受験情報ブログ

入学前の不安の先には楽しさと成長があふれている(前編)

週末の海陽中等教育学校を訪問し、ハウスイベントを取材。
「規律の中の自由」を存分に楽しむ生徒たち

企業が経営母体でボーディングスクール(全寮制)というユニークな教育で知られる海陽中等教育学校。2018年度には米国の名門スタンフォード大学にも合格者を出しました。一方、全寮制ということで不安を抱く方も多いと聞きます。そこで今回は週末の海陽学園を訪問。ハウスイベントを楽しむ生徒たちを取材しながら、入学前に感じていた不安や、実際のハウス(寮)生活について聞いてみました。...

続きを読む

親の心配をよそに子供たちは早く環境になれる

「体験学習でハウス生活が楽しそうだったので第一志望にしました。親元から離れることや、友達とうまくやっていけるかどうか、勉強面は大丈夫かなど、多少の不安はありましたが、ハウスでいつも友達といるのが楽しそうだと感じたので、入学を決めました。」

 そう話すのは2年生の庄司愛琉くん。最初が肝心だと頑張っていたため非常にスムーズにハウス生活に適応でき、不安はすぐに消えてなくなったとのこと。友達といつも一緒にいられるのでたくさん話ができることが楽しいといいます。勉強面でも、ハウスには様々な得意科目を持つ仲間がいるので、互いに教え合うことでレベルアップできるそうです。ハウスでのイベントも大きな楽しみの一つ。夜学(夜間学習)がない週末に体育館を借り切って運動イベントをしたりするほか、学期末にはみんなで温泉旅行の計画もあるそうです。

「ハウス生活により大きな不安を抱くのはむしろ保護者の方ではないでしょうか。」と、庄司君のハウスを担当した金木ハウスマスターは話します。
「目の前の子供は小学生。生活全般、健康面、交友関係など、自分の子供は大丈夫だろうかと保護者の方が不安になる気持ちはよくわかります。しかし、親の心配をよそに多くの生徒たちは比較的早く生活に適応します。GWを過ぎた頃には生活に慣れ、夏前後にはハウス生活にすっかり適応。遅い子でも1年後にはハウス生活を楽しんでいます。」

快適に過ごすために求められるルールを守り、自主自律を促す

 ハウスは全部で12棟。それぞれにハウスを統括するハウスマスターがいます。いわばお父さんのような存在で、生活ルールやハウスごとの目標を定めます。巷では厳しいルールにがんじがらめにされているようなイメージがあるようですが、あるのは中高生として最低限求められる規律をきちんと守ろうというもの。睡眠や食事を含む規則正しい生活と毎日の自学自習、きちんと挨拶を交わすことなど、決して厳しいものではありません。

 ハウスの責任者であるハウスマスターの下には、日本の各分野を代表する企業から派遣された若手社員がフロアマスターとして各ハウスに数名配置されます。フロアマスターはお兄さんのような存在。日常生活や勉強面のサポートはもちろん、人生の先輩としてアドバイスを送るなどして生徒を支えています。折に触れて生徒と一緒にイベントを企画するなど、生徒と積極的に関わってハウス生活を実りのあるものにする役割も果たしてくれます。

 海陽学園に来る前は神奈川県で長年教員をされていたという金木ハウスマスター。ハウスマスターには教育者ではなく養育者としての視点が求められると話します。
「ハウスでは生徒たちの早い自主自律を促し、学習も含めて能動的に行動できるよう環境づくりを整えています。生徒同士でトラブルが起こることもありますが、状況を見ながら、場合によってはすぐに介入することはせず、まずは当事者同士で解決できるようにしています。学齢や成長に合わせてティーチングやコーチングの手法を取り入れつつ、自ら悩み、解決に至るまでの道筋を見守っています。集団生活というのは、他者を知るだけでなく自分の内面に向き合い、じっくり内省する貴重な機会でもあります。そのため海陽の生徒は他校の生徒と比べると個のアイデンティティが早く形成されていくのではないかと思います。」

海陽学園に興味はあるけれど、不安が大きいという保護者に対してハウスマスターとしてメッセージをお願いすると、次のような言葉が返ってきました。

「体験入学で実際にハウスの様子を見るのが一番です。ぜひ低学年だけでなく上級生も見てください。ハウス生活を通して子供がどのように成長していくのかご理解いただけます。また1人ではなく多くのハウスマスターと話してみてください。親元を離れて学ぶわけですから、ハウスマスターと保護者との信頼関係が大切です。お子さんを1人で預けるのは心配だと思いますが、お子さんの成長のためにもあまり手を貸し過ぎず、温かく見守っていただければありがたいです。」

楽しむときは思い切り楽しむ!海陽中等教育学校の週末の過ごし方

朝からさわやかな青空が広がった11月16日の土曜日。この日は多くのイベントが重なっており、生徒たちが思い切り楽しんでいる様子を朝から晩まで見ることができました。

料理イベント:焼き芋・カレー準備
 普段は食堂で提供される食事を食べますが、この日授業がない1年生が集まって、焼き芋とカレー作りが行われました。でき上がった焼き芋とカレーは、この日授業がある2年生と一緒に昼食として食べることになっています。
 焼き芋班はハウス前の広場で炭火を起こし、アルミホイルに包んだ芋を焼きます。種火を炭に移して十分な火力を確保するのは思った以上に大変なこと。炭の置き方を工夫したり、うちわであおいでみたりと、試行錯誤していました。ようやくできた焼き芋を試食してみると、表面が黒焦げになっていたり、思っていたよりも固かったりと、なかなか思い通りの仕上がりにはなりません。でも、生徒たちは最初から最後までずっと笑顔がいっぱい!
上手にできなかったことも含めて、みんなで盛り上がって楽しんでいました。

 カレー班は家庭科室で準備。4つのグループに分かれ、それぞれ野菜や肉などの具材を炒め、鍋に入れて煮込み、最後にルーを投入します。慣れない手つきで具材がフライパンからこぼれてしまうこともありましたが、みんな協力し合いながら楽しそうに料理に励んでいます。面白いのはそれぞれのグループごとに隠し味を用意していたこと。用意されたのはトマトジュース、コーヒー、チョコレート、カルピス。フロアマスターの提案を受けて、それぞれのグループが隠し味として投入するものを決めたそうです。生徒に話を聞くと、「完成したらそれぞれのカレーを食べ比べて、どの隠し味が一番おいしいか確認したい!」と笑顔で答えてくれました。

 2年生の授業が終わったらいよいよ実食!完成した焼き芋とカレーを体育館前の広場に運び出し、芝生の上で気の合う仲間と一緒に食べました。青空の下で仲間と一緒に食事を楽しむのは何よりの贅沢。みんなものすごい勢いでカレーを食べ、焼き芋にかじりつき、何度もおかわりをしていました。
 上の学年になると、自分たちでBBQなどの企画を立案して実行するなど、海陽学園ならではの環境を最大限活用して、存分に楽しんでいるそうです。

スポーツイベント:王様ドッジボール・尻尾取り

 食事が終わり後片付けをした後は、グラウンドと体育館で1・2年生合同のスポーツイベントが行われました。体育館で行われたのは王様ドッジボール。各チームが1人王様を決め、その王様がボールをぶつけられるまで試合を続けるというものです。最初にぶつけられた人が王様だったらその場で試合終了となるため、誰を王様にするかという部分でもチームの戦略が問われます。さらに面白いのは、ある程度時間が経過したら、複数のボールで同時進行するということ。これも生徒からより面白くするためにと発案されたそうです。ボールを投げようとしている人をもう1つのボールで狙ったり、ボールを独占して相手を追い込んだりと、戦略的な要素が増してきます。試合数を重ねるごとに益々盛り上がり、みんな夢中で楽しんでいました。

 外のグラウンドで行われた尻尾取りは、2つのチームに分かれ、ズボンの後ろに垂らしたタオルを取り合い、最後にどちらのチームのタオルが多く残っているかを競うというもの。最初のうちはあまり動きがなく、お互いに相手から一定の距離を置くばかりで、タオルを取り合うのは一部の生徒たちに限られていました。しかし何回かゲームを重ねるにつれてチームの中で戦略が生まれてきます。攻撃的な相手を複数で追い込んでタオルを奪ったり、目立たない場所でタオルを取られないようにじっとしている生徒たちがいたりと、自分たちに有利な状況を作り出すために各チームが工夫を重ね、熱く盛り上がってきました。
 他の学校でも部活動で思う存分体を動かすことはありますが、このように全校生徒で思い切り遊ぶというのは海陽学園ならではの光景です。このような遊びを通して、生徒たちはお互いに協力し合うことや、それぞれの長所をいかしてチームとして最大のパフォーマンスを得ることなどを自然発生的に学んでいるという印象を受けました。スマホやゲームなどの所持は認められていませんが、仮に認められていたとしても、それらに没頭する時間がもったいないと思えるほど充実した時間が流れています。