受験生マイページ ログイン
コラム

【受験生のための食べる処方箋 3】テスト前のお腹ゴロゴロ。パンと牛乳を見直してみては?

オーソモレキュラー .jp認定栄養カウンセラー・栄養士 吉川圭美

毎日がんばるお子さんへ食事でサポートしませんか?
難しく考えなくても、日々の栄養バランスに少し気をつけるだけで、見違えるほど変わります。
お子さんだけでなく、ご家族皆様の美容と健康にもうれしい情報を、栄養士である筆者がわかりやすく伝授いたします。

                   

夏休みが終わり、いよいよ受験まで3ヶ月あまり。親としては受験本番に向け、子供の体調に気を配り始めたいところです。

中でも気になるのが、「お腹」。ゴロゴロしやすかったり、下痢をしやすかったり。受験当日にお腹のトラブルで力を発揮できなかった、なんてことになったら悲しいですよね。

お腹の調子が悪くなる理由にはいろいろありますが、意外と見落としがちなのが、小麦や牛乳。これらに含まれているグルテンとカゼインが影響している可能性があるかもしれません。

「うちの子は麺好きだから」「カルシウム補給のため牛乳は欠かせない」といったご家庭はもちろん、最近は腸ケアがブームになっているだけに「風邪予防のため毎日ヨーグルトを食べている」という場合も、気になります。

ジョコビッチを世界1位に導いた「グルテンフリー」

毎日の食生活の中でグルテンの摂取を見直し、飛躍的に成績をあげた有名人がいます。セルビア出身のプロテニスプレーヤー、ノバク・ジョコビッチ選手です。食生活の改善が世界ランク1位の大きな原動力になったことで知られています。

グルテンとは小麦製品に含まれるタンパク質の一種。パンやケーキ、クッキー、ドーナツ、マフィン、さらに餃子の皮やシリアル、カレールーや揚げ物の衣、ラーメンなどの麺類……と多岐に渡ります。そしてカゼインは、牛乳やチーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品に含まれるタンパク質の一種。これらは腸を荒らしやすい性質を持っている事がわかっています。

そもそも、食べ物に含まれているタンパク質は、アミノ酸が何百、何千と数珠つなぎのように集まってできた物質です。しかし私たちの腸は、タンパク質をそのまま吸収することができません。そこで、数珠つなぎでくっついた状態を胃酸などの消化酵素で一つひとつバラバラにしていきます。

ところが、グルテンやカゼインにはプロリンというアミノ酸が含まれているため、人間の消化酵素ではバラバラにしにくい性質があります。そのため、摂取したグルテンやカゼインをスムーズに分解することが難しい人がいるのです。

消化されたタンパク質がたどり着くのが小腸。ここは栄養吸収のメインステージであり、アミノ酸にまで細かくされたものが、粘膜から吸収されます。

粘膜は、よくザルに例えられます。粘膜が健康な状態、つまりザルの目が「細かい」状態だと、アミノ酸のような小さいものは粘膜を通じ血液中に入る事ができますが、グルテンのような大きなものは入ることができません。一方、小腸の粘膜が荒れた状態、つまりザルの目が荒い状態だと、完全に分解されなかったグルテンのような大きいものも一緒に血液中に入ってしまうことに…。

するとどうなるか? 身体には、細菌など異物を体の外に出す機能があります。これは「免疫」と呼ばれるシステムです。未消化のグルテンやカゼインが血液中に入ってくると、これを敵とみなし、過剰に反応してしまうのです。例えば下痢や便秘を繰り返したり、頭痛に悩まされたり。さらには集中力の低下、アトピー、喘息、鼻炎など、不調はさまざまな形で現れます。

小麦製品、乳製品を控えると見えてくるもの

「うちの子も、もしかしたら…」という人は、小麦製品、乳製品を2週間ほどしっかり抜いてみると、お腹の調子との因果関係が見えてきます。小麦はパンや麺類、クッキーなどの焼き菓子のほか、カレールーやしょうゆ、麦茶、お米と一緒に炊き込む押し麦、フライの衣などいろいろなものに含まれるため、一度しっかり抜いてみるのです。普段の日に行うのが難しいのなら、冬休みを利用するとよいでしょう。

2週間後にお腹の調子が良くなったなら、グルテンやカゼインがトラブルを起こしている可能性が考えられます。受験前は食べるのはできるだけ控えるのがおすすめです。また、オーソモレキュラー栄養医学を実践するドクターに相談してもよいでしょう。基本的に腸を荒らしやすい食材でもあるので、現時点でトラブルがない人も「ここ一番」に力を発揮できるよう控えめにするのがベターです。

普段から「朝食はパン」「お風呂上がりにはアイス」など、無意識に口にしている小麦製品、乳製品はけっこう多いもの。ふだんの食生活を見直し、これらを減らしていくことでお腹の調子が変わってきた、という声もよく聞かれます。

ちょっと大変そう、と思うかもしれませんが、まずは朝食のパンをおにぎりにしてみては。シャケ、ツナマヨ、おかか、しらす、たらこ、梅干しなどバリエーションも豊富です。ちょっと前に流行した「おにぎらず」なら、目玉焼き、前日の残りの焼肉などを包むだけ。

さらに、フライのときには小麦粉の代わりに米粉を使う、焼きそばをチャーハンやビーフンにするなど、できることは意外に多くあります。食事を変えるだけなので、大きなお金をかけずにできるのもメリットです。

お腹の調子は次の日にいきなり良くなるものではなく、毎日の食生活の中で少しずつケアしていくもの。気になっているなら、ぜひ始めてみてはいかがでしょう。

吉川圭美 [オーソモレキュラー栄養カウンセラー・栄養士]

栄養士資格を取得後、健康・食にまつわる編集者・ライターとして活動。200人以上のドクターや健康法の提唱者にインタビューを行う。その際出会ったオーソモレキュラー栄養医学に魅了され、ひとりでも多くの人に伝えたいと資格を取得。現在は保育園にてオーソモレキュラー理論を応用した給食にたずさわるほか、クリニックにて栄養カウンセリングを担当。一人ひとりの不調と向き合い、身体に合った食べ方を提案している。記事執筆や監修、レシピ提案なども行う。

MYLOHAS連載「ポジティブ栄養学」http://www.mylohas.net/2016/11/058248nutrition.html