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コラム

中学受験本番を迎える親御さんへ。「縁起でもないこと」を想定しておくのも親の大切な役割

教育ジャーナリスト おおたとしまさ

もし、不合格を知ったとき、親がショックをそのまま表現してしまうと、子供は自分のショックと親のショックの両方を受け止めなければいけなくなってしまいます。そうは言っても、いざつらい現実に直面したとき、親としてどうリアクションするべきなのかは、理屈で考えても「正解」のわからない問題です。すべての中学受験生とそのご家族が笑顔で中学受験を終えるために、ぜひ、ご一読ください。

いよいよ中学受験本番シーズン突入。満を持して本番を待つご家庭は少ないでしょう。みんな焦ってます。みんな不安です。でもどこかで、「早く終わってほしい」とも、みんな思っている。

結果が「第一志望合格」なら言うことありません。でも、第一志望に合格できる子は確率的にいって3人に1人。つまり、3人に2人はほろ苦い思いをする。合格確実といわれていた子でも、思い通りの結果が出ないことがあるのが中学受験です。

ある私立中学の校長は、「毎年合格発表のあの場にいるときは本当に忍びない。合格して飛び跳ねて喜んでくれる親子がいる傍らで、呆然と立ち尽くす子供たちもいるんです」と声を詰まらせます。

また別のある教員は「番号がなくて、お母さんがハンドバッグをストンと地面に落として立ちすくんでしまいました。それを傍らで見ている息子さんが、申し訳なさそうに苦笑いしているんです。本人はもっとつらいだろうに……。その現実から逃れたくないから、私は毎年、最後の1人が学校を後にするまで、必ず合格発表の場にいることにしています」と教えてくれました。

昨今はインターネットでの合格発表が主流なので、自宅のリビングで、パソコンの画面で確認ということのほうが多いとは思います。便利だとは思います。でも一方で怖いのは、「不合格」の現実を前に立ちすくみ、涙をのむ親子がいるという現実に、学校が鈍感になってしまうことです。

応募者が増えて倍率が上がったことを誇らしげに発表する学校もありますが、倍率が上がったということは、それだけ涙をのむ受験生を増やしたということでもあります。私はそれを素直には喜べません。

さて、掲示板での合否発表にせよ、インターネットでの合否発表にせよ、もし、不合格を知ったとき、親がショックをそのまま表現してしまうと、子供は自分のショックと親のショックの両方を受け止めなければいけなくなってしまいます。子供のショックを倍増することは、親として絶対に避けなければなりません。

仮に不本意な結果に終わったとしても、正々堂々と現実を受け入れ、それでも腐らずにこれからの6年間に向けて新しい一歩を踏み出せるかどうかは、合格発表直後の親のリアクションにかかっているといっても過言ではありません。

縁起でもないですが、「合格確実」といわれているお子さんの親御さんほど、「万が一」のときにどうリアクションするかを考えておかなければいけません。とっさにはリアクションをコントロールできませんから。備えあれば憂いなしです。

そうは言っても、いざつらい現実に直面したとき、親としてどうリアクションするべきなのかは、理屈で考えても「正解」のわからない問題です。それこそ親子の数だけ方法がある。そこで、1つだけコツを書いておこうと思います。

すべての中学受験が終わって、笑顔になっている家族の姿を思い浮かべてみてください。そのとき、家族が笑顔になっている理由は何ですか?

第一志望合格なら、笑顔になれるのは当然です。でも笑顔になれるのは、第一志望合格のときだけではないはずです。

最初はいやいややっていた勉強を最後は自分から必死にやるようになったこと、親子で何度も喧嘩しながらそれでも絆を強く感じられたこと、そして、長い中学受験生活を家族みんなで力を合わせて最後までやりきったこと……。

決して楽ではなかった中学受験生活のなかで、たくさんの「宝物」を得ていることに気付くはずです。そのことを思うだけでも、ちょっぴり笑顔になれるはずです。

そのうえで、最後の最後で、子供にかけてあげたい言葉は何ですか?

それを考えてみてください。もしかしたら、言葉すら要らないかもしれませんね。そうすれば子供は、どんな結果であれ、中学受験を成功体験としてしめくくることができます。

どんな形であれ、まだ12歳の子供たちは、ママとパパの笑顔が見たいんです。ママとパパが最後に笑顔になってくれるなら、どんな形であれ、子供たちはほっとして、笑顔になれるんです。縁起でもありませんが、自分の胸がいっぱいいっぱいになってしまうような事態になったとしても、そのことだけは、決して忘れないでください。

すべての中学受験生とその親御さんたちへ。

必笑!