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受験情報ブログ

【東京都立三鷹中等教育学校】進化する公立中高一貫校Vol.1

教育の明るい未来に向け、より開かれた学校に

my TYPE第13号(2025年7月13日発行)掲載


取材・文/鈴木隆祐 写真/松沢雅彦 鈴木隆祐

中学入試情報誌『MyTYPE』とは

『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年7月13日発行のmy TYPE第13号に掲載しました記事をご紹介します。

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都立改革をリードする先進校 実験の成果は随所に現れる

東京都立三鷹中等教育学校(以下、三鷹ないし三鷹中等)は、かつての同三鷹高校を前身とし、2010年に中高一貫6年制の教育機関として再出発した。小林正人統括校長は23年からその任にある。私は19年秋に三鷹を訪れている。その際も緑豊かな環境に置かれた三鷹の、和やかな雰囲気のおかげで寛いだ取材となった。だが、今回はそれ以上に伸び伸びと取材ができた。理由は明らか。三鷹は都立校の様々な改革における旗艦校だからだ。例えば現在の三鷹に、従来型の職員室がないのも〈東京都教育庁職員室環境改善プロジェクト〉のモデル校であるがゆえ。今では教員が各自の机を持たない、誰もが自在に利用できる共有スペースとなっている。試験期間を除き、生徒の立ち入りも進入可能エリア内なら自由という。都庁ではこれを「未来型オフィス」と称し、20年度から整備にかかり、今年度には庁内の約120の全部門で達成する予定。三鷹は都立校ではいち早く「未来型オフィス」を導入したのだ。私たちが控室として通されたのも、この開放的なスペースの一角=“休憩室”だった。

昨年8月に導入の未来型オフィスはコクヨが手がけ、同社のサイトでも紹介されている。最大の特徴はフリーアドレス制。教職員はその日の席を選んだら、出勤時から退勤時まで一日使用可能で、翌日は前日に座らなかった席を利用するルールになっている。フリーアドレス化に伴い、パーソナルロッカーを導入したが、ロッカー内ではPCなどの充電も可能だ。小林校長の目標は「伸び代のある生徒を育てる」。そのためには学校がまず、伸びやかでなければならない。従来の職員室にあった、セル分割された象牙の塔感は払拭されるべきなのだ。「本校には中学籍と高校籍の教員がいます。よりきめ細かな生徒への指導をするには、学年団や教科ごとの分業に留めず、総員が情報共有できる空間作りが必要。そのほうが生徒たちも訪ねやすい。生徒たちのためのスペースでもあるんです」未来型オフィスが招来した「コミュニケーションの豊富さ」「スピード感の増大」に、小林校長も確かな手応えを感じているようだ。校長は自校の特色をこう捉える。「他の都立一貫校に比べても、本校は多彩な生徒たちが入っているんじゃないでしょうか。より個性的な受検者に選ばれている気がします。学習環境だけでなく、多くの行事や部活、他学年の生徒とも交わり合っての切磋琢磨、といった面が評価されている。そのせいか、毎年1人は東京藝大に進学する生徒がいるんですよ」

そんな突出した才覚を持つ卒業生の一例として、校長は今年度の京都大学の案内冊子『知と自由への誘い』に登場する、文学部2回生の池田真菜佳さんの名を挙げる。池田さんは京大固有の“特色入試”で合格を果たした。文学部の特色入試では提出書類、論文試験、提出書類に関連する論述試験、大学入学共通テストの成績を総合して合格者を決定する。求められる共通テストの得点は900点中760点以上と、一般入試よりは低い。「池田さんは真面目で勉強もできましたが、どうしても京大で『源氏物語』を学びたいと、特色入試にもチャレンジしました。探究でも『源氏』に取り組んでいましたね。『とても楽しい大学生活を送っている』との報告がありました」高田教諭が指導する5年生(高2)の選択授業「日本史探究」は図書室で参考図書探しをし、生徒めいめいで研究テーマを立てる「伸び代のある生徒を育てる」ため、生徒と教員の垣根をなくす「伸び代のある生徒を育てる」ため、生徒と教員の垣根をなくすと語るのは、教務主任で地理歴史科日本史担当の高田直人主幹教諭。池田さんも冊子内の記事で強調するが、〈結果や実績などの「なにをしたか」ではなく、そこに至るまでの過程と「なにを学んだか」が評価されるのが特色入試〉。三鷹での探究学習などを通じ、そうした新たな入試で求められる、思考力・判断力・表現力といった力を蓄えた結果、池田さんも超難関の合格を勝ち得たのだ。

Vol.2につづく

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