受験生マイページ ログイン
受験情報ブログ

ミライ教育Watching座談会【探究学習・グローバル教育編】(25年7月実施)Vol.1

未来の教育を語る!

my TYPE第14号(2025年9月21日発行)掲載


主催・ファシリテーター:ミライクリエ

ミライ教育Watching座談会とは!?

私学の教育者・先生方をお招きし、「ミライ教育Watching座談会未来の教育を語る(探究学習/グローバル教育編)」を開催しました。

近年、教育のあり方は変化し、知識の暗記に加え、思考力・創造力・問題解決能力が求められる時代となっています。座談会には各私学の教育者・先生方が集まり、未来の学びについて活発な議論が交わされました。受験を控える受験生や保護者の皆様にとって、進路選択の参考となる貴重な機会となるでしょう。

(主催・ファシリテーター:ミライクリエ)

今回の記事は、Webにて2部構成でご紹介しています。

ミライ教育Watching座談会【探究学習・グローバル教育編】(25年7月実施)Vol.1はコチラ

ミライ教育Watching座談会【探究学習・グローバル教育編】(25年7月実施)Vol.2はコチラ

1)従来の学習と探究学習の違い

従来の学習と探究学習の違いについて、教えてください。

【神杉先生】城西大学附属城西は1918年創立以来、天分の伸長・個性の尊重・自発活動の尊攘を重視する開発教育を実践してきました。本校は100年以上前から探究的な学びを取り入れており、現在の探究学習の先駆けとも言える歴史があります。従来の教員主導型の学習とは異なり、生徒主体で問いを立て、自発的に行動することが探究教育の核となっています。生徒たちはSDGsや原発問題など多様なテーマに挑戦しており、例えば高校3年生のグループは食品ロスの中でも「過剰除去」に着目し、廃棄野菜を使ったマフィンを学食で販売。さらに地域企業との連携による社会貢献活動へと発展しています。また、本校の学食を地域のコミュニティスペースとして活用する試みや、福島の土壌処理問題に関する研究など、ジャンルは多岐にわたります。重要なのは、これらの活動が「やらされる」ものではなく、生徒の自由な選択と主体的な探究によって成り立っている点です。加えて、若手教員を中心にファシリテーション力のある教員が増えており、探究教育を支える体制も着実に整いつつあります。

【マルケス先生】探究学習という言葉、今でもよく使われますが、実はもう20年前の考え方なんです。日本の学校では、探究という言葉が広く使われているものの、実際にはその定義が曖昧で、子どもたちの学びの質を本当に変えられているかというと、疑問が残ります。科学的なプロセスを重視する探究、自分の適性を探る探究、地域と連携した実践型の探究など、いろいろありますが、どれも「成功しなければならない」という枠に縛られているように感じます。失敗したらどうするのか、やりたくない子はどうするのか、そういった議論はまだ十分にされていないと思います。西武学園文理では、学校運営そのものを生徒のプロジェクトにしています。制服、ウェブサイト、学校説明会など、すべて生徒が主体となって動かしています。もちろん、専門家のサポートはあります。たとえばウェブサイトのプロジェクトでは、プロの開発者が週に一度学校に来て、情報の先生と一緒に生徒たちと取り組んでいます。これは「ガチ・プロジェクト」と呼んでいて、成功や失敗が目的ではなく、本物のチャレンジをすることが目標です。このプロジェクトは非常に柔軟で、毎回参加する生徒もいれば、月に一度だけ来る生徒もいます。途中で抜ける生徒もいれば、最後だけ関わる生徒もいる。自分で関わり方を選べるというのは、今の時代に合った学び方だと思います。そのために、土曜日の授業はすべて廃止しました。大きな決断でしたが、それだけの価値があると考えています。今の子どもたちはデジタルネイティブです。学校に来る意味を見失っている子もいます。だからこそ、学校はリアルな社会とつながる場所であるべきです。探究という言葉よりも、実際に挑戦できる場をどう作るか。それが、これからの教育に求められていることだと思っています。

【佐野先生】ただ「やらせる」だけの探究にはあまり意味がな いと思うんです。子どもたち自身が「やってみたい」と感じ ているかどうか、そしてその活動に責任を持って取り組んで いるかどうかが、何より大切です。通常の授業でも、先生が うまく関われば、子どもたちに「今、自分たちで授業をつくっ ている」という感覚が生まれます。そうなれば、形式にこだ わらなくても、十分に探究的な学びになると思います。 かえつ有明では、地域と連携したプロジェクトがいくつも 立ち上がっていて、子どもたちが自ら企画し、町会長さんに プレゼンして、50万円の支援を受けたこともあります。提 案内容は「地域が暗いからイルミネーションで街を華やかに したい」というものでした。子どもたちが自分たちで動き出 し、責任を持って地域のために何かをしようとしている姿を 見ると、本当に頼もしく感じます。 こうした文化が学校に根づいていくためには、まず先生自 身が内発的な動機を持って、「これ面白そう」「みんなのため になるかも」と能動的に日々動いていることが大切です。先 生が楽しそうに取り組んでいると、子どもたちも「自分もやっ てみたい」と感じるようになります。探究って、そういう空 気の中から自然に生まれてくるものだと思っています。

2)英語教育とグローバル教育の違い

英語教育とグローバル教育の違いについて、教えてください。

【佐野先生】子どもたちが「ストレッチゾーン(現状から少し背伸びをすれば達成できる水準の目標領域)」に踏み出す経験は、非常に意義深いものです。あるプログラムを通じて、自分たちの「当たり前」が通用しない世界に触れたことで、学びが大きく広がりました。授業でツバルの沈みゆく島の話題が出た際、生徒たちは強く関心を持ち、自ら図書室で資料を探し、日本人写真家の展示を訪れました。現地の環境問題を知ったことで、「自分たちにできることはないか」と考えるようになったのです。その後、英語を学びながら現地の小学校と連絡を取り、クラウドファンディングで渡航費を集め、生徒3名が1ヶ月間現地に滞在。小学校でワークショップを行い、現地の方々との交流を深め、首相との面会にもつながりました。帰国後はその経験を広く伝える活動へと発展し、全国各地で発信を重ねました。ここで改めて感じるのは、「英語教育」と「グローバル教育」の違いです。英語教育は言語スキルの習得が中心ですが、グローバル教育はその先にある価値観の違いや課題への共感、行動につながる力を育むものです。今回のように、子どもたちが自ら課題を見つけ、他者とつながり、社会に働きかける姿は、まさにグローバル教育の本質だと思います。

【マルケス先生】佐野先生がおっしゃったように、そこにいて何をするのか、誰と関わるのか、どんな問題に向き合うのかが大事だと思います。英語教育について言えば、日本は英語教育もグローバル教育もやれていない、偏差値教育をやってるだけと感じてしまいます。さらに、グローバル教育=英語教育になっているのも問題です。また、アジアとの連携が少なく、グローバル教育って言ったらすぐ英語圏ばかりが事実です。でも中国やアジアの教育現場の方...

【神杉先生】近年、グローバル教育の重要性が高まる中で、私が強く感じているのは「人との出会い」の力です。海外の社会問題や国際課題を学ぶ前に、まず現地の人々と時間を共有し、心が動くような体験をすることが、子どもたちの意識を変え、行動へとつながっていきます。城西大学附属城西でも韓国、中国、台湾などとの姉妹校交流を通じて、そうした機会を積極的に提供してまいりました。また、子どもたちが「海外に行きたくない」「アジアではなく欧米に興味がある」といった思いを持つことも、尊重されるべき一つの選択です。学校としては、そうした個々の感性を認め、多様な選択肢を用意することが求められます。グローバル教育とは、世界を知る前にまず人を知ること。その出会いを通じて、子どもたちが自ら考え、動き出す力を育てていくことが、私たち教育者の使命だと考えております。

帰国生や留学生の受入れについて、教えてください。

【佐野先生】かえつ有明には帰国生や外国籍の生徒も在籍しており、多様な言語や価値観が日常的に交差する環境が自然に形成されています。そうした前提の中で、子どもたちは互いの違いを尊重しながら、自発的にプロジェクトに取り組む姿勢を育んでいます。日本人同士だと「わかるはず」という前提に陥りがちですが、異なる文化背景を持つ仲間と接することで、個人として向き合う意識が高まります。教員もまた、国籍に関係なく一人ひとりの個性を尊重しながら関わることを大切にしています。こうした環境が、子どもたちの主体性や対話力を自然に育てていると感じています。

【マルケス先生】西武学園文理では、海外の中高生との交流を通じて、生徒たちが多様な文化や価値観に触れる機会を大切にしています。異なる国の学校から短期訪問を受け入れ、授業や地域活動、共同プロジェクトなどを通じて、心の通う交流が生まれています。外見や言語の違いを越えて、互いを尊重し、自分らしさに自信を持つ姿が育まれているのを感じます。制度上の制限もありますが、短期交流を重ねることで、生徒たちの視野が広がり、笑顔が増えていることを何より嬉しく思います。

【神杉先生】城西大学附属城西では1982年より国際交流を開始し、現在では平均して毎年数十名程度の長期・中期・短期の留学生を受け入れるまでに発展しております。こうした交流は、単なる語学習得に留まらず、異文化理解と自己のアイデンティティの確立を促す重要な機会です。日本人としての価値観を尊重しつつ、他国の文化や考え方に触れ、共通点を認め、相違点については対話を通じて理解を深める力が、これからの時代に求められます。教育の現場においても、教員同士の交流を含めた国際的な視野の拡充が不可欠であり、こうした取り組みが将来的には「グローバル」という言葉を意識せずとも自然に根付く社会の礎となると確信しております。

中学入試情報誌『MyTYPE』とは

『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年9月21日発行のmy TYPE第14号に掲載しました記事をご紹介します。

Vol.2につづく

この記事をシェアする
  • リンクをコピーしました