コラム

「思考コード」&「思考スキル」活用法座談会(2/4)

偏差値5アップをめざす学習方法と考え方を伝授
教育見届け隊ライター:市村幸妙

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国語の「思考コード」と「思考スキル」活用術

−−−−国語は、記述問題の得手不得手が合否を分ける一方で、例えば漢字は学習を進めていくと得点差がつきにくくなる科目です。国語を解く際に肝となる「思考コード」と攻略するために必要な「思考スキル」を教えてください。

田村 4月の模試ということもあり、いきなり記述では受験生の心のハードルが上がってしまうので書き抜きに近い形にしています。

『短編小説を読もう』(阿刀田高 著)を題材にしました。芥川龍之介の鋭利な風貌から想像できる期待に対して、作者が失望した理由を書かせるという記述問題です。この問題は31.5%と低い正答率でした。

「思考コード」はB2、「思考スキル」は理由筋道です。
答えはほぼ文中に書かれているので、いちばん求められているのはそれをまとめる力です。実際の入試問題でも説明文における解答は、ほとんどの学校でおおかた本文中に記されています。

論理的にどうまとめて記述するのかという力は筋道として捉えており、この問題でいちばん求められている部分です。
失望した理由は「芥川はもっとすごい作品を書くと思っていたが、実際にはありふれた一般的な作品だった」という内容が書ければ正解です。
文中にそのまま記されているわけではありませんが、国語の場合は背景から推論する力が必要となります。

そういう意味で考えると、国語は“推論力”が非常に求められる教科だといえます。例えば「主人公の行動からその性格を六十字以内で答えなさい」といったような出題では、文章の内容を手がかりとして、受験生自身のこれまでの経験から、その主人公の性格を推察していくしかありません。

さらに国語は教科の性質上、比較の「思考スキル」を極めて多く使うということが今回わかってきました。例えば物語文の場合は心情の変化があった前後、環境問題について書かれている説明文なら環境の良い国と悪い国など、国語の長文読解の設問はほぼこの形式であり、問題として作りやすいという性質もあります。

上記の問題の場合、もしも文章中に手がかりがあまり書いていない時には【期待と失望】を比較する力が必要となります。理由筋道比較などの3つ以上の「思考スキル」を使う問題は、より正答率が下がります。そのため、徐々に出題数を増やしていきたいと考えています。

物語文では置換も頻出する「思考スキル」です。置換には、3通りの意味合いがあります。

1つめは単純にイコールの関係で結ばれた言葉を置き換える問題があります。具体的に置き換える問題では、例えば“手を上げて横断歩道を渡る”といった主人公の行動が書かれていて「文中の言葉3文字で性格をどう表現しますか?」という問題の場合、その主人公は“真面目”な性格なのだなと考えます。このように小さな具体から大きな抽象への置換が2つめです。
3つめはその逆パターンです。「主人公は真面目な性格ですが、その行動を◯◯文字で書き抜きなさい」という場合には、文章中の具体例を挙げます。
このように見てみると、国語は置換というスキルを使うケースが多いことがわかります。

−−−−比較置換という「思考スキル」を身につけることが、国語の対策として有効ということでしょうか。

田村 はい。物事を比較できる力や置き換えられる力が強い子どもは、国語が得意な場合が多いのではないでしょうか。
このように教科によって多用する「思考スキル」があります。その力の有無が各教科の得意・不得意を左右するのではないでしょうか。

これは全教科共通で言えることなのですが、「思考コード」は例えばA1からA2、A3と数字が上がるにつれて、難度が高くなる印象があると思います。
しかし例えば、漢字の書き取りはA1に位置しますが、その漢字によって難易度・正答率が変化します。そのあたりは勘違いされないようお気をつけいただきたいと思います。

山下 BとCはどちらかといえば推論型ですが、Aは記憶したものがいかに自動的に取り出せるかです。その受験生がどの漢字を自動化できているのか次第で難易度が異なるということです。

理科の「思考コード」と「思考スキル」活用術

−−−−理科の4月の統一合判の理科ではA1とA2 、B1とB2の「思考コード」を使用する出題でした。

加藤 Aの【知識・理解思考】に当てはまる一つの基準は、参考書に載っている暗記事項をそのまま出題するイメージです。例えば「この星の名前はなんですか?」などです。
それに対してBの【論理的思考】は、具体的な数値や実験などをもとにして、その内容について考えたり書く出題になります。
もちろんBの中にAが混在することもあるので、そのように単純に分類できない問題もあります。

例として出したのは、「気体の性質」を実験から考える問題です。「思考コード」はB1、「思考スキル」は抽出根拠です。正答率は35%程度でした。実験に関する問題は、多くがこの「思考スキル」になるかもしれません。大抵の場合、問題文から必要な部分を抽出して、それに根拠をあわせて解答するという流れになります。
厳密に言えば比較の概念も含まれていますが、この問題で使う「思考スキル」は、大きくは上の2つです。

まず二酸化炭素はろうそくの火を消す性質があるという知識の上に、短いろうそくから順に消えたという要素を抽出して、二酸化炭素はビーカーの底から溜まるのだろうという部分を根拠として答えを導き出します。

三瓶 問題を見て気になったのは、情報量の少なさです。例えば、ビーカーに二酸化炭素を入れた後、最初に短いろうそくが消え、次に真ん中のろうそくが○秒後に消え、最後に残ったろうそくが□秒後に消え・・・、といった形をグラフで示すこともできたと思います。二酸化炭素を入れてからの時間の経過とろうそくの火が消えるまでの時間の関係を、グラフで視覚化にしておくことで受験生はもっとイメージしやすかったのではないでしょうか。

加藤 確かに今のままだとわかりづらいので、グラフを入れることで二酸化炭素が底からだんだん溜まったというイメージは伝わりやすくなります。そのさじ加減で難易度が変わる問題だと思います。

この問題をB1としたのは「二酸化炭素の性質を答えなさい」とかなり具体的に指示をしているためです。これをB2の問題に発展させる場合には「この実験でわかったことを答えなさい」とすると、「複雑な論理的思考」の要素が必要となります。

−−−−もしも、その問題をB2に発展させた場合には、「思考スキル」は何になりますか?

加藤 その場合、知識比較構成などでしょうか。気体に対する様々な知識や、各気体の性質の比較ができていないと具体的に構成できません。何文字かで書かせるような出題の場合は表現という「思考スキル」も必要になります。

山下 B2にすると気体ごとの性質の違いがわからなければ答えられません。A2やA3あたりの知識を使って取り組むことになるので、難度が高くなります。

加藤 抽出する「思考スキル」は知識をつなげただけでは難しいので、グラフなどで視覚化されていればイメージやすくなります。5年生のうちは実験などで日頃から実体験を積むことが大事ですし、6年生はせめて図表や資料集などを見てイメージを結びつけておくと入試に役立つのではないでしょうか。

また、この問題では解答を箇条書きで書かせています。「記号を選べ」ではなく、「書け」という言葉が出てくるだけで、正答率がガクンと下がってしまいます。一文でも書くとなると取り組みにくくなってしまうのでしょう。

−−−−こうした記述問題が解ければ、偏差値アップは望めるでしょうか。書けるようになるためにはどんな対策が考えられますか?

加藤 まずは穴埋めから始めて、徐々に一文から書けるよう段階的に誘導していくことです。「記述」というだけで問題を放棄してしまう受験生もいますが、「書くこと」は全教科共通で必須のスキルです。

山下 このような問題の場合には、二酸化炭素が流れ込むイメージをしてみることも大切です。抽出の中でも、Bの論理的なものではなく、体験して実感するAやイマジネーションを働かせるCのようなトレーニングも大切なのかもしれません。

加藤 私たちが思っている以上に本や文章だけでは実際に起こっている現象を具体的にイメージできないという子どもがいます。そのため、やったことがある実験の問題は解けるけれど、そうでない問題には手が出ないように見受けられます。文章から具体的な現実の動きに結びつけるために、実験動画を見るなどの学習を進めることも重要です。

理科はやはり自然現象と結びついてくる教科です。最近は外遊びをする機会が減っている子どもも多いと思いますが、本を読むだけではなく、自然に触れたり、体験したりすることが大切ということが今回の分析の結果から見えてきました。