コラム

英語だけではない、社会で活躍するために必要な力を育む(1/2)

未来を見据える学校 三田国際学園中学校・高等学校
教育ジャーナリスト 中曽根陽子
伝統女子校から、先進的な教育を行う共学校に生まれ変わって5年。「世界標準の教育」で注目を集める三田国際学園中学校・高等学校。中でも、海外大学進学も視野にいれたインターナショナルクラスは、高校で1年間の留学プログラムもあり、日本の高校の卒業資格を習得できることから、保護者の関心も高い。まず、大橋清貫学園長にこの学園が目指す教育について話を聞いた。
続きを読む

子供達の未来を見据えなければ、中等教育はその役割を担えない

中曽根:この学校が目指す教育は、どのようなものですか?

大橋先生: 一言で言うと、有名大学から有名企業へのルートではなく、社会で活躍する力の育成を目指している学校です。こちらに舵を切ったのは、保護者の方との面談を通して感じたことがきっかけです。私は、保護者の方と直接お話しする機会を大切にしていて、これまでに2000人以上の方と面談をしてきましたが、最近保護者の方の意識は確実に変わってきていて、「大学はゴールではない」と言い切る方が、ここ2・3年で確実に増えています。そのお話を聞きながら、「学校が支持されるかどうかは、大学入試で一定の結果を出せるかどうかで決まる。だからそのための教育を行うのが中等教育学校の役割」という考え方は、教育する側が勝手に思いこんでいたことだったと、強く感じるようになりました。社会が大きく変わる中、もっと先を見据えて教育をしなければ、中等教育はその役割を担えません。
ですから我々は、子ども達が社会で活躍するために、中等教育の6年間でその根幹となる力を育てること目標に据えて、すべてのプログラムを作っています。

中等教育の6年間は、社会で通用する力の基盤を作る時間

中曽根:「社会で活躍するための根幹となる力を育てるのが、中等教育の役割」という考えは、私も全く同感です。では、御校が考える社会で活躍するために必要な力とは、具体的にどういうものなのでしょうか。

大橋先生: 世界のリーダーが集うダボス会議を主宰している世界経済フォーラム(World Economic Forum=WEF)が、社会で活躍するために必要な資質を発表しています。直近の「ビジネススキルランキングトップ10は右の通りです。

社会で活躍するために必要な力の定義はさまざまですが、これらの資質の基盤は、中等教育の段階で育てることが重要です。そこで、我々は変化し続ける世界で求められる12のコンピテンシー(能力・資質)として整理し、これを中等教育版に落としこんで、教育プログラムに入れました。生徒達は、学校生活のあらゆるシーンでこれらを身につけ高めていきます。

中曽根: 社会で必要とされる能力や資質は、時代の変化とともに変わりますね。未来を見据えてその能力を定義する必要があると思いますが、この12のコンピテンシーは、変化し続ける世界で活躍するための基盤となる力ということですね。12のコンピテンシーの中で「共創」という言葉が中心にあります。これはどういうことですか?

大橋先生: 生徒達は、中学受験のためにかなり頑張って勉強してきます。ですから、能力的には高いです。しかし、1つの単元をマスターして、応用問題ができるようになると、そこで「分かった」となってしまい、それ以上は考えないという傾向があります。もちろん正解を出すことは大事ですが、本当の学びはその先にあります。しかし、自己完結型の学習ではなかなかそこを超えることができません。正解のない問題についてクラスメートと一緒に考える中で、周りが自分と違う意見を持っていることに気づき、思いもつかないような発想に触れることで、初めて自分の天井を破ることができるのです。ですから、唯一の正解がないことについて、子ども達がさまざまな考えを出し合い共に作っていく「共創」を学園の学びの頂点においています。

相互通行型の授業と「トリガークエスチョン」で生徒の思考を促す

中曽根:確かに、他人と話すことで全く違う着想を得ることができるし、視野が広がることは多いですね。授業の中で、そのような機会を設けているのでしょうか?

大橋先生:はい。PBL型(問題解決型)の相互通行型授業がどの教科にも組み込まれていて、日常的に行われています。単元の共通知識獲得の講義もありますが、教員が投げかける「トリガークエスチョン」をきっかけにして、生徒達が考え始め、意見を出し合います。
その時に大切にしているのが、「貢献すること」です。これは、本校が生徒に求める学びの姿勢です。自分自身で考え、それを発言することでクラス全体の学びに貢献する。互いに貢献し合うことで、さらに学びが深まるのです。生徒達には、いつもそれを心に留めて、学校生活を送ってほしいと、折に触れて話しています。

中曽根:場への貢献をすることが、自分自身の成長につながるのですね。先生方が用意する「トリガークエスチョン」とは、どのようなものがあるのですか。

大橋先生:一例ですが、社会の授業で死刑制度について学び、それが是か非かを考える。数学では、教科書に出てこない解法を自分で考えるといったことが行われています。一般的に教師は、自分のやり方を他の先生と共有することはあまりしませんが、本校ではそれぞれの実践を「トリガー集」としてまとめて教員の間で共有し、さらにブラッシュアップして互いの授業に生かしています。これは本校の財産になっています。

思考を深めることが、大学合格実績にもつながっていく

大橋先生:我々には単元ごとにここまで学ぶというルーブリックがあり、授業で創造的思考までを扱います。例えば「江戸時代の政策について」がテーマだとしたら、なぜ失敗したか、現在に当てはめて考えるとどうなるかまで考えるといった具合です。
時には、中高レベル以上のより深いことを授業の中で取り上げますが、それを学ぶ上で必要な基礎的な知識は、自分で予習する必要があります。基礎を習ってから応用にいくというのがこれまでの通念でしたが、深い理解をする中で、必要な知識は付いてくるということです。
このような取り組みの結果として、大学受験でも成果が出ています。まだ中高一貫の卒業生は出ていませんが、高校受験で入学してきた1期生は、御茶の水女子大2名、上智大10名合格と、入学当初の成績からすると我々も驚くような実績がでました。自分の考えをもつことで自信を持ち、揺るぎない英語力を身につけたことで、難関大学合格を手にしたのです。御茶の水女子大に合格した一人は、フンボルト入試というAO入試で合格。上智大には、入学時英検3級くらいの力しかなかった生徒が合格しています。三田国際で身につけた英語力が発揮されました。

英語力に応じて3つの授業を展開するインターナショナルクラス

中曽根:相当な英語力が身につくのですね。インターナショナルクラスについて教えてください。

大橋先生:従来の学校では、卒業時に英検2級くらいまでの習得を目指してきましたが、今は英語で思考する力が求められるので、我々はヨーロッパ基準のCEFRでC1レベルを目指しています。これは、多くの海外大学にも進学できるレベルです。
インターナショナルクラスは、英語力に応じて、0ベースから始めるスタンダード、インターミディエイト、ネイティブスピーカーレベルのアドバンストと英語のレベル別に3つのクラス編成になっています。常勤のネイティブスピーカーの教員21人が授業だけでなく、副担任としてホームルームや行事にも関わっているので、日常的に英語でコミュニケーションをとれる環境があります。高校のインターナショナルコース・スタンダードでは1年間留学することもできます。
また、ホームルームは3つのクラスの生徒が混在しているので、英語力0ベースの生徒も、日常の生活の中で英語のシャワーを浴び、帰国生から生きた英語表現を学ぶことができるので、目覚ましいスピードで英語を習得していきます。逆に、アドバンストの生徒は、数学・理科・社会は、志望進路に合わせて日本語か英語どちらかによる授業を選ぶことができるのが特徴です。
この後は、生徒達に実際の様子を聞いてください。