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コラム

受験生のいる暮らし 夜遅くまで勉強するより朝勉がオススメの理由

AI時代に力を発揮するために 親子で伸びる!中学受験
教育ジャーナリスト 中曽根陽子

中学受験生にとっての新学期は2月。初めて塾に通い始めたという方は、生活が一変したという感想をお持ちかもしれません。すでに1年以上通っているという方も、新しい学年になって通塾日数や学習内容が増えて、スケジュール管理が大変になったと感じられているかもしれませんね。どちらにしても、これからの生活がスムーズに送れるように、一度生活を見直してみましょう。

初めからうまくいく訳ではないから、最初は慣らし運転のつもりで

 最近は、低学年のうちから塾通いをする人も増えているとも聞きますが、多くは小学3年生の2月(新4年生)から塾に通い始めると思います。それでも最初の1、2ヶ月は、なかなかペースがつかめず、「うちの子、この先ついていけるのか心配」という声をよく耳にします。
 最初のうちは通塾も週2回くらいのはずですから、そんなに負担はないのでは・・・と感じるかもしれません。しかし、考えてみてください。学校で7時間以上過ごして、頭も体も疲れている時間帯から、また違う環境の中で数時間を過ごしているのです。それだけでも大変。しかも、学校ではまだ習ってない内容を勉強するのですから、子ども達はかなりがんばっていると思いませんか?
 しかも、塾通いに慣れるだけでも大変なのに、宿題もこなさなくてはならない。子ども達の頭は休まることなく、フル回転。かなりの刺激を受けていることになります。ですから、たとえ最初はついていけてないように思えても、全てを完璧にこなそうとする必要はありません。順調そうなよそのお子さんと比べず、まずは、塾通いが加わった生活のリズムを整えることを第一優先にしましょう。

1日の過ごし方を表にしてみよう

 塾通いが始まると、どうしても時間に余裕が無くなります。塾の授業だけでなく、通塾にかかる時間を加えれば、3〜4時間は拘束されますし、塾から帰ったら、塾や学校の宿題もこなさなくてはならない。その合間に食事の時間や入浴の時間も取らないとならない・・・。ついつい、寝る時間が遅くなって、朝が起きられないといった悪循環に陥りがちです。でもそれではこれからの長い受験生としての生活を乗り切ることはできません。
 そこで、オススメしたいのは、1日のスケジュールを表にしてみることです。まず、今の状態をそのまま記入します。起床時間・朝食・登校・学校からの帰宅時間・塾に行く時間・塾から帰宅時間・夕食・学習時間・入浴・就寝時間などを記入し、これを1週間続けてみると、睡眠時間がどのくらい取れているか、一定の生活リズムになっているのか、日によって違いがあるのかなど、子どもの現状や課題が見えてきます。もし、日によって寝る時間が一定ではないようなら、生活を見直してみましょう。

睡眠時間の確保を第一優先にしてスケジュールを組もう

 その時に心がけたいのは、睡眠時間の確保を第一優先にすることです。なぜなら、成長期の子どもにとって、睡眠が脳の発達に大きな影響を及ぼすことが様々な研究で分かっているからです。
 睡眠時間と成績の相関を示すデータも複数あります。例えば、広島県教育委員会が2003年に小学5年生を対象に行った「『基礎・基本』定着状況調査」では、睡眠時間が5時間以下だと国語が51.9点、算数が53.9点。5時間以上から6時間未満の場合、国語が61.8点、算数が65.8点。睡眠時間が9時間以上10時間未満だとそれぞれ70.3点、73.7点というように、睡眠時間が長くなるにつれて、成績が上がったのです。小学生が必要な睡眠時間は、最低でも9時間、本当は10時間と言われています。これは、子どもは特に夜中の23時から2時ごろに成長ホルモンがたくさん分泌されるからでで、その時間帯に熟睡している必要があります。
 しかし実際は、日本の小学生の半数が夜10時以降に寝ています。学校に遅刻しないために7時には起床するとしたら、夜10時以降に寝ていては、9時間の睡眠時間を確保するのも難しいですね。5、6年生になると、塾から帰ってくる時間が夜9時を過ぎるということもあるでしょう。その場合でも夜10時までには布団に入るように心がけましょう。
「それでは宿題が終わらない」という声が聞こえてきますが、ぜひ朝の時間を使うようにしてください。その方が、夜遅くまでやるよりずっと集中することができます。

成功者がやっているスケジュール管理とは

 1日は24時間ですから、睡眠時間を確保することを第1優先にすれば、おのずと使える時間は決まってきます。でも、受験生は塾の宿題やテスト勉強など、やらなければならないことがたくさんあるので、「寝る時間を優先にしていたら、終わらないから、ムリムリ〜」と思うかもしれません。しかし、私の周りには、睡眠第一で御三家に合格した人たちがいます。その人たちのコツをご紹介しましょう。
 まずやらなければならないことを書き出し、いつどの時間でやるか決めていきます。この時、やらなければいけないことを、ポストイットに一つずつ書いて予定表に貼っていくのがコツです。ポストイットなら、もしこなせなかった時に移動することができて便利だからです。その時大切なのは、お子さんと一緒にスケジュールを決めるということです。なぜなら、自分で決めたことは実行する可能性が高いからです。
 その時に「○○しなさい」ではなく、「いつやったらいいと思う?」とい問いかけてみましょう。もし一人で決められない時には、スクジュール表の空いている時間を示して「こことここが空いているけれど、どちらでやる?」と選択肢を与えてあげると決めやすいでしょう。いずれにしても、自分で決めたと感じられるかどうかが重要です。
 そして、やり終えたものは線で消していきます。この終了した付箋の数が頑張った証になり、達成感を感じると同時に自信にもつながるはずです。中学受験の勉強はそれなりに大変ですが、「たいへん、たいへん」と言っていても苦しくなるばかりで何の解決にもつながりません。
 中学受験はゴールに向かってマラソンをするようなもの。途中で息切れしないように、体の健康と心の健康を第一に、いかに楽しめるかを工夫してみてください。

中曽根陽子 [教育ジャーナリスト マザークエスト代表]

教育機関の取材やインタビュー経験が豊富で、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆。子育て中の女性に寄り添う視点に定評があり、テレビやラジオなどでもコメントを求められることも多い。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱し、講演活動も精力的に行っている。また、人材育成のプロジェクトである子育てをハッピーにしたいと、母親のための発見と成長の場「マザークエスト」を立ち上げて活動中。