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聖セシリア「グループワーク型読解・表現入試」が実施されました。

2月1日午後、聖セシリア女子中学校の「 B方式グループワーク型読解・表現 入試」が実施されました。

2月1日午後、聖セシリア女子中学校の「 B方式グループワーク型読解・表現 入試」が実施されました。学校が「神奈川県立中高一貫校入試にある『グループ活動』に対応」と明言することから、公立一貫校を志望する受験生も少なくありません。2年目の今年、読解・表現(30分)、グループワーク(40分)のこの入試に臨んだのは38名。入場から解散までを振り返ります。(取材・撮影・文/市川理香)

在校生の笑顔に迎えられて

集合時刻・諸注意の説明は14:30とされていましたが、早めに学校に到着し控え室で待機できるので、14:00には出願者の半分くらいが揃っていたでしょうか。受験生一人で登校という姿もありました。

校舎入り口前には応援の塾の先生の姿も見られ、最後のエールを受け取ってから入場。聖セシリア女子の先生や在校生が穏やかな微笑みをたたえながら迎えてくれるので、ホッとします。

受付で受験票を確認されると、この日の試験会場を案内するカードが渡され、椅子に座って待機します。試験会場もグループワークのグループも、この登校順で決まります。

さて控え室の体育館には何ヶ所かでストーブが焚かれ、コートなしでも十分暖かく過ごせるようにしてあります。壁際にはポットのお茶やアメ(聖セシリアの校章の模様です)が、さりげなく置かれている心遣いにホッとし、温もりを感じます。

前方のスクリーンに映し出される注意事項のスライドショーを見たり、参考書を見たり、親子で何やら話していたり、思い思いに試験会場への移動を静かに待つ時間は、緊張の中にも落ち着いた雰囲気さえ漂います。心の準備は整っている、そんな風情。今年、2019年入試の出願者数は39名で、2018年入試の48名に及びませんでした。しかしグループワーク型入試実施初年度だった昨年は、聖セシリア女子第一志望者が教科型・グループワーク型全てを出願しておくというパターンも含んでの数字。今年は「B方式グループワーク型読解・表現 入試」と他日程との複数回出願が減り、神奈川県立相模原中等教育学校との併願が多いと見られ、1月の体験会や塾でしっかり備えてきた受験生集団だったことが、そんな空気を醸し出していたのかもしれません。

1時間目は「読解・表現」。目の前の問題用紙に集中

14:30、先生から移動の案内があり、在校生の先導で移動が始まりました。保護者に背中をポンポンと叩かれたり握手したり、最後の励ましに送られて筆記用具を携え教室に移動する時には、キリッとした表情に変わります。

試験会場で着席したら机の上におけるもの、コートの置き場、トイレの場所など諸注意の説明があります。

さあ14:45、「始めてください」の合図で、「読解・表現」の開始です。問題を読んで一心不乱に鉛筆を走らせる受験生たち。教室には、紙をめくる音、さらさらという音しか聞こえません。教室のカーテンは引かれているので、目の前の解答用紙に集中することができます。

15:15、終了のチャイムでペンを置き、答案回収。ホッと一息ついたら、その場で配布されたグループワークの会場カードを手に、先生のお迎えで荷物を持って次の会場へ移動となります。

グループワークのテーマは「幸せな人生とロボット」

グループワークの会場となる教室はカーテンも開けられ、窓の外にはキャンパスの松林の隙間から快晴の青空が見える、開放的な雰囲気。机には、7〜8名の小さな集団ができるように配置されており、指定された席に座り名前代わりの数字が印刷されたシールを左胸に貼ります。

いよいよグループワーク開始という態勢になってきます。

15:30、課題用紙配布。

テーマは、「これからの生活で利用すべきではないロボット」。100年後の人たちが、「幸せな人生」を送れるようにするために、課題用紙で挙げられた12例のロボットの中から、利用すべきではないロボットはどれかを考えます。

自分の意見をまとめて書くのに5分。その後、グループごとに各自で机を向かい合わせに並べ替え、話し合いの準備を整えます。司会が誰なのかも自由だし、発言順も自由。各グループには卓上で使える大きさのホワイトボードセットも配られ、それを誰がどう使うのかも任されています。各自の筆記用具は机にしまい、自分の意見を書いた問課題用紙だけを机に乗せマスクを外したら、ここから先、35分間のグループでの話し合いを見守る先生は、口も手も一切出しません。その中で行われる話し合いが実に活発で、今日この場で初めてグループになったはずなのに、時間が経つうちに“チーム”になって行くのが分かります。知識や自分の経験、家族の例などを織り交ぜた意見とその理由などの発言が次々に続きます。ただ自分の意見を言ったら終わりではなく、頷いて同意を示したり、「私はこう思いますが、みなさんはどうですか」「まだ意見を出していない方はいかがですか」など大人顔負け。また話し合いの途中で、「グループの意見としてロボットは一つだけにまとめるんでしたっけ」という疑問が出たグループがありました。問題を読み直して、グループのまとめには数の指定がないことを自分たちで確認して疑問を解決。

自分の考えを主張するだけでなく、グループの人の意見に触発されたり、新しい考えが浮かんできたり、必ずしも同意見でなくても、しっかり説明します。あるいは、「賛成か、反対か、決めきれないので保留で」「子ども目線でなく大人目線でならどうかと考えたら」「アレルギーがあったら」「お年よりだったら」など、誰かを思いやる発言も、自然に生まれてきます。知識や経験をもとに一生懸命考えを巡らせている姿に、思考力型入試の真髄を受験生自身が身をもって示してくれたように感じられました。

グループワークが終了する頃には、受験生の頬はピンクに、耳たぶは朱に染まっていました。
それは部屋の温度云々ではなく、話し合いに真剣に向き合ったゆえだったのは言うまでもありません。

この場で感じたことを大切にしてください

グループワークを終えて、机を元の形に戻したら、課題用紙の最後の枠に、今日の感想を書きます。その後、控え室の体育館に戻り、保護者と合流、解散となりました。出口には校長先生も立ち、受験生と保護者に労いの言葉をかけてくださっていましたが、受験生も笑顔を返して挨拶できるもの、持っている力を発揮できたという満足感からかもしれません。

受験生を見送った後、グループワーク担当の先生、巡回していた校長先生はじめ多くの先生方は口々に、「議論の内容が聞いていて楽しかった」「立派に意見を出し合っていた」と受験生を讃えていました。「えっ? とても活発だと思っていたのに、あれでおとなしかったんですか?」と驚いていたのは、比較的おとなしめだったと言われたグループの監督をしていた先生。それほどに、各グループの議論は活発に行われていた証左でしょう。

2018年の試験終了後、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいという意見が出て、学校全体でこの入試をよくしていこうという流れができたのも、学校としてとても良かったと入試広報部の大橋先生は語ります。来年以降もまたブラッシュアップが図られることでしょう。

同日21:30には、同校ホームページに29名の合格が発表されました。公立一貫校入試のグループワーク対応のために受けた受験生にとっては3日の受検前に良い経験。聖セシリア女子や他私学を志望する受験生にとっても、読解や表現する力、グループワークは、中学生になってもきっと大切になってくるはずです。この入試を通して、聖セシリア女子の先生や在校生と出会ったこと、短いけれどもグループで同じテーマを話し合った時間を共有したことはとても素敵なことだと思います。感想を書き終わった後で、監督の先生が受験生に静かに語りかけていた言葉が、とても心に残っています。

「感想は合否には関係ありませんが、この場で感じたことを大切にしてください」