【トキワ松学園】表現する楽しさを通して、未来を生きる力の芽を伸ばすVol.2
my TYPE第14号(2025年9月21日発行)掲載
取材・文/ライター 金子茉由 撮影/首都圏模試センター 北一成 ※写真の一部はトキワ松学園の提供
自分の「好き」を想いのままに表現する
互いを理解し尊重し合う芯をしっかり持ち、しなやかに生きるための力を育む教育
トキワ松学園小学校では、劇遊びに代表されるように、表現力や想像力を育む教育を通じて、子ども一人ひと りの個性を大切にしています。卒業後も学校や先生、そして友人とのつながりを大切にする卒業生が多いのも、 同校ならではの魅力です。そんなトキワ松学園小学校が掲げる教育方針とは、いったいどのようなものなので しょうか。校長の百合岡先生にお話を伺いました。
子どもが自分らしくいられる 空間づくりを大切に、 「また戻ってきたくなる」 学校であり続ける
まずは、学校の教育方針や文化についてお聞かせください。
【百合岡先生】トキワ松学園小学校では「子どもが自分らしくいられる環境」を最重要視しています。例えば、自分の得意や好きなことを安心して表現できる文化は、まさにその象徴です。教員も自分の「好き」を探求しながら授業に生かし、自然体で子どもに向き合うスタイルです。子どもたち自身が自分の良さを自覚し、他者の個性を尊重できる。そういった「互いを認め合う」風土が、保護者・卒業生にも共感されており、学校全体を通じて一貫した文化として根づいています。
卒業生や保護者との関係がとても強いようですね。
【百合岡先生】はい。毎年、バザーや運動会などの行事には、たくさんの卒業生や保護者の方々が足を運んでくださいます。トキワ松学園中高の卒業生だけでなく、小学校を卒業して他校に進学した子たちも、顔を見せに来てくれるんです。行事の運営を手伝ってくれたり、卒業生コーナーを設けてくれたりと、とても協力的であたたかな関係が続いています。特に印象的だったのが、ある卒業生の「小学校時代の仲間は、絶対に否定しない」という言葉です。小学校という大事な時期を、安心して自分らしく過ごせたという実感が、そうした言葉に表れているのだと思います。みんな違っていて当たり前、でもそれぞれの“好き”や“得意”を尊重し合う。そんな空気の中で育ったからこそ、自分を出すことへの抵抗感がなく、他者を受け入れる力も自然と育まれているのだと感じます。たとえ海外や他の地域に転校しても、「トキワ松にいた時間」がその子にとっての“帰ってこられる場所”になる。そういうつながりが続いていることに、私たちも日々感動しています。教職員が長く勤めていたり、毎年同じ行事を大切に続けていたりする私学ならではの良さも、学校の“空気”が変わらずに流れ続けている理由かもしれませんね。
授業や制度面での特色はいかがですか?
【百合岡先生】本校の授業は、「子どもたち一人ひとりの個性や関心を尊重すること」を大切にしており、その考え方を体現する仕組みとして、モジュール制授業を導入しています。これは、一律の時間割やカリキュラムにとらわれすぎず、子どもたちの集中力や学びのリズムに応じて、授業の長さや構成を変えるものです。ときには学習集団自体も柔軟に組み変えることもあります。クラス合同で活動を行うこともありますし、学年を超えての取り組みになることもあります。また、本校ならではの取り組みとして、6年間同じ机を使い続けるという制度もあります。これは「ものを大切にする心」「時間の流れの中で自分の成長を感じること」を重視した教育方針によるものです。6年生の秋には、図工の授業で作った土器を校庭で焼くのですが、その際に机の廃材をたき火の材料として使います。長年愛着を持って使ってきた机が、最後にアート作品を焼く炎として“役割を終える”。子どもたちにとっても印象深い経験になるのではないでしょうか。
本校ではさらに、学びの個別化にも力を入れています。例えば6年生の算数では、習熟度別の授業を取り入れています。基礎をじっくり確認したい子、応用的な課題に挑戦したい子、それぞれの希望や理解度に応じてグループを分けて取り組みます。ただし、あえて別の教室に分かれるのではなく、同じ教室の中で“ともに学ぶ”空気を保ちながら進めているのが本校らしいところです。基礎グループでは先生が丁寧にフォローし、応用グループには中学受験レベルの問題を解いてもらいながら、自主的に考え、友だちと相談し合い、必要があれば先生に質問するようなスタイルをとっています。本校の先生たちはみな、自分の専門性や好きなことを大切にしながら、日々創意工夫を凝らしています。「子どもたちの“好き”や“得意”をどうすればもっと引き出せるか」を考え抜いている先生ばかりなので、授業は常に生き生きとしていますし、子どもたちの反応から学ぶことも多いですね。
非日常だからこそ生まれる、自立とつながり。「自分らしさ」を知り、ともに生きる力を育む
宿泊行事も特徴的と聞きました。
【百合岡先生】はい。本校では2年生から宿泊行事がありますが、4年生以上は3泊4日の宿泊が年に2回あります。自然の中での山登りや農業体験、仲間との共同生活など、日常とは異なる環境に身を置くことがこの行事の大きなポイントです。この宿泊行事の魅力は、単なる課外活動にとどまらず、子どもたちの“素の姿”に触れられることにあります。家庭でも学校でもない“第三の場”で、自分で考え、自分で行動する経験が積める。例えば、友だちと小さな衝突を経験しながらも、どう折り合いをつけるかを学んだり、班のために自発的に動いたり。普段の学校生活だけでは見えにくい子どもたちの本質的な部分が現れてきます。教員にとっても、宿泊行事は非常に意味のある時間です。子どもたちの意外な一面に気づくことで、その後の関わり方や声のかけ方が変わることも少なくありません。実際、宿泊行事を経たクラスでは、子ども同士の関係性が深まり、自然と助け合う姿勢が強まるのを感じます。他校と比較しても宿泊日数が長い分、子どもたちの心の動きも大きく、その後の学校生活に与える影響はとても大きいと感じています。
最後に、トキワ松学園小学校で学ぶ子どもたちには、どのような力を身につけてほしいとお考えですか?
【百合岡先生】本校の創立者が掲げた理念のひとつに、「皆が自由に楽しく学べばよい。子どもたちがめいめい持って生まれた天分を伸ばしてあげればよいのだ」という言葉があります。私はその精神を大切にしながら、子どもたち一人ひとりが“自分らしさ”を育み、のびのびと表現できる環境をつくっていきたいと思っています。そのためには、たくさんの体験や出会いが必要です。本校では、表現活動や行事、日々の学びを通じて、多様な刺激に触れる機会を大切にしています。そうした積み重ねが、自分の興味や得意なこと、価値観を深めるきっかけになりますし、何より「私はこれが好き」と安心して言える空気が、自己肯定感につながっていきます。また、これからの時代を生きる子どもたちにとって、「理解・共感・協働」の力は欠かせないものです。互いの違いを認め、尊重し合いながら一緒に何かをつくり上げる経験を通して、子どもたちには人とつながる喜びや、他者とともに生きる力を育んでほしいと願っています。“自分の素を出しても大丈夫”という安心感の中で、自分を知り、表現し、他者と関わっていく――。それこそが、人生をしなやかに、そして幸せに生きていくための土台になると信じています。
中学入試情報誌『MyTYPE』とは
『MyTYPE』は、首都圏模試センターが発行する中学入試情報誌で、最新の入試動向や学校情報をわかりやすく紹介しています。偏差値データや合格者分析に加え、受験生の「タイプ」に応じた学校選びの視点が特徴です。学力だけでなく個性や学び方に合った進路を考えるヒントが得られ、保護者にとっても教育方針や学校生活を知る貴重な情報源となります。受験を通じて子どもの未来を見つめるきっかけとなる一冊です。今回は、2025年9月24日発行のmy TYPE第13号に掲載しました記事をご紹介します。
- この記事をシェアする
