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受験情報ブログ

新たな世の中と大学入試で問われる力Vol.3

公立中高一貫校と私立中の「適性検査」から学ぶ

my TYPE第14号(2025年9月21日発行)掲載


聞き手/首都圏模試センター・北 一成、野尻幸義 文/金子茉由、池崎由布子、市村幸妙

安田学園中学校「適性検査型入試」

安田学園中学校の適性検査型入試が求める力とは

̶適性検査型入試作問担当・工藤夏花先生と入試広報部長・土屋道明先生に聞く!!

本校の探究型の学びとマッチし、学力が飛躍的に伸びる生徒が増えています(土屋道明先生)

1923年、実業界の偉人・安田善次郎翁によって設立された安田学園。近隣には2006年に附属中学校を開校して中高一貫校として新たにスタートした、都立両国高等学校・附属中学校があります。安田学園中は都内の私学でもいち早く適性検査型入試を始め、多くの受験生を集めています。2025年度の適性検査型入試において、2月1日午前は526名、2日午前は390名という出願者があり、都内最多の受験者数を誇ります。適性検査型入試作問担当・工藤夏花先生と入試広報部長・土屋道明先生に、同中学校の適性検査型入試の作問や求められる力、入学後の学校生活や進路について伺いました。

さまざまな意見を統合させつつ理解を深め、 自分の考え方へと昇華して表現できる力を

適性検査型入試を行う私学の先駆けで、 都内最多の受験者を集める安田学園の学び

――かなり早い段階から、公立中高一貫校を志望される方も受けられる適性検査型入試を実施し、先進コースでの学びに結びつけ、学校の活性化や入試のレベルアップにつなげてこられたと感じています。

土屋先生:適性検査型入試は15年以上実施しており、都内最多の受験者数となるなど、本校の中学募集の柱の一つとなっています。

――適性検査型入試の作問コンセプトは、先進コースの探究型の学びなど学習スタイルにも密接につながっていますか?

工藤先生:「思考力」をしっかりと問うていることが見える出題になっており、確実につながっていると思います。入学後は、課題を見つけ挑戦する、探究的な学習に力を入れており、教科の授業でも多くの教員が探究的な学びになることを目指しています。知識をインプットする学習ももちろんありますが、複数の資料を読み合わせてプレゼンなどに活かす、図書館などでさまざまな資料にあたり、それをもとに考察を行う授業を豊富に実施しています。

作問時に気をつけていることや 受験生たちに見られる変化について

――適性検査型入試の作問は各教科の先生が関わられていると思いますが、使用される素材について教えてください。

工藤先生:本校の適性検査型入試Ⅰでは、基本的に2つの文章が出題されます。文章に書かれている内容をしっかりと理解したうえで、複数の意見を総合して自分の考えにつなげて表現してほしいという思いがあります。そのため、4科目型入試と比べると、文章のレベルは理解しやすいものとなっています。文章の内容を自分の実体験と照らし合わせ、そしてつなげて解答するというのは、4科目入試では測ることができない力です。

――作文がメインの適性検査型入試の採点は大変な部分もあると思いますが、解答に触れていくなかで発見されたことなどはありますか?

土屋先生:ありがたいことに多くの方が受けてくださっているので、4科とはチームを分け、何人もの教員で時間をかけて採点しています。採点をする際には、客観的な物差しとしての明確な採点基準もありますが、目線合わせも大切にしています。

工藤先生:解答は小学生ならではの経験に基づいた内容が多いですし、そうあるべきだとも思っています。私がこの入試に関わりだしてから8年ほど経ちますが、最初の頃は解答用紙を埋められない受験生が見受けられました。しかしこの数年は書ける受験生も増え、論の立て方などもしっかりと準備されてきているように感じます。

適性検査型入試を経た在校生の様子や 進学実績の変化とは

――適性検査型入試を通じて、伸びしろのある生徒を迎えたいとお考えの学校が多いように思います。多くの卒業生を送り出しているご経験から先生方が感じられている手ごたえは?

工藤先生:国語の授業で作文を書くとき、適性検査型入試を経てきた生徒の文章はとても整っていてやはり上手です。そのため4科目入試で入学した生徒たちは、思考力があり書く力をもっている彼らの文章から学ぶことが多々あります。しかし4科目入試で入った生徒たちは知識のインプットや型を覚えることが上手であることが多く、1つのクラスのなかで異なる部分に強みを持つ生徒たちが影響し合いながら育っています。

土屋先生:適性検査型入試を経た生徒たちの入学後の様子を見ていると、本校の探究的な学びにとてもフィットしていますし、実際にそうした学びが好きな生徒が多いと感じています。たとえば生物クラブで活躍し、世界大会に出場した生徒も振り返ってみると適性検査型入試を経ており、力を発揮しやすい環境なのだと思いました。大学入試で現在とてもさかんになっている総合型選抜や学校推薦型入試をめざす生徒も増え、今春の卒業生で、東京大学や東京科学大学、大阪大学、東北大学への進学者の多くは適性検査型入試で入学した生徒たちで、小6の段階であれだけの文章を書く訓練をしてきている子たちです。一般入試で大学に挑戦する生徒も含めて、本校の6年間での探究的な学びを経験していくなかで、さらに力をつけますが、国公立大学の二次試験の記述などで、かなりアドバンテージがあると感じます。彼らが入学したことで、本校の進学実績は変わりました。

中学入試情報誌『MyTYPE』とは

『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年9月21日発行のmy TYPE第14号に掲載しました記事をご紹介します。

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