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【トキワ松学園】表現する楽しさを通して、未来を生きる力の芽を伸ばすVol.1

自己表現と想像力を育てるトキワ松学園の学び

my TYPE第14号(2025年9月21日発行)掲載


取材・文/ライター 金子茉由 撮影/首都圏模試センター 北一成 ※写真の一部はトキワ松学園の提供

東京都目黒区にあるトキワ松学園は、 小学校(共学)と中学・高等学校(いずれも女子校)を擁し、 子ども一人ひとりの個性と可能性を大切にした一貫教育を実践しています。今回は、「健康な身体・賢明な知性・豊かな感性をあわせもつバランスのとれた人格の育成」を教育目標に掲げ、 未来をしなやかに生きる力を育むトキワ松学園小学校を訪問。 同校の特色である「劇遊び」の授業を通して見えた、トキワ松学園ならではの魅力をご紹介します。

校長自ら推進する、 注目を集める「劇遊び」の授業

トキワ松学園小学校を象徴する教育活動のひとつが、「劇遊び」の授業です。この「劇遊び」は、校長の百合岡依子先生が提唱・実践する、演劇的要素を取り入れた表現活動の授業で、もともとは百合岡先生が受け持った学級やクラブ活動の中で始まったものです。2023年の校長就任を機に、現在では全学年・全クラスにおいて、各学期に1回のペースで定期的に実施されています。このユニークな取り組みは、教育界からも高く評価されています。百合岡先生は、児童青少年演劇における優れた女性の活動に贈られる「第34回O夫人児童青少年演劇賞」(公益社団法人日本児童青少年演劇協会)を受賞。その先進性と社会的意義が、広く認められていることがうかがえます。英国や米国では「ドラマ」が教科として定着していますが、日本ではまだ広くは取り入れられていません。そのような中で、トキワ松学園の「劇遊び」は、子どもたちの想像力や表現力を伸ばす、先進的な教育アプローチの一例といえるでしょう。

担任の先生も一緒に楽しむ「学校づくりの一環」としての劇遊び

取材に訪れた日は、ちょうど6年生の「劇遊び」の授業が行われていました。この日のテーマは「宿泊行事の思い出」です。授業は“手遊び”からスタート。百合岡先生の明るい声かけに、子どもたちはみるみる引き込まれ、久しぶりの劇遊びの時間を笑顔で楽しみながら、積極的にコミュニケーションをとっていました。授業の後半では、宿泊行事の思い出のひとコマを「写真」に見立てた劇をグループごとに創作・発表します。行事の体験を振り返りながら、そのとき感じたことや心に残った場面を、言葉にとらわれず表現していくのです。百合岡先生は「発表を通して、共通の体験から学びを広げることが大切」と語ります。この日、授業に参加していた6年生の担任・藤岡安由子先生の姿も印象的でした。子どもたちと同じ空間で活動をともにし、ときには劇の登場人物として役割を担うこともあるそうです。藤岡先生は「今日が劇遊びだと伝えると、子どもたちから『やった!』という歓声があがるんです」と笑顔で話してくれました。

同校では「劇遊び」を単なる授業の一環としてだけでなく、「学校づくりの重要な要素」として位置づけています。そのため、毎回担任の先生も必ず授業に参加し、子どもたちと一緒に活動を楽しむそうです。この日も藤岡先生は子どもたちのグループに入り、目線を合わせながら対話や表現をともにしていました。「子どもたちから『先生、そこに寝転んで!』なんて言われることもあります(笑)」。その言葉の奥には、先生と子どもたちとの信頼と、のびのびとした学びの空気が感じられました。劇遊びの効果について「机上の学習では見られない子どもたちの姿が発見できます。思いがけない発想力や意外な表現力、自由な関わり合いが見られます。休み時間とはまた違う“遊びのかたち”の中で、クラスメイト同士の新しいつながりが生まれるのです。たまたま同じグループになった子同士が化学反応を起こす瞬間があり、担任としてもとても面白いです」と話す藤岡先生。授業を通して、子どもたちの新たな一面が見えてくることも多いといいます。例えば、普段は一人で好きなことに熱中する“研究者タイプ”の子が、劇遊びの中で驚くような表現力を発揮し、クラスメイトから拍手喝采を受けたこともありました。藤岡先生は「友だちの良さを見つけられたことが、ほかの子にとっても嬉しいことだったのではないか」と振り返ります。

「遊び」だからこそ生まれる学び。想像の世界を広げていきたい

百合岡先生は、「演劇教育というと、舞台発表のための“劇”を思い浮かべがちですが、本校の“劇遊び”はそうしたものではありません」と語ります。「子どもたちの想像力を刺激し、それを仲間と共有することが目的です。状況に応じて即興的に反応したり、仲間と協力したりする中で、心と体が育っていく。誰もが自分らしく、楽しく学校生活を送るための活動であり、だからこそ“遊び”という言葉を大切にしています」。最初は恥ずかしがる子もいますが、「無理をさせず、自然に巻き込む空気」を大切にしているとのこと。子どもたちはその中で少しずつ安心感を育み、徐々に自分を出せるようになっていくそうです。劇遊びの取り組みは、子どもたちだけでなく、保護者からも非常に高く評価されているといいます。年に一度、保護者も交えたワークショップも開催されており、毎回大いに盛り上がるとのことです。さらに、劇遊びは同校の教育活動全般に良い影響を与えているそうです。例えば、ICT関連の授業では、iPadの使い方やメディアリテラシーを劇で表現する試みも取り入れられ、教科や特別活動の中で自然に劇が活用されています。「今はまだ、“遊んでほぐす段階”です。ただ、今後は想像の世界をさらに広げていきたい。台本や見立てなどを取り入れながら、非日常の世界に没入するような深い表現活動にも発展させていきたいと考えています。時間をかけてじっくり取り組むことで、葛藤や成長もきっと生まれるはずです」――百合岡先生の言葉には、表現教育の未来への確かな手ごたえと期待が込められていました。

中学入試情報誌『MyTYPE』とは

『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年9月24日発行のmy TYPE第13号に掲載しました記事をご紹介します。

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