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受験情報ブログ

最高の合格を勝ち取るための学校選びVol.2

学びと幸せの共生: 一歩先行く中学受験 

my TYPE第14号(2025年9月21日発行)掲載


文/中曽根陽子 教育ジャーナリスト/マザークエスト代表

軸が決まったら、学校を調べる必要があります。ここでは、私が学校取材で注目している視点を紹介しましょう。軸を考えるときに出てきた目的が叶う学校かどうかを確認しましょう。

1から3は、学校の傾向を知るためのチェックポイントです。皆さんは、傾向を把握した上で、学校とお子さんの相性を見るための指標として使うといいでしょう。

4から6は、激動する未来を見据えて、学校が具体的にどんなことをしようとしているのか、7から10は、子どもから大人に成長する時期の子ども達を預けたい学校がどこかを見極めるためのポイントです。

1 理念と教育内容が合っているか

その学校の教育理念に賛同できるかどうか。そして、教育方針・校風・学校文化との相性は大切です。

特に理念で掲げていることと、実際の教育がかけ離れていないかは気になります。先行きが不透明な時代だからこそ、私は、何のめに教育をするのかという理念に基づいた教育が大切だと思っています。

2 校風 自主性尊重か管理型か

次に、校風の見分け方ですが、まず大きくは、自主性を尊重している学校か、管理型の学校かという違いで比較してみるとわかりやすいでしょう。

自主性尊重の学校は、細かい校則は設けず自律を促す自由な校風の学校が多いです。行事や生徒会の運営なども生徒主体で行なわれ、細かい学習指導より、主体的に学ぶことを重視。自分で考え行動することが求められるので、自律心が育ちます。反対に楽な方に流れると、勉強をしなくなり、落ちこぼれる可能性もあります。

管理型の学校は、服装規定や携帯電話の所持など、校則も細く規定され、生活指導も厳しい傾向があります。入学すればそうした規則には従わなくてはならないので、学校の考え方に同意できるかは大きなポイントです。学習に関しては、小テストや朝学習、宿題で学習の定着を図る取り組みや、補習や補講など、きめ細やかなサポート体制があります。システムに乗っかれば、学習習慣が身に付くといった利点もあります。落ちこぼれを作らないようにこまめな対応をしてくれる一方で、受け身になりがち。行き過ぎると勉強に追われて余裕がない学校生活になりかねません。

3 教育方針 プログレッシブ教育か受験科目重視か

ここで主に見るのは、カリキュラムの組み方や大学進学指導に関する考え方です。

受験科目重視の学校は、従来型の一般入試突破のための学習指導を重視しています。典型的なのは、難関国公立コースなど、レベル別のコースを作って、高2で文系理系に分けて大学進学に合わせた履修をさせる学校です。最近は、サイエンスコ―スとかグローバルコースなどを設け、入学時から振り分けるところも増えてきました。この場合、途中でコース変更ができるのかは確認した方がいいでしょう。

プログレッシブ教育というのは、学習者の主体性や創造性を重視し、従来の教育方法に比べてより個別化されたアプローチを採用する教育スタイルのこと。早くから文理選択をせず、選択制で幅広く学べるカリキュラムを採用していると考えてください。

4 探究教育への取り組み

探究学習のキーワードは、主体性と答えのない問いです。探究学習は、これまでの暗記を主体とした勉強ではできなかった、生徒自身による主体的な学びであり、教科の枠組みを超えて、自ら興味や関心のある社会問題や課題について時間をかけて深く考え、課題を解決するための解を導き出す発展的な学習だと捉えられます。先行き不透明な時代を生きていく上には必要な学びです。

探究教育に力を入れている学校は増えていますが、調べ学習で終わっているケースも見受けられます。それぞれの取り組みが、何をゴールに設定して、どんなことをしているのかを、聞いてみるといいでしょう。

5 グローバル教育への取り組み

グローバル教育は、英語教育だけを指すものではありません。ただ、英語教育もここにきて変わってきています。私学では、多くの学校で英語の授業数は公立より多く、ネイティブ教員による授業も一般的になっていますし、海外研修やターム留学、長期留学の機会を設ける学校も増えています。日本と海外両方の高校卒業資格が取れるダブルディグリー制度を設けている学校もあります。海外大学進学や留学に関心があるなら、そういうルートを持つ学校を選んではどうでしょうか?

6 STEAM教育への取り組み

日本では理系人材が圧倒的に不足していて、特にデジタル系の人材を増やすことが国の施策にもなっています。そこで注目されているのがSTEAM教育です。理系に進まなくても、デジタル社会を生きていく上で、必要な学びです。どんな取り組みをしているかは要チェックです。

2024年から文科省によるDX加速化推進事業が始まっていて、全国で計1,010校が採択されました。採択されたのは、情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活用した文理横断的・探究的な学びを強化し、何らかの特徴を打ち出している学校です。

7 体系的なキャリア教育

キャリア教育というと、職業調べや職場体験、社会人の話を聞くといったプログラムを思い浮かべるかもしれませんが、キャリア教育=職業教育ではなく、自分軸を作って進路選択に繋げていくための取り組みと捉えてください。そのような狙いを明確にしている学校では、体系的なキャリア教育を行なっています。これができるのは、中高一貫校ならでは。充実した計画に基づいてキャリア教育を行なっている学校ほど、生徒の学習に対する意欲が高まるそうです。キャリア教育のもたらす効果は、職業観の育成だけではないのです。

8 課外活動 行事やクラブ活動への考え方・内容

学校は勉強だけをしにいくところではありません。自分軸を作っていくためにも、中等教育では教室以外の場所での活動の場をたくさん用意することが、特に大事です。課外活動が、どんな位置付けで行われているのか、生徒の自治はあるのか、そんなところを見ていくと、学校の教育方針が分かります。行事や部活などの課外活動を、教育活動の中でどんなふうに位置付けているのか聞いてみましょう。

9 設備環境

私立中高には、公立と比べて施設が充実しているところが多く、それも私学を選ぶ理由の一つだったりしますね。校舎の作りにも学校文化が表れていますし、それぞれに特徴のある施設があったりします。それがその学校が力を入れている教育と連動していることが多いので、そういう目線で見学しましょう。一方施設は古くても手入れされ大切に使われている学校には、そこに集う人たちの学校への愛情が感じられ気持ちがいいものです。そんな空気も感じてください。

10 高大連携・進路 一般入試と総合型選抜どちらが多いか

高校と大学が連携して交流や教育を行う「高大連携」が盛んになっています。最近は、「合併」や「系属校化」といった、より進んだ連携を行う動きも盛んになっています。大学入試も総合型選抜が6割を超え、今後ますますこの動きが広がっていくと言われています。今後は、一般入試での進学が多いのか、総合型選抜の利用者が多いのかということも、学校選びのチェックポイントになっていくと思います。希望する学校がどんな大学と高大連携を結んで、どのような取り組みをしているかも見てみましょう。

子どもが本当に幸せになる「学校選び」~

最後に、最も大切なことは、受ける学校はどこも通うことを前提にするということです。そうすれば、どこに決まったとしても、その結果を喜んで受け入れることができます。反対に避けたいのは、不合格が続いて、それから慌てて出願し、行ったこともない学校を受験することです。受験軸に沿って見ていけば、だんだん我が家・我が子にあいそうな学校というのが見えてくるはずです。それが見えてきたら、実際のお子さんの合格可能性の数字と照らし合わせながら、意中の学校を4~5校に絞って、組み合わせていくのです。この時には偏差値も活用してください。

第一志望の学校に合格できることを祈っていますが、最終的にはご縁があった学校を自分にとってベストな学校にしていくことも大切です。頑張ってくださいね。

中学入試情報誌『MyTYPE』とは

『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年9月21日発行のmy TYPE第14号に掲載しました記事をご紹介します。

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