コラム

希望の私学【聖学院中学校・高等学校】(1/2)

聖学院を訪れ、先生方や生徒のみなさんとコミュニケーションをとると、「目の光があたっている何ものか」と「手がささえる何ものか」があることに気づくはずです。

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はじめに

聖学院を訪れ、先生方や生徒のみなさんとコミュニケーションをとると、「目の光があたっている何ものか」と「手がささえる何ものか」があることに気づくはずです。

清水副校長は、その何ものかがあふれ出て、光り輝き、息吹を与えるシンボルは噴水ですと教えてくれます。たしかに大切な何ものかは、形としては、目では見えませんが、大切な命の価値や人間1人ひとりの個性や才能を共感することはできます。

なるほど、手のひらが支える三角錐の入れ物から湧き出る泉は、純粋で形が定まらず無限に溢れていますから、聖学院が大切にしている何ものかを象徴するオブジェだと納得がいきます。

その何ものかとは何を意味するのか清水副校長に尋ねると、「賜物」ですと即答されました。聖学院の教育は、オンリーワン・フォー・アザーズをモットーにしていますが、まさに生徒1人ひとりが持っている賜物である個性や才能を見守り、互いに支えながら無限に豊かにしていく教育を表現しているのだと合点がいきました。

そして、清水副校長は、「その賜物を豊かにするのに、6年という歳月がかかります。中学の段階では、目をかけながら手をかけて育てていきますが、高校になると目をかけながらも手をはなしていきます。生徒の成長や発達は、芝生の成長に似ています。芽がでてある程度成長するまでは、こまめに手入れします。しかし、やがて成長し、芝刈をするときには、光合成で自生できるような高さのところに合わせます。刈取りすぎて、水や肥料を注ぎ続ける必要はなくなるのです」と聖学院の教育についてわかりやすく説明してくれました。

§1 ダンスと握手

聖学院の学校説明会に参加すると、オープニングはいきなり生徒によるダンスで始まるときがあります。中学生がダンスする場合もあるし、高校生がダンスをする場合もあり、そのしなやかさや上手さの違いはありますが、共通しているところは、お互いの「目」を交わしながら、ときどき手と手を合わせる動きがみられます。

それは、互いの「賜物」を尊重し合い、信頼し合う眼差しを交わしながら、実は手を合わせて「賜物」どうしをお互いにシェアして勇気と自信と英知を強める聖学院の教育のエッセンスをパフォーマンスで表現しているのです。

また、清水副校長は、在校生ばかりか受験生とも握手をします。互いに眼差しを交わしながら、握手をして大切なものをシェアするのですが、それができるということは、そこに信頼関係があることを示唆しますし、信頼は勇気と自信と何よりメンタルインセンティブになります。そして、握手は、生徒1人ひとりと行うわけですから、清水副校長の握手もまたオンリーワン・フォー・アザーズの精神を表しています。

§2 思考力セミナー 入試問題は学校の顔

このように聖学院では、「賜物」である生徒1人ひとりの個性や才能を育てる教育が随所にデザインされています。ですから入試問題でも教科の入試問題以外に、この「賜物」をシェアする思考力を豊かにする教育を表現する「思考力テスト」も行っています。

「思考力テスト」は、聖学院の独自のものですから、学習塾などで準備ができません。そこで何回かの学校説明会で、「思考力テスト」のための準備講座として「思考力セミナー」を同時開催しています。

セミナーで扱う素材は、写真だったり、レゴだったり、音楽だったりさまざまですが、考える過程は変わりません。ここに、生徒1人ひとりが自分の「賜物」に気づき、それを豊かにしていく思考の過程を育てる聖学院の教育の真髄が横たわっています。

たとえば、4つの木の切れ端が配られたときの「思考力セミナー」の展開を追跡してみましょう。

1)【比較】それぞれ、杉なのか、ひのきなのかなどは教えられず、それぞれの違いや共通点をまず比較します。そして「気づいたこと」をワークシートに書き込みます。実は4つの木の切れ端は、4つの知識をたとえています。知らない知識から学びは始まっていたのです。

2)【シェア①】1人ひとり「気づいたこと」をチームのメンバーとシェアします。そして、自分が気づかなかったことについては、ワークシートにメモしていきます。こうして、対話することで、気づきが豊かになる学びの体験をしていきます。

3)【シェア②】木以外にも、コンクリや鉄などとの比較もしていきます。そして、木が、コンクリや鉄よりも柔軟で長持ちすることなど気づいていきます。もちろん、これもチームでメンバーとシェアします。

4)【シェア③】そして、情報提供がされます。それは「現在、1時間に森林は東京ドーム127個分減っている」という情報です。ここで、生徒は、今まで以上に驚きます。木という素材がどんなに大切であるかということに気づいて感動していたのに、その大切なものがどんどん喪失しているという情報を知ったからです。どのチームからも「エーッ!」という声が立ち上がります。

5)【新たな問いの立ち上げ】そこで、最終問題が投げかけられます。「もし将来自分の家を建てるとしたら、どのような素材を使って家を造りますか?」という問いかけです。150字の記述です。

6)【振り返り】「思考力セミナー」の学びの体験を通して、発見したこと、気づいたことを振り返ります。

聖学院の思考力セミナーの肝は、プログラムの5つ目の「新たな問いの立ち上げ」です。今までの勉強では、「問題」は、予め与えられています。しかし、グローバルな時代にあっては、今まで遭遇したことのない事態や課題に直面します。そのとき、それをどう考えたらよいのか、新たに問いを立ち上げて、目の前の事態や課題をとらえ返さし、本当の問題を発見して、課題解決していかなければなりません。

しかも、その時の課題解決は、たんに論理的な解決なだけではなく、どちらを選ぶか意思決定の問題を避けられません。今回も、論理的には、木材で家を建てればよいわけですが、それだと自然環境が破壊され続けて困るわけです。

では、どうするのか、自然環境の破壊はやむを得ないと判断するのか、自然環境を破壊しないようにすると判断するのか、意思決定に迫られるのです。

聖学院の思考力とは、論理的に詰めて考えていくと、現実世界ではジレンマ(矛盾)やパラドクス(逆説)が起こるという現実に気づくところまでいきます。そしてそれを解決するには、どうしたよいのか徹底的に考え抜き、また1人で考えていてもアイデアが広がらないので、仲間と議論し、協力し合い、シェアして解決策をデザインしていくのです。

この過程こそ、互いに大切にすることを尊重し合い、信頼し、新しい知を創造していくオンリーワン・フォー・アザーズの聖学院の教育の真骨頂です。

そして驚くべきことに、思考力セミナー体験後の振り返りでは、「考えることって楽しいということがわりました」「みんなで話し合うとよいアイデアがうまれます」「今まで150字なんてテストで書いたことなかったけれど、今日は150字のます目をはみでるくらい書けたので驚いています」などという想いが刻まれていくのです。