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コラム

「思考コード」&「思考スキル」活用法座談会(4/4)

偏差値5アップをめざす学習方法と考え方を伝授
教育見届け隊ライター:市村幸妙

各パートリンク    ④

算数とその他3教科の「思考スキル」の違いとは

−−−−ところで基本的に「思考スキル」の名称は、3教科では【名詞】で表していますが、算数は【動詞】で表現されています。その理由と首都圏模試としての意図を教えてください。

山下 「思考スキル」の名付けに関しては、解答者の視点にも立っています。実は3教科の「思考スキル」は、いかようにも組み合わせられるものです。記載の順番はどれが最初でもよく、組み合わせによってはあるスキルは使わずに解くことも可能で、例え一般とは異なる発想をする受験生にも対応できるものです。もしかしたら「思考スキル」を使うことで、我々が考え及ばなかったようなすごい解き方をする子が出てくる可能性があります。そうした意味で3教科の「思考スキル」は自由といえます。

しかし算数の場合の「思考スキル」は、解答までの手順や進行方法に重点を置いています。そのために算数の「思考スキル」は動詞表現で、丁寧に解説されているのです。
解答へとたどり着くためには、正しく情報を読み取り、読み取ったことを具現化することが必要です。動詞表現により、具体的な動きをイメージできるように意図しています。

「思考スキル」を思い浮かべながら問題に向き合うことで、文章や図の情報を捉えやすくなったり、適切な方針立てで考え進めることができるようになるといえます

国語・理科・社会では、与えられる情報が豊富で動的です。たくさんの情報を理解するためには、名付けをして抽象化しますが、その抽象したものが多いために余計に混乱をきたしてしまう可能性があります。そのため、一度まとめるという視点に立たなければ解くことができません。この“自由さ”と“丁寧さ”というのは、非常に大切な視点だと思います。

こうして見てみると、具体【動詞】と抽象【名詞】の両方を使い分けられる子どもは、問題に取り組む上で非常に有利だと感じます。
適性検査型の出題では、算数型と国語型があるため、それぞれの「思考スキル」を使い分ける必要があります。両方のスキルをもっていることで、各スキルを意識することで使えるようになるでしょう。適性検査型を解く上で驚嘆するのは、具体と抽象のどちらの「思考スキル」を使うのかということは、子ども自身にかかっているということです。

−−−−実は国語で筋道(を立てる)という、動的な「思考スキル」が物語のときに出ています。

田村 物語の場合は、気持ちなどを問われるため情報が書かれていないので、動的なスキルが必要になります。一方で説明文に入る情報は必要最低限です。そう考えると、国語の「思考スキル」であっても、算数的な具体表現にしたほうがわかりやすい受験生もいる可能性があります。

山下 「思考スキル」は、具体と抽象の両方があるほうがわかりやすいと感じる受験生がいるかもしれません。ですから、他の3教科でも動的な表現も含めた提示も視野に入れたいと思います。

−−−−双方が示されるということは、自分が使いやすい「思考スキル」だけを選ぶことはできないのでしょうか?

山下 例えば文章を書くときのことを考えてみましょう。テーマやトピックに対して、比較ができる情報を入れる際には比較という「思考スキル」を使います。また必ず根拠も入れ、文章を補完していくことが必要です。
さらに、強調するために同じような表現をするのではなく置換を入れたり、みんながわかりやすいように具体化したり、関連する例えをエッセンスとして使うこともあるでしょう。結論は抽象的ではなく理由をはっきりと述べることが大切です。

自分が好きな「思考スキル」のみだと、具体的でとてもおもしろいけれど文章としては稚拙になってしまったり、逆に抽象的なものばかりが好きな場合には、非常にレベルが高そうだけれど、まったく意味がわからなかったりということに陥りがちです。
ですから、使用する比率はそれぞれであっても複数の「思考スキル」を使うほうが文章として理想的になります。
このことがわかっている受験生は、開成などの問題もスッと解いてしまいます。

算数で使用する「思考スキル」も同様で、具体として再現する際に示されたスキルへの好き嫌いや得手不得手があると、解けない問題が出てしまいます。アクション系のスキルか、名詞系のスキルを選択するかというのは、子どもによって違うかもしれません。

ですからこの「思考スキル」という考え方を身につけておくことで、問題と向き合った時に見方や意識が変わります。例えば上記のように書く時、スキルを使うことで表現力は格段に上がるでしょう。

−−−−これからの子どもたちにとって、「思考スキル」との付き合い方はどうなるのでしょうか。

山下 上記の文章を書くときのスキルはあくまで一例ですが、「思考スキル」は中学受験の勉強に役立つだけではなく、高校・大学や社会人になってからも必要な力です。
ある意味、人工知能はこうしたものの集合体であるといえます。AIが勝手に考えるわけではなく、その力を意識したプログラムに、人間が持っている表現力や理論的思考力などのクリティカルな部分を付け加えるということが行われています。

今後の大学入試も含めて、特に中学受験の場合、適性検査型などの新しいタイプの入試は構造に対する理解が進み、その問題で求められるものを自分で表現できるようになります。
最難関校など、これまでではレベルが届かなかった子どもでも、その学校の解けなかった問題が“単に解けない”ということではなく、問題が解くための“知識が足りなかった”のか、それとも“スキルが欠けていたのか”という分析ができます。

そのように考えてみると、勉強の仕方にも変化が生まれるでしょう。
今まではとにかく膨大な問題量をこなして、その問題が解けるようにしていた学習方法は「思考スキル」を使うことにより最小限で行えますし、知識も精査されていくかもしれません。

子どもたちの将来について目を転じれば、AIの発展は凄まじく人間の能力をあっという間に超えていきます。そのため、人間に必要とされているのは、クリエイティビティです。よりC軸の問題、新タイプ型の入試はますます増えていくはずです。
それらが統一合判の分析によって、時代を読み解くこともできるようになるでしょう。

なお、こうした「思考コード」や「思考スキル」は18歳までにC軸の「創造的思考」まで取り組んでおかなければ、大学進学後や社会人になってからでは、数パーセントしか身につかないといわれています。

−−−−上記の話は統一合判についてですが、難関校の出題と通常の統一合判では、求められる力の違いはありますか?

山下 難関校の問題はまた独自で、ここでお話ししたものとはまったく違う力が求められます。
社会であれば、知識と知識のつながりや1つの知識から非常に深い思考力や表現力が試される学校もあります。

増田 社会では歴史・地理・公民という枠はありません。統一合判はある程度、歴史は歴史、公民と分けて出題していますが、難関校の場合は1つの題材文から歴史が出題されたり、地理が出てきたりします。それが最も大きな違いでしょうか。

山下 知識のネットワークをもっと横断的に広げる必要があり、難関校への対策時にこそ、この「思考スキル」がより試されるような気がしています。
学習量だけでは測れない、1つや2つではなくすべてのスキルに対応したり、個々のスキルを統合したりする力が必要になるかもしれません。

加藤 理科では、一見突飛に見える形で出題されています。しかし基本的には統一合判で出していることの発展であると思っています。先ほどの自然現象や身の回りとのつながりという観点を基本的な知識として落とし込めた受験生が対応できたのではないでしょうか。

−−−−「オーセンティックな学習」という考え方があります。「真正の学習」とされ、知識が現実の社会や現象、効果などと結びつく実践的な学びのことです。きちんとした知識をもって総合的に判断できるような思考力を身につけさせるというものです。難関校の入試では特にそこまで問われてきているということでしょうか。

三瓶 コツコツと取り組む経験を通して知識を獲得したり、自分で調べて規則的なパターンを見つけて一般化したり、活用したり・・・など、様々な力が試されます。もちろん、知識は必要ですが、たくさん覚えても対応し切れない場面があるということです。

−−−−昨年の最難関模試の社会で、まさに難関校対策になるような出題がありました。

増田 題材文で参議院選挙の開票方法を解説して、実際にドント式を使って政党ごとの当選人数を読み取り、計算して求める問題を出しました。社会にしては計算させる問題でもありましたが、例えば票数と当選人数に偏りが出た場合、どうしてこうなったのかを考えさせました。結局はタレント候補に票が集まったことを答えさせたいためのものでしたが、法則を作りなぜこうなったのかという、アクティブな思考が必要な問題を出しました。

山下 一般化すること、法則を考えること、そして自分の意見を書くことという、最難関校で本当に出題されるような問題だといえます。
入試問題では学校ごとに求められるスキルや力がまったく異なるので、例えばこの学校に受かるためには、必要なスキルを身につける勉強をすればいいということになります。
今後の話になりますが、当社の成績表はそこまでを示せるようにしていきます。

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次回の座談会では、最難関校の入試問題を克服するための「思考コード」と「思考スキル」による学習戦略についてお話ししたいと思います。