コラム

子ども達が大人になる頃、どんな世の中になっているんだろう?

AI時代に力を発揮するために 親子で伸びる!中学受験
教育ジャーナリスト 中曽根陽子
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AI(人工知能)がますます発達し、2045年には、人間を超えるのではと言われています。その時、あなたのお子さんは何歳ですか? 今10歳のお子さんなら、30代半ば。働きざかりの年齢ですね。「子どもには、将来自分の力を発揮して、しあわせに生きてほしい」というのは、親であれば誰もが願うことだと思います。そのためにいい教育を与えたいと思うのでしょう。しかし、自分の力の発揮の仕方が、変わるのだとしたら・・・。先を見据えて考える必要がありそうです。

AIの発達で、変わる仕事 医師の仕事も機械に取って代わられる...

人工知能の発達で、今ある仕事の半分が自動化されて無くなるというデータがありますが、そう聞いても、実際どんな世の中になっているのか、現時点ではなかなか、想像もできませんね。
しかし、実はすでにそういうことが起き始めているようです。例えば、ゴールドマン・サックスというアメリカの超有名な投資銀行では、そのニューヨーク本社で2000年には600人いたトレーダーが、2017年現在でわずか2人になっているそうです。空いた席を埋めているのは、200人のコンピューターエンジニアによって運用されている『自動株取引プログラム』。
一昔前には、高給をとっていた憧れの職業の一つが、今では機械に置き換わっている。これが事実です。
他にも、医師や弁護士の業務の一部をすでにAIが担っているなど、鉄板だと思われていた職業もその地位が揺らぎ始めています。

自動化というと、例えば自動改札の登場で、改札の駅員さんがいなくなったとか、組み立て工場から人がいなくなるとか、どちらかというと単純な作業が機械に置き換わるというイメージを抱くかもしれませんが、今後は、むしろ高度な知識が必要とされてきた職種で、AIが導入されていく可能性が高まっています。なぜなら、そういう職業ほど人件費が高く、しかも大量のデータを処理する能力は、コンピュータにはかなわないからです。経営者なら、AIを導入する投資に見合うコストカットを考えるでしょうから、高給が支払われている職業ほど、置き換えられる可能性が高いと言えるかもしれません。

食いっぱぐれのないように、万全のレールを敷いたつもりが・・・

ここ数年、医学部ブームが続いていて、「東大より医学部」ということで、優秀な生徒たちが医学部を受験していくケースが増えています。
その背景にあったのが、医師不足という社会問題もありましたが、就職に関する不安が大きかったと思います。
有名大学を出ても、一流企業にはいれる保証はない。たとえ入れたとしても、その先はわからない。比べて、医学部は大学進学がストレートに職業に結びつき、将来性がある。高収入が見込め、かつステイタスも高く、安定している。そんな理由で、子どもを医学部に進学させたいと願う教育熱心な親に、私は何人も会いました。

子どもには、食いっぱぐれがない職業について欲しいというのは、正直な親の気持ちだと思いますが、そういう側面だけで見たら、医師だってこれから、食いっぱぐれないという保証はありません。
実際、医師が不足しているのは地方で、みんなが住みたがる都会では、医師は余ってきています。しかも、勤務医の収入はそんなに高いわけではありませんし、仕事は非常に過酷で、ストレスも高いと思います。
もし、高給が得られてステイタスが高いからというだけで医師になる人がいたら、割が合わない職業かもしれません。
ほんとうに子どもが心から医師になりたいという気持ちを持っているのであれば、どんなに大変なことがあっても、乗り越えていけると思いますが、こんなはずではないという状況に出会った時に、果たして乗り越えていくことができるでしょうか?

指示待ち人間はいりません。

このように、親は得てして、子どもには苦労をさせたくないと思い、失敗しないように先回りしてレールを引きがちです。
しかし、これだけ変化のスピードが早いと、いくら万全のレールを敷いたつもりでも、そのレールがいつまでもつか、わかりません。
だとしたら、「子どもには、将来自分の力を発揮して、しあわせに生きてほしい」という願いを叶えるために、どうすればいいのでしょうか。
その答えを探すために、これからの社会で求められている力について考えてみましょう。

私たち親の世代は、「なんだかんだ言って、いい会社に入れれば生活も安定する。そのためにはいい大学を出ることが必要。だから、いい大学に入るために頑張って勉強する。それが幸せになれる近道だ」という価値観を持って(あるいは植えつけられて)がんばってきたという人が多かったかもしれません。確かにそういう面も否定できない、ある意味正解を見つけやすい時代でした。
「出る杭は打たれる」という言葉があるように、社会で求められる人材も、自分の意見を主張するより、指示されたことを確実にこなせる人が重宝されてきた面があります。

しかし、今は変化が激しく、いい大学を出て、世間的にいいと思われている会社に入ったとしても、そこで一生安泰なんてことはない。むしろ変化に対応していかないと生き残れない時代です。その時に必要なのは、自分で考えて決める力や、うまくいかないことが起きてもそこでめげずに前に進む力ではないでしょうか。
すでに、社会では新しい価値を創造できる人材が求められています。つまり「出る杭」です。
しかし、社会に出て来るワカモノは、「従来型の指示待ち人間がほとんどだ」という声を採用担当者の方々から聞くことがあります。さらに、うまくいくかどうか分からないことにチャレンジするのを怖がり、人と違う事を避ける傾向もあるようです。しかしそれも仕方のないことかもしれません。なぜなら、ワカモノ達は、そういう育てられ方をしてきたのですから。

小さい時から、たくさんの習い事を掛け持ちするなど、用意されたものをこなすことに忙しく、自分で考える機会が少ない。時間を忘れて何かに熱中するという経験もなかなかできない。なにかに挑戦しようとすれば、失敗しないように先回りして手を出されたり、危ないからやめときなさいと言われて諦めたり・・・。そんな経験を積んでいくうちに、だんだんと、チャレンジをしなくなり、人の指示を待つ癖がついてしまうのでしょう。

「子どもがやる気がなくて困っているんです」というけれど・・・...

その一方で、子育てで困っていることのひとつとして、よく耳にするのも、「子どものやる気問題」です。
そうですよね。「子どもが自分からやる気を出して、いろいろなことに取り組んでほしい」と思っているのに、逆のことをしているのかもしれませんね。
しかし、これからは大人になる皆さんのお子さんは、「仕方がない」とは言ってられません。
なにしろ、指示通りにやるというのは、機械の仕事になってしまう訳ですから。
ではどうすればいいのでしょうか?

その答えの一つが、自分で選択する機会を増やすということです。
最初から、全部自分で考えるというのは、難しいかもしれませんが、例えば、「おそばとうどんはどっちがいい?」「目玉焼きとオムレツどっちにする?」というように、メニューを選ぶのは決めやすいでしょう。
また、学校に着ていく洋服を選ぶというのもいいかもしれません。
「子どもに選ばせたら、ちぐはぐな格好になっちゃう」とか、「寒いのに半袖半ズボンを選ぶから選ばせたくない」という方がいますが、そこはちょっとがまん、がまん。それも経験です。
こんな小さなことでも、日常生活の中で、子どもが自分で選ぶ経験を繰り返していくうちに、だんだん大事なことも、自分で考えて決めるということができるようになっていくと思います。
実は、この「自分で考えて決める」という力は、今教育現場でも注目されています。

学校教育も変わる!?

2020年度から実施される新学習指導要領が目指しているのが、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へのシフトだといわれているのです。
そして、キーワードとしてあげられているのが、「主体的・対話的で深い学び」です。
簡単に言うと、先生が一方的に教えるのではなく、生徒自身が学ぶ力=生きる力を育てましょうということです。皆さんのお子さんが進学する中学や高校でも、すでに教育が大きく変わろうとしています。

次回は、どう変わろうとしているのかを見ていきましょう。

中曽根陽子 [教育ジャーナリスト マザークエスト代表]

教育機関の取材やインタビュー経験が豊富で、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆。子育て中の女性に寄り添う視点に定評があり、テレビやラジオなどでもコメントを求められることも多い。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱し、講演活動も精力的に行っている。また、人材育成のプロジェクトである子育てをハッピーにしたいと、母親のための発見と成長の場「マザークエスト」を立ち上げて活動中。