コラム

どうなる!?小学校英語教科化による今後の英語教育!(1/2)

上智大学言語教育研究センター特任教授
吉田研作先生へのインタビュー

2020年から小学5・6年生で英語(外国語)が正式な教科となり、それに伴って外国語活動が3・4年生に下りてくることが決まっています。中学受験の世界にも英語入試が広がりつつあり、小学生の保護者にとって英語教育がにわかに大きな関心となっています。首都圏模試センターでは、日本の英語教育の第一人者である上智大学の吉田研作先生に、4技能英語や今後の学習指導要領をめぐる動きについてお話を伺ってきました。...

続きを読む

(聞き手)
株式会社スタディエクステンション GLICC代表 鈴木裕之
首都圏模試センター取締役統括マネージャー 山下一








吉田研作先生プロフィール
1948年京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。同大学大学院言語学専攻修士課程修了。ミシガン大学大学院博士課程修了。専門は応用言語学。
現在、上智大学言語教育研究センター特任教授、同センター長。
英語教育の第一人者で、TEAPの開発などに従事する。文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」で座長も務める。

大学入試と4技能英語

先日、英検やTOFEL、TEAPなど、7種類(TEAPと TEAP CBTを分けて数えると8種類)の4技能英語民間試験が認定されました。大学入試共通テストと民間試験の関係がどうなるのか、また民間試験をどのように受けるようになるのかなど、報道だけではなかなか実態がつかめないところもあります。まずは文科省の会議にもご出席されている立場から、現状や方向性について正確なところをお聞かせいただけますでしょうか。

吉田先生:
基本的には、共通テストは無くしていき、4技能英語テストだけにしたいというのが文科省の考えです。センター試験ではどうしても2技能から抜け出せません、先日行われた共通テストの試行調査では、出題内容がこれまでよりコミュニカティブになり、かなり改善されたとは思いますが、そうかといって、ライティングやスピーキングを実施することは不可能です。なにせ英語は他教科と比べても一番多くの受験生がいるわけで、問題作成や面接、それに採点などに大変な労力がかかります。
さらに言えば、もともと複数回受けられる民間試験が、共通テストでは1回になってしまうことも問題です。高大接続の際に議論されていた、複数回受けられることで生徒の負担を減らすという理念からは全く離れてしまうわけです。そのような意味でも、共通テストのみで英語力を測るという方向は考えられません。

ただし、現実的なことを言えば、4技能テストに対して高校現場ですぐに対応するのは難しいでしょうから、2023年度までの4年間は移行措置として2技能型英語試験も受けられるようにしますよということです。先ほども触れましたが、共通テストは、今のセンター試験よりはコミュニカティブなものに変わっていきます。間接スピーキングのような発音問題やアクセント問題もないし、整序問題によってライティングの力を試すようなこともありません。そこは一定の評価はしているのですが、やはりライティングの力はライティングの問題を出題することによって試されるのが本来的なわけです。ですから最終的には民間の4技能テストによって測るしかないということです。

基本的な方向性は分かりましたが、現実には改革のための議論がなかなかストレートに進んでいないようにも感じられます。

吉田先生:
民間英語試験の導入について東大が色々言っていましたけれど、国立大学協会も、民間英語試験と共通テストの両方をきちんとやりましょうという方向で一致しています。点数の配分をどうするかとか、それぞれの点数をどのように扱うかといったことはそれぞれの大学で異なってくるのは当然ですから、それは今後議論していくことになります。
我々としては、4技能テストは単純にスコアを加算するというよりは、受験資格として見てほしいということを主張しています。1点でも高い点を取る方が有利ということになると、受けられる機会はすべて受けるということになってしまい、受験生の精神的な負担はこれまでと変わりません。そうではなくて、いったんある程度の基準を超えればあとはもう受験しなくていいですよという方が気分的に楽ですし、それが本来我々の考えていた姿なのです。

CEFRで基準を提示しているのもそのような意味があります。つまり、テストによって多少の差があるにしても、CEFRでのB1なりB2なりという範囲の中に位置していることが示されれば、それで受験資格が得られるという考え方です。

なるほど。民間英語テストを受験資格として見るかスコアとして加算するかという立場の違いがあるわけですね。

認定された民間テストについての捉え方の違いもあります。今回の認定において国は民間試験に対して入札のようなことをしているわけではありません。そんなことをしたらどこも応募しないでしょう。これまでだって民間試験を受験する人はたくさんいたわけですし、AO・推薦入試でもすでに使われているわけですから、選定されるためにこれまでの試験のあり方を変えることはあり得ません。
今回の認定というのは、参入条件を提示することで、民間試験に協力をしていただきたいというのがセンターの本意です。評価基準がしっかりしているか、スコアとCEFRとの関係が検証されているかなど、いくつかの選定基準をクリアした試験を信用して採用していこうということです。
そういった前提を無視して、受験生全員が民間テストを受験して、それぞれのテストの相関があるかと言えば、テストの種類が違うのだから、それを問うことは意味がない。そこを議論し出すと、時間もかかるし、話が本筋ではない方に流れてしまいます。

もちろん一定の基準を突破していただく必要はあり、受験機会の平等性を確保するために47都道府県どこでも受けられるとか、費用についてもなるべく受験しやすくするなどといった基本条件はあります。今回の採用でもその条件がそろっていない2,3のテストは認められませんでした。ただ、「値段をいくら以下にしろ」とか、「受験会場は100箇所以上にしろ」などといったことは言えません。試験をする以上、試験官もいるし、採点の手間もあるのだから、値段もある程度かかるでしょう。それをセンターの方で査定し、妥当だと思われるところで認定していくということです。
参入していただくという考えがあまり伝わっていないことで、民間試験に対する要求が大きくなり、混乱が生じてしまうという面があることは否めません。

どの試験が有利か不利かということではなく、自分に合ったテストで必要となるレベルに到達すれば受験資格として認定されるということですね。現状のセンター試験よりも受験生にとってのチャンスは広がるという理解でよろしいでしょうか。

吉田先生:
そういう理解でよいです。期間としては、高校3年のときに受験する試験を2回指定する必要はあります。後から受験したテストの指定をするのではなく、あらかじめ「この日のこのテスト」というふうに申告してもらうわけです。そうすることで公平性を保つというのがセンターの考えです。その制限を設けておかないと何度でも受験する人が有利になってしまいますから。

今回文科省から出された、民間英語試験とCEFRの新しい対照表では、英検がCEFRをまたいでいる形になっています。英検準1級でもスコアによってB1とも評価されるしB2とも評価されることになっています。この対照表の見方で留意しておくことはあるでしょうか。

そもそも各民間団体がそれぞれに出している基準がCEFRにぴったり合っているということはあり得ないわけです。今回基準が見直され、英検が独自に出した2級なり準1級なりといった基準がCEFRのB1・B2をまたぐ形で示された方が実態と合うと判断されたわけです。
大学センターにおいて英検を見る場合は、今後は級ではなくCSEスコアで見ることが必要になってくるでしょう。準1級が取れていてもCSEスコアによってB1と判定されたりB2と判定されたりする場合が出てきます。余裕で合格した人もいればぎりぎりで合格した人もいるわけですから当然と言えば当然です。
もちろんAO入試などでは、大学によって基準は異なるし、センターの方向に合わせる必要はありません。ですから、これまで通り取得級で見ることでもかまわない。あくまでもセンターで行うものは、CEFRの基準で見ていきましょうということです。

英語における4技能統合×クリティカルシンキング

吉田先生の上智大学ではTEAPを推進していますね。TEAPでは4技能に加えて、認知的な技能、あるいはクリティカルシンキングが大事であるということが掲げられているようですが、このあたりについて詳しくお聞かせいただけますか。

これは学習指導要領にもしっかり書かれていることです。「思考力・判断力・表現力」を大学入試においても試すと、そして「知識・理解」だけではだめですよと指導要領で言っているわけですから、当然の方向性なのです。
しかも今回の学習指導要領では、技能統合的な書き方がされています。例えばリスニングにおいては聞いただけではだめで、それに対して自分の意見を述べる力が問われる。あるいは、リーディングしたことをもとに、自分の考えを口頭で述べたり(スピーキング)、書いたり(ライティング)する力が問われます。つまり、インプットに対する反応まで評価に含めないと、読解の「解」の部分、聴解の「解」の部分がなくなってしまうわけです。その部分こそ「思考力・判断力・表現力」、つまり「クリティカルシンキング」が試されるところでしょう。
そういった技能統合をテストで可能にするのがCBTのようなコンピューターを使用したテストです。例えばTEAPのCBTでもそうですが、ライティングのテストではあるけれど、その前に文献を読んで、それについての話を聞いて、それをまとめた上で自分の考えを書きなさいといったテストになっています。実は現実の言葉の使い方というのはそういう統合型になっているのです。

そこにはクリティカルシンキング、つまり「思考力・判断力・表現力」の要素が含まれます。ライティングのテストであっても、その前に文献を読んで理解したものを、異なる角度からリスニングして検証して、自分の意見を答えるといった「技能統合」がしやすい。ですから、TEAPの場合、紙のテストでは4技能別に点数を出していますが、CBTでは1つの統合されたスコアが出るようになっています。そのようにしか測りようがないのです。他の民間テストもCBTになっていけば、4技能の統合が試されるテストになってくるでしょう。

上智大学では、CLILへの取り組みも積極的に行っていますね。CLILは言語と内容の統合という面からの英語教授法だと思いますが、TEAPにおける技能統合とはどういうふうに関係するのでしょうか。

CLILでは「4つのC」を掲げています。コンテンツ(内容)のC、コミュニケーションのC、コグニション(認知的技能)のC、そしてコミュニティのC、これら「4つのC」を統合することで効果的に英語を身につけようというものです。
現実の場面と切り離してただパターンプラクティスみたいなことをするのではなく、社会的なコンテクストに応じて、思考力を発揮しながら、あるいは、グループワークなどを通して、現実の言語使用の中で英語を身につけていく指導方法がCLILと呼ばれるものです。
そのような考えで授業を行うためには、入学してくる学生も4技能統合型テストで入ってくることが理想です。テストと授業の統一性や連続性ということを考えれば、TEAPのような技能統合型テストとCLILのような指導法というのは、現実の言語使用を重視するという意味で当然の流れだと言えるわけです。