受験生マイページ ログイン
受験情報ブログ

中学共学化3年目を迎え活気づく芝浦工大附属中の第1回入試

2月1日(木)amに行われた、近年高い人気の芝浦工業大学附属中学校の第1回入試の様子をお伝えします。

首都圏中学入試における東京・神奈川エリアの入試スタート日である2月1日(木)amに行われた、2017年~2021年にかけて、キャンパス移転と校名変更、高校共学化と中学共学化という大きな進化と変貌を遂げ、近年の入試で高い人気を集めている芝浦工業大学附属中学校の第1回入試の様子をお伝えします。〈取材・撮影・文/北一成〉

2017年~2021年にかけて大きな進化と変貌を遂げた注目校

首都圏中学入試における東京・神奈川エリアの入試スタート日である2月1日(木)amに、近年の入試で非常に高い人気を集めている芝浦工業大学附属中学校の第1回入試が行われました。

2017年にそれまでの板橋から豊洲の現校地にキャンパス移転。大学キャンパスとも近接することになり、従来の芝浦工業大学中学校・高等学校から現在の芝浦工業大学附属中学校・高等学校への校名変更と高校共学化に踏み切り、その後2021年に中学共学化を果たして、近年、目覚ましい進化と変貌を遂げつつある同校は、首都圏の中学入試でも大きな期待と注目を集めている学校です。

今春2024年の第1回入試の志願者は、462名(男子340名、女子122名)で、男女ともに前年2023年入試よりも増加。このうち427名(男子312名、女子115名)が、この日の受験に訪れました。

写真奥に見えるのが、芝浦工業大学附属中学校高等学校(以下、記事中では芝浦工大附属中高と表記)のキャンパスと校舎。7時台にそこに向かう親子の後ろ姿が眩しく見えます。

私学が受験生を親切に“迎え入れる”入試に!

2020年初頭から国内にも拡大したコロナ禍の約3年半、この2021年~2023年の間に、中学入試の風景も大きく変わりました。かつてはこの入試時期の風物詩とも言われた塾の先生やスタッフによる受験生への激励(入試応援)の様子も、学校側からの自粛要請や塾自らの自粛によって、いまではほとんど見られなくなりました。

なかでも受験生が多く集まる人気校では、受験生と保護者、学校関係者の完全防止対策のために、こうした入試取材も許可されないケースが増えてきました。しかし、この芝浦工大附属中学校では、自校の万全を期したコロナ感染対策も含めて、入試のありのままの様子を伝えたい、という趣旨から、コロナ禍の間も変わらず取材を続けさせてくれました。

コロナ禍が少し落ち着いた今春2024年の入試でも、変わらぬ安全対策を含めて、多くの先生方やお手伝いの在校生が、優しく温かく受験生を迎え入れてくれる、和やかな入試風景を見せてくれました。

他の私学も含めて、こうした“入試の変化”について、「塾が送り出す入試から、私学が受験生を歓迎して迎え入れる入試へ」と評した教育関係者がいましたが、まさにそうした姿勢を体現してくれているのが、この芝浦工大附属中学校の入試であり、同校の人気の理由のひとつでもあると感じました。

多くの在校生が入試のお手伝い

この日の開場は7:30。入試要項では「試験当日は、8:30までに試験室に入室・着席してください」と示されていますが、7時30分よりも前に校門に到着する受験生と保護者もいて、入試本番に向かう強い気持ちを感じさせられました。

受験生の多くは東京メトロ有楽町線「豊洲駅」から徒歩で来校したようですが、さらに同校から最寄りの新交通ゆりかもめ「新豊洲駅」から来る受験生と保護者も多く、そちらの駅寄りの正面入口が入場口とされていることから、校舎前に立つ案内の先生方は、左右両方から来校する受験生と保護者に「お早うございます」と明るく声をかけ、校舎に迎え入れていました。

校舎の入り口では入試のお手伝いを買って出てくれたという多くの在校生が、さらに明るい声で受験生に挨拶をして、当日の案内の紙を手渡して、優しく校舎内に迎え入れてくれます。

筆者はかつて、板橋の校地で男子校だった時代の入試にも何度か取材でお訪ねしたことがありましたが、この豊洲の校地に2017年に移転して高校を共学化し、2021年の中学共学化から4月には4年目を迎えようとしている同校の現在の入試は、さらに明るく活気づいていると感じました。

受験生と保護者は、2階までは一緒に昇れる

校舎内に入ると、手渡された案内で自分の試験教室を確認すると、保護者控室のある2階までは、保護者と一緒に昇っていくことができます。

そして、2階の踊り場で受験生は保護者と別れ、そのまま3階・4階の試験教室に昇っていきます。

保護者は2階に用意された控室に案内され、そこでわが子の試験開始~終了を待つことになります。

なかには、いったんわが子の後ろ姿を見送ると、階段を下りて校舎外に向かう保護者も…。まだ早朝ではありますが、いま「住みたい街」としても大人気の豊洲の駅周辺には、ショッピングモールやお店も多くあるので、そこでいったん休憩するか、または交通至便な立地でもあるので、いったん帰宅してから迎えに戻る保護者もいるのかもしれません。

お手伝いの在校生に手渡された当日の案内を確認

校舎入口を入るときに在校生から手渡された当日の案内は、Å4判の表裏印刷の片面に「受験に際しての注意事項」、もう片面に「【受験生用】2024年度第1回入学試験会場案内図 2月1日(木)」が記載されています。

1枚の用紙にコンパクトに必要事項がまとめられたものですが、「試験場階数」が受験番号によって、ひと目で分かりやすいように、その部分は大きく表示されています。こうしたところも、芝浦工大附属中の入試の親切な運営姿勢の表れなのでしょう。

これから保護者と別れて、ひとりで試験教室に向かう受験生が迷ったり、不安を感じたりしないような配慮が行き届いています。

中学受験は、12歳の少年・少女が自力でチャレンジする「大冒険のひとつ」と表現した教育ジャーナリストの方がいましたが、これから先は、受験生がたったひとりで向かう「大冒険」のヤマ場です。

2階で保護者と別れ、保護者は控室へ、受験生は試験教室へ

受験生と保護者が分かれる2階の踊り場では、最後の荷物と受験票の確認や、わが子への声掛けをする多くの姿が見られ、その後はすっと保護者に背を向けて階段を昇っていくわが子の後ろ姿をほんの少しの時間、見守る保護者の姿が印象的でした。

この後、多くの保護者は、暖房の効いた明るい2階の控室(ホール)で待つことになりますが、かつてわが子の中学受験を経験した保護者からは、この保護者控室で待つ間のことをよく覚えている、という声をよく聞きます。

無事にわが子を試験会場(試験教室)に送り出した安堵感もあり、同時にこれから入試に立ち向かうわが子の健闘を祈る気持ちや、少しの不安なども感じながら過ごす、決して短くはない時間だからでしょうか…。

この2024年の中学受験生は、2011年の東日本大震災の年に生まれた学年の子どもたちです。

さらには、受験準備の期間、ほぼ3年間にわたるコロナ禍のもとで、苦労をしながらも受験勉強を続けてきた受験生と、それを支えてきた保護者、ご家族です。

大変な状況のなかで、子育てと受験準備を何とか続けてきて、この日の入試本番を迎えることができただけでも、親子とも本当に立派だったと思います。

ここからは受験生が一人で入試に向かう!

2階の踊り場で保護者と別れた受験生は、ここからはひとりで3階か4階の試験室(試験教室)に向かいます。今日まで努力を続けてきて、いよいよ入試本番を迎えて階段を昇って行く後ろ姿に、わが子の成長と頼もしさを感じた保護者も多かったのではないでしょうか。

3階・4階の試験室が並ぶフロアでも、多くの先生方とお手伝いの在校生が優しく受験生を迎えてくれます。ひとつの試験教室で受験生を招き入れてくれていた在校生の男子2人に学年を聞くと、「高校2年と1年です」と明るく答えてくれました。

在校生までが、4月から同じ学校の仲間となる可能性のある小学生を、ワクワクしながら迎えてくれているかのような姿が印象的でした。

しかし、現校地へのキャンパス移転と高校の共学化から7年、中学の共学化から3年目を迎えた芝浦工大附属中学校は、すでに首都圏の中学入試でもかなりの人気校。入試レベルも年々高まっています。

「今年は昨年より多くの受験生が本校を志願してくれています。とくに女子の人気が増していることもありがたいですね」と教頭の斎藤貢市先生。第1志望と考えてくれている受験生の割合も年々高まっているそうです。

決して合格は簡単ではない、芝浦工大附属中の入試ですが、今日までこの日に力を発揮するために頑張ってきた多くの受験生は、入試問題と正面から向き合い、培ってきた各自の力をきっと十分に発揮してくれるのではないでしょうか。

それぞれの試験教室に入ると、気持ちを落ち着けて開始を待つ

それぞれの試験室(教室)に入った受験生は、入室・着席時刻の8時30分まで、トイレなどを済ませて、気持ちを落ち着かせて8時40分からの試験開始を待ちます。

そして、これから1時間目は国語(8:40~9:40の60分。120点満点)、2時間目は算数(10:00~11:00の60分。120点満点)、3時間目の理科(11:20分~12:10の50分。100点満点)の3教科の試験に挑みます。

その3教科すべてで、今年は「聞いて解く問題(リスニング)が実施されます。これも芝浦工大附属中の入試のユニークな点のひとつです。

現在の首都圏の中学入試では希少な、「国・算・理」の3教科入試を、この2月1日の第1回と、2月2日の第2回入試で実施する芝浦工大附属中。さらに今年は、2月2日午後に「言語・探究入試」と、「英語入試」を独立して実施します。

2017年の校地移転と高校共学化、2021年の中学共学化を弾みに、今春2024年まで着実に人気を高めてきた同校ですが、その過程でも、同校の教育目標を実現する中高6年間の入り口である中学入試で、その教育方針に沿った受験生と出会うために、確たるアドミッション・ポリシーを反映した中学入試のあり方を、毎年新たに模索してきました。

そして今年は、後半の入試日を1回減らし、この2月1日の第1回入試の募集定員を増やして、第1志望者が少しでも入りやすくなるような配慮をしています。

多くの受験生と保護者は、こうした同校のアドミッション・ポリシーを理解して、そのうえでチャレンジしてみたいと考え、この芝浦工大附属中に集ってくれたものと思われます。

試験開始直前、さあ、いよいよ入試本番だ!

いよいよ数分後に入試本番を迎える芝浦工大附属中の受験生は、静かに試験開始を待ちます。

中学受験は決してゴールではありませんが、これまでの努力の成果を試す、ひとつの目標としての大切な通過点であり、その先の成長へのスタート地点でもあります。

同校の校訓は、
「敬愛の誠心を深めよう」
「正義につく勇気を養おう」
「自立の精神で貫こう」

そして、その校訓に基づく教育目標は、
1. 科学技術立国たる我が国の発展に寄与するための多彩な資質を育む
2. 批判的精神、論理的思考、説得力ある表現を鍛える
3. 不断に自己成長できる学習習慣と向上心を育てる
4. 心と体を鍛え、世界と社会に貢献する気概を養う
と謳われています。

SGU(スーパーグローバルユニバーシティ―)アソシエイト大学に指定されている系列の芝浦工業大学は、長期ビジョンとして「世界に学び、世界に貢献するグローバル理工学人材の育成」を掲げ、100周年を迎える2027年に「アジア工科系大学のトップ10に入る」という目標を設定しています。

この芝浦工業大学とも足並みを揃えて、世界で活躍できる人間の育成をめざし、法人全体の教育活動とその成果を広く広報してきた同学園の姿勢は、いま求められる「STEAM教育」のあり方を、世の中に発信~認知させる大きな役割を果たしてきたように思えます。

この日の芝浦工大附属中の入試問題にも、きっと、これらの教育目標とビジョンが反映された出題が含まれているに違いありません。同校を好きになり、合格~入学を願ってきた多くの受験生には、これらの思いを受け止めて、しっかりと各自の持てる力を存分に発揮してほしいと思います。

校舎2階のホールで、わが子の健闘を祈りながら待つ保護者

この日の保護者控室としては、1階カフェテリアと2階ホールが設けられていましたが、多くの保護者が、試験開始前の2階ホールで、上映されている芝浦工大附属中高の教育と学校生活の様子を紹介した動画に見入っていました。

わが子の頑張りを信じ、今日まで努力して培ってきた力を十分に発揮できることを願って、試験終了を待つ保護者の姿には、いつの年も、何か言葉にするのは難しい感動を覚えます。

ただ、これほどの人気校になると、合格は決して簡単なことではありません。それでも、わが子がファンになり、入学を願ってきた志望校ならば、そこへのチャレンジを精一杯サポートしてあげようと、受験生と一緒に努力を重ねてきた保護者の気持ちが、この入試前の控室には満ちているように感じます。

この日の入試で合格できれば、こんなに嬉しいことはないでしょう。しかし、空前の“中学受験ブーム”とも言われてきた最近の中学入試は、やはり全体に厳しいものになっています。そこで仮に残念な結果だったとしても、それぞれのお子さんは、今日までの努力の過程できっと大きく逞しく成長してきたはずです。

そして、今日の入試に限らず、この一度きりの中学入試をすべて終えたときには、また次の目標に向けて、前向きな気持ちで、それぞれの進学先で大きく成長してくれることと思います。

毎年、中学受験の世界で言われ続けてきたことですが、「受かった学校が、その子にとっての一流校」という言葉を、もう一度、ここでお伝えできればと思います。