように見えたのは気のせいでしょうか。最後に、試験官だった校長先生から「この問題意識の先に、どんな仕事があるか調べてごらん」という“宿題”が出た時には、一瞬、入試であることを忘れそうでした。

熱気いっぱいの試験会場

そもそも机に座り黙々と問題を解くばかりではない入試があちこちで行われている1日午後の中でも、「入試『理数インター』」会場には、とりわけ熱気が満ちていました。「パプリカ」など親しみのある音楽が流れ、机上のグループ名(アルファベット)も、ただの活字ではない(生徒の作品だそうです)、それだけでも、今日が入試だと知らなければこれが試験中だとは思わないでしょう。

この日は3〜4人のグループに分かれ、「大分県佐伯市をどのように活性化するか」というテーマに取り組んでいました。タブレットで佐伯市のHPから地理や産業など現状を調べた上で、チームとして地域活性化策を考え付箋に書き出します。ヒントになるような動画を全員で見る時間も挟み、さらにグループでそれまでの考えを整備して地図に落とし込み発表というプロセスは、「教科『理数インター』」の授業そのものです。お互いの考えに賛成も反対もあり、またそこから思いもかけないようなアイデアに出会ったり触発されたり、話し合いの結果を他のグループの人たちに伝えようと言葉をひねり出したりする会場が熱気にあふれるもの納得です。
そして試験会場にいるファシリテーターの先生方の意見を促す声掛けも絶妙。

あまりにも意見が自由に活発に行き交っていたので、教科リーダーの米澤 貴史先生に聞いてしまいました。
「この受験生たち、本当に初対面なのですか」

入試のお手伝いをしていた中1生が、「教科『理数インター』」の授業について教えてくれました。
「意見を出したり、グループで話し合ったりするのは、想像通りだし、とても楽しいです。でも入学前に思っていたのとは違いました。想像以上に、準備を含めた発表が大変です。あ、でも本当に楽しいんですよ」
「入試『理数インター』」の判定が、コラボレーション、プレゼンテーション、ラーニングの観点であること、改めて思い出しました。

「全ての学習歴」を評価したいという理念をあらゆるタイプの入試で実践している空間に身を置いて、今更ながら、成長のプロセスは一人ひとりのものだということを、受験生に教えられたように思います。