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コラム

「思考コード」&「思考スキル」活用法座談会(1/4)

偏差値5アップをめざす学習方法と考え方を伝授
教育見届け隊ライター:市村幸妙

首都圏模試センターの模試では、これまでの点数や偏差値というモノサシに加えて、新しい学力の基準であり、知識と思考のレベルを可視化した「思考コード」を活用しています。
そして今年2018年の統一合判より「思考スキル」を導入しました。

「思考コード」及び「思考スキル」がどんなものであり、何の意図で取り入れたのか、それは中学受験生にとってどういう意味をもつのかをお知らせします。活用方法や学習の際に何に気をつければ、偏差値アップにつながるのでしょうか。
統括マネージャーの山下 一、国語担当の田村 保、理科担当の加藤 正秀、社会担当の増田 尊行、算数担当の三瓶 勇美。各教科の作問責任者が「思考コード」及び「思考スキル」を使ってめざす方向性と、志望校合格を叶え、思考力、表現力を高める模試の活用術を4パートに分けてお伝えいたします。

中学受験を突破する力をつけるだけでなく、将来を切り拓く力となる「思考コード」と「思考スキル」をぜひお役立てください。

教育見届け隊ライター:市村幸妙

活用法①:「思考コード」と「思考スキル」の重要性(この記事)
活用法②:国語と理科の「思考コード」と「思考スキル」活用術
活用法③:社会と算数の「思考コード」と「思考スキル」活用術
活用法④:算数とその他3教科の「思考スキル」の違いとは

「思考コード」と「思考スキル」をなぜ重視するのか

−−−−これまで首都圏模試センターでは、その問題がどの程度の「知識レベル」と「思考の深さ」が必要なのかがわかる「思考コード」を模擬試験に使用してきました。今年はさらに解答・解説に「思考スキル」を取り入れ、発展を遂げています。なぜ今この「思考コード」と「思考スキル」が必要なのか、その理由を教えてください。

山下 「思考コード」は、最難関模試と公立中高一貫校模試で3年ほど前から概念を取り入れ始めました。
導入に踏み切った大きな理由は、公立中高一貫校で出題される「適性検査」の存在があります。適性検査はその当時、ある意味“まったくわからないもの”として扱われていました。なぜなら、単にどの単元・領域ができたのかを測定するのではない、“新しい評価軸”を用いていたからです。

“新しい評価軸”では、どんな力が求められるのかを明確にするために、当社ではこの「思考コード」を開発しました。

−−−−「思考コード」は、ブルームのタキソノミーを応用して作られていますね。

山下 はい、その通りです。横軸は思考(認知)の次元A・B・C、縦軸は知識の次元1・2・3です。当社ではそれを2軸の掛け合わせで考え、A1〜A3・B1〜B3・C1〜C3という9つの領域に分けて、入試問題や模試での出題を分類しています。
一般的には右側や上にいくほどレベルが上がり、知識の活用力や知識と知識のつながりが理解できているかが求められるため、問題は難しく複雑化する構造となっています。

分類したことにより、入試問題に立ち向かう際に、どの領域やどんな力が必要なのかが明確になりました。
これまでの中学入試で出題されていたのは、主にA1とA2、B1とB2あたりです。しかし、公立中高一貫校の適性検査では、従来よりも求められる領域が広がったことがわかったのです。

難関校では従来のスタンダードな問題に加えて、もう少し高度で複雑なA3やB3の力も必要とされる出題がされます。そのため、合否の決め手になるのはこの領域だといえるでしょう。そこから学校が知識を活用できる力や視点、論理的思考力などをもっていてほしいと望んでいるということが見えてきました。

大学入試改革にも対応する「思考コード」

−−−−現在進められている、大学入試改革(高大接続改革)における「大学入学共通テスト」の概念図をこの「思考コード」に当てはめてみるとぴったりと当てはまります。

山下 この文科省の表も、ブルームのタキソノミーを応用して作られているので、当社の思考コードと同じ構造になっています。

これを見てわかることは、従来のセンター試験はA1とA2からの出題がほとんどでしたが、2020年以降はB3まで広がるということです。各大学の個別選抜でもCの領域まで出題される予定です。早稲田大学では、この個別選抜を「学部試験」と呼んでいます。

中学受験の入試問題では、ある意味先取りした形で変化が起きています。
近年急増している総合型問題や適性検査型問題などの出題形式が、大学入試改革(高大接続改革)のサンプル問題とそっくりなのです。
例えば2018年入試では、開成中学校の国語で適正検査型のような構造の出題がありました。これは大学入試改革と連動して、中学受験でも大きな流れが起きている証といえます。

首都圏模試としては、昨年あたりから本格的に統一合判などすべての模試で「思考コード」を使用しています。今までの成績表では単元別の出来不出来のみに着目していましたが、先にもお話しした通り、それに加え各問題に込められている“必要とされる力”をもう一つの評価軸として、作問・成績の分析に活用することにしました。
「思考コード」を使うことにより、これまでのような単なる得点や偏差値とは異なる、今までは見えなかった力が明確に見えてきたのです。

「思考コード」を導入したことで大きく変わったのは作問方法です。これを設計図として、出題したい領域に基づき意図を持って作問するようになりました。

しかし、それぞれの問題に振られた「思考コード」を見るだけでは、かなり抽象的でわかりづらく感じると思います。そこで、思考コードが指し示す具体的な力を「思考スキル」として具現化しました。例えば同じAの領域の問題でも、1の単なる知識や記憶の呼び出しだけではなく、2から3と変化するに従い使用する「思考スキル」が複雑になります。
さらにいえば、同じ「思考コード」の出題で、例えば比較というスキルでも異なる段階があり、複数の解き方があります。

当社としては各問題に「思考コード」と「思考スキル」を名付け、その問題が求める意図を明確にして、必要な力を組み合わせることで解けるようにしました。

−−−−「思考コード」と「思考スキル」の関係性や表の見方を教えてください。

山下 「思考コード」は縦軸と横軸を掛け合わせたことで、その問題が理解できるという点にその独自性があります。縦軸は1:単純、2:複雑、3:変容とありますが、例えばB2の問題というのは「複雑な応用問題」、あるいは「複雑な論理的思考の問題」となります。
その複雑な論理的思考の問題を解くためには、例えば比較分類といった「思考スキル」が必要と捉えていただければよいかと思います。

これまでは解けない問題があったら解説を見て、解法を真似して身につけていく学習方法だった受験生もいることでしょう。
しかし「思考スキル」があることで受験生は求められる力が明確になるので、自分にはどんな力が必要で何が足りないのかが浮き彫りになるのです。

−−−−入試本番では限られた時間の中で問題を解きます。模試でも「思考スキル」を意識して問題を読み解いていくことは、問題への理解を深め本番に備える力がつけられますか。

山下 問題を解く際の「思考コード」と「思考スキル」の掛け合わせというのは、例えば体を鍛えたい場合をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。腹筋や兎跳びなどを闇雲に行うのではなく、鍛えたい箇所に的確に効くトレーニングを行うようなものです。
ですから、問題で何が求められているのかを理解することで、求められる力を適切に使えるようになることを意味します。

首都圏模試独自の「思考スキル」をもっと整理して明確に提示できるようにしなければと思っています。一つひとつの「思考スキル」については、まだ完成型ではなく我々も試行錯誤でやっている部分があり、途中段階だと考えていただけるとありがたいです。この1年ほどでしっかり完成させていきます。

受験生が「解答・解説」をパッと見ただけで、自分はどういう力を使って問題を解けばいいのかを理解できるように取り組んで参ります。

これからの子どもたちは、考えることが中心となる“新しい学び”が求められています。「思考コード」と「思考スキル」を使い学習することは、創造的な学びへの第一歩となるはずです。

「思考コード」についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

以下は、4月の統一合判の時の出題を例に、「思考コード」と「思考スキル」の活用方法を見ていきましょう。

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