コラム

「思考コード」&「思考スキル」活用法座談会(3/4)

偏差値5アップをめざす学習方法と考え方を伝授
教育見届け隊ライター:市村幸妙

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社会の「思考コード」と「思考スキル」活用術

増田 2017年度まではほとんどの問題がA1・A2で、Bの出題は2〜3問程度でした。
今年度から意図的にBを増やして作問しています。そのためか4月の模試では、全体の平均点が36点ととても低くなってしまいました。

−−−−社会の出題はA1・A2が31問、B1・B2が13問と多く出されました。Bの問題が増えたことで難度が上がりましたが、数を増やした理由を教えてください。

増田 社会でも公立中高一貫校の適性検査にある程度対応できる考え方ができればと出題しました。

山下 現在、中学受験全体の出題が縦に難しくなるというよりも、AからBに、BからCにはみ出すように横へシフトしてきています。ここから見えるのは、知識を覚えるだけではなく活用させようという動きであり、それを象徴しているのがまさに適性検査型の出題です。こうした全体の流れに当社では対応しています。

−−−−注目の問題とその理由を教えてください。

増田 2016年の日本の人口ピラミッドを題材とした記述問題で、正答率は29.2%でした。
人口ピラミッドは社会を勉強するなかで、基本的に目にしていると思います。前提条件として、日本は女性のほうが平均寿命が長いという知識をもっていなければなりません。その上でAとBを比較して、高齢者の層が多いこと、明らかに高齢者の層が太いBが女性であると判断してもらいます。
この問題の「思考コード」はB2。女性のほうが平均寿命が長いという知識の記憶である想起、AとBのグラフの比較・対照、最後に理由・根拠を元に記述するという、3つの「思考スキル」を使用します。

山下 この出題方法が正答率の低さにつながったのだと思います。単に選択肢を文章で示す、資料を読み取り考えて選択するといった場合は、精神的なハードルが下がりもっと簡単に解けるでしょう。

増田 知識としては基本的な出題だと思いますが、小学生にとって頭の中で考えたことを伝わる文章でアウトプットするのは難しかったのでしょう。理由を「文章で答えなさい」と言われると、何を書いていいのかわからなくなり、臆してしまう子どもが多いのだと思います。

三瓶 9月頃なら正答率はもっと上がったのではないかと思います。4月の段階であれば、例えば減少人口である14歳未満、生産年齢人口の65歳、老齢人口など3段階に分けて線を引くなど、このグラフ自体にもっと情報を加えることで見るポイントを絞れたのではないかと思います。
受験生はまだこの時期、情報を読み取る力が十分ではないと考えられます。そうしたところで工夫してもよかったかもしれません。

山下 自分でそれに気付いて線を引けるかということも、この出題意図になります。問題の難度が上がる過程でこうした考え方をできるかが、スキルとして試されていくことになります。

増田 社会の勉強というと、年号を覚えたり、どんなグラフなのかを見て考えたり、基本的には覚えることから始めているでしょう。
これは学習を積み重ねることで理由が説明できるようになる問題なので、三瓶さんの言う通り、この段階ではそこまで進んでいなかったのではと感じます。
結果論ですが、問題文に右側が女性であることを記し、想起をなくすなど出題方法を変えて、資料を見ただけで考えられる問題にしたほうがよかったのではと反省しました。

−−−−とある受験生に「グラフのどこに注目するのか」を聞いたところ、「どんなグラフかという説明の太字の部分」と言うのです。縦軸や横軸がもつ意味は考えないの?と話すと驚いており、衝撃的でした。そういう取り組み方をしてしまっているという現実もあるようです。
こういう問題が解けるようになるには、どうしたらいいのでしょうか?

増田 日頃から図やグラフが出てきたら縦軸・横軸の意味を考え、自分の知識と結びつける習慣を付けることです。問題をよく読んで、頭の中ででもいいので説明してみる練習をしていただけたらと思います。

社会は統一合判の模試だけで考えると、ほぼ知識を問う出題です。使用する「思考スキル」は、想起比較・対照変換理由・根拠カテゴライズの5種類ほど。上記でも触れましたが、学校の出題傾向と同様に、今後はもう少し想起を入れないことによって、他のスキルが使える方向に進んでいけたらと考えています。

山下 中学入試問題ではまだまだ知識問題が多く出題されていますが、知らないことが出てくるとそこで止まってしまう子どもが依然としています。しかし、難関・中堅校を中心に、知識よりも、その問題に向きあえば解ける思考力問題が増えてきておりますので、知識がなくても問題を見て考えることができるような問題に徐々にシフトしていけたらと思います。

先ほどもお話しした通り、中学受験の出題はBの領域に進み始めています。学習者はこれまで以上にそのものの意味や自分で考える習慣を身につけていくことが重要となってくるでしょう。社会は知識科目なので、なかなか難しいところもありますが、Bが明らかに増えてくるので、バランスも考えなければなりませんが、様々なチャレンジをしていきたいですね。

この「思考コード」や「思考スキル」を使うことで、振り返りの時により強力にお子さんの学習を促進したり、サポートできるようになるでしょう。
同時に我々も中学受験に役立てていただけるような、適正で精度の高い問題作りを推進していけるのではないかと考えています。

算数の「思考コード」と「思考スキル」活用術

−−−−算数もA16問に対してBが14問と、Bが多く出題されています。

三瓶 4月の模試から「思考スキル」という考え方を導入したので、「思考コード」をベースに問題を作るという新たな挑戦をしてみました。正答率が30パーセントを切っており、多くの受験生にとっては初見の問題となったのではないかと思います。

山下 模試の場合、得点による偏差値を提示する必要があります。科目間の平均点のバランスがくずれると、得意科目の平均点だけ他の教科より低かった場合、偏差値が伸びにくくなってしまいます。出題内容を精査しながらも、その課題にしっかりと対応していきます。

三瓶 列車が通過する問題です。受験算数でよく知られている「通過算」という速さの単元です。現6年生では、この回で初めて出題しました。知識をきちんと獲得できているのか確認したいため、一行題ではなくグラフの形で出題しました。

(1)の「思考コード」はB1、「思考スキル」は情報を獲得する、再現するです。
(2)と(3)はいずれも「思考コード」はB2、「思考スキル」は情報を獲得する順序立てて変化を捉える特定の状況を仮定するです。

グラフの読み取りを通じて、列車の長さ、トンネルの長さの関係を捉える必要があります。
(1)はグラフを正しく読み取れるかどうか、(2)と(3)は列車がトンネルより短い場合と長い場合、2通りの状況が考えられることに気づけるかどうかがポイントです。

習って間もないということもあって、次のような点に「通過算」を難しいと感じる受験生が多いと思います。①1つ、または複数の物が動くこと、②「列車」という幅をもった物が動くこと、③「列車」という動く物と「トンネル」という動かない物の関係を捉えること。

たとえば「時速○Kmで走る長さ□mの列車が、長さ△mのトンネルを通過します。この列車の先頭がトンネルに入ってから通過しきるまでに何秒かかりますか」といった、よく問題集などで見るような一行題の形で出せば、もっと正答率は上がったかもしれません。

今回は、典型題を少し別の角度から出題したいという意図があったので、グラフの形で出題しました。

−−−−別の角度から出題する意味はどこにありますか?

三瓶 受験生が初見の問題に対して、どれだけ立ち向かっていけるのか、今持っている自分の思考力をどれだけ活用できているかを知りたいと思ったためです。

−−−−よく読んで丁寧に積み上げて解くのではなく、もしかしたらひらめきでパッと解いている受験生がいる可能性はありませんか。

三瓶 この問題に関しては、それは可能かもしれません。ただし、「長い列車」「短い列車」のそれぞれがトンネルを通過する場合の、それぞれの変化前と変化後の状況をきちんと捉える必要があります。絵を描いてみたり、イメージができたりすれば、かなり取り組みやすくなります。算数は図やグラフ、表などに対して、抽象的なものをよりわかりやすく具体的な形にすることが大切だと思います。

−−−−問題に向かう際に再構成すること、読み取って具現化することが大切ということですが、図やグラフなどを見る際、どんなトレーニングを重ねれば解けるようになりますか?

三瓶 情報を獲得し、具現化することは、算数を解く上でとても大切な力になると思います。基本的に問題に取り組むときにすることは「読む」、「考える」、「答える」の3つです。しかし、「読む」「考える」とはいっても何をすればよいかわからない場合もあると思います。そこで「思考スキル」を使うことで考えるための方針を立てたり、道筋の見当をつけたりすることができます。

状況を読み取るとき、どこに着目すればいいのか、読み取ったものをどう使えばいいのか、考えるときにも抽象的なものを具体的に図にするのか、線分図で表すのか、式にするのか・・・そういった具体的な取り組みが思考スキルによってハッキリすると思います。

−−−−今までは公式を覚えて当てはめればよかったことですが、その考えはチャレンジングですね。

三瓶 公式を覚えるなど、これまでの学習法はもちろん必要です。しかし、単に覚えただけでは状況や問われ方が変わったときに対応できなくなります。このとき「スキル」という形で保持していれば、環境が変わったときもそれを活用して、道を切り開くことができるのではないでしょうか。

パターンの積み重ねでは通用しない問題や、多くの受験生にとって初見となるような出題も増えてきています。そのとき、あきらめずにチャレンジすることが大切です。

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