受験生マイページ ログイン
コラム

集中力をとぎれさせないための「食べる処方箋」

オーソモレキュラー .jp認定栄養カウンセラー・栄養士 吉川圭美

毎日がんばるお子さんへ食事でサポートしませんか?
難しく考えなくても、日々の栄養バランスに少し気をつけるだけで、見違えるほど変わります。
お子さんだけでなく、ご家族皆様の美容と健康にもうれしい情報を、栄養士である筆者がわかりやすく伝授いたします。

 

日ごとに春が近づきつつある今日このごろ。そろそろ子どもたちの本格的な塾通いが始まるころでしょうか。

学校選びのこと、偏差値のことなど、親にとっても子どもの受験は気がかりなことが多いもの。なかでも子どもの集中力がないことが気になっている親は多いのではないでしょうか。机に向かっていると思ったらマンガを読み始めたり、イタズラ書きをし出したり……。さらには勉強もやる気がない、塾もいやいや行っている、となると、頭を抱えたくなってしまいますよね。

こうした原因には、まわりを取り巻く環境やストレスなど様々なことが考えられますが、意外にも見落としがちなのが「食事」。日ごろの栄養が深く関係していることもあるのです。

集中力は栄養で作られる

 心と食事は深いつながりがある、というと意外に思うかもしれません。そこで集中力がどんな風に栄養とかかわっているのか、ひも解いてみましょう。

わたしたちの脳の神経細胞は140億もの数があるといわれており、お互いに様々な情報を伝え合っています。その時に使われるのが、神経細胞が作り出す、「神経伝達物質」と呼ばれるもの。この物質を受け渡し合うことで、細胞同士は様々な情報を伝え合うしくみとなっています。いわば、 “こころのタネ”というべきものです。

その種類は様々です。例えば、元気さやワクワクした気持ちを生み出すドーパミン、やる気スイッチを押してくれるノルアドレナリン。これらは心を興奮させる、いわばアクセル的存在の物質です。逆に落ち着いた心を生み出すブレーキ役がGABA 。そして、両極端に傾かないよう、調整をとってくれるのが、セロトニン。不安な気持ちを和らげてくれます。

アクセル役、ブレーキ役、調整役の三者がバランスよく存在することで、穏やかで落ち着いたメンタル、スッと物事に取り組むことができる集中力を作り出すことができるというわけです。これらの物質は何から作られるのか、それは普段私たちが口にしている食べ物、つまり栄養です。

“こころのタネ”の材料のメインはタンパク質。食事で食べたタンパク質はこなごなに分解されて腸から吸収され、血液をとおって脳まで届きます。このときビタミンB群や鉄、ビタミンC、マグネシウムといった栄養素の助けを借りています。

これらの栄養素が足りないと、“こころのタネ”となる物質をうまくつくることができずに心のバランスが崩れやすくなります。すると、落ち込みやすくなったり、攻撃的になったり、難しい問題をすぐに投げ出してしまったりすることが起こりやすくなります。

“こころのタネ”作りに不足しがちな3つの栄養

なかでも非常に重要でありながら、不足しがちな栄養素が3つあります。

一つ目が先ほど挙げたタンパク質。大人は体重1kg当たり1gの量を取るのが基本ですが、成長期の子どもは1kg当たり2gの量は取りたいところです。例えば、体重35kgの子どもなら70gのタンパク質が必要という計算。肉100gのタンパク量が20g前後ということを考えると、毎食よほど意識しないと摂取しにくい栄養素でもあります。

次に鉄。赤血球の材料になるほか、骨や肌を作るのにも不可欠。体が大きくなるということは、それだけ鉄が必要になることを意味します。生理が始まった女の子ならなおさらでしょう。いつもイライラしている、気が散っている、朝なかなか起きて来ない、といった場合は要注意。また野球やサッカーなど運動を続けている子どもも鉄が不足しやすい傾向にあります。

最後にビタミンB群。“こころのタネ”となる物質作りに使われるほか、エネルギー作りにも関わっている、大忙しの栄養素です。しかしながら、ストレスが多い生活をしていたり、ご飯やパン中心の食事を続けていると、消費が激しくなってしまうため、不足しがちになってしまうのです。

レバーや卵を食卓へ。おかずしっかり、ごはん控えめに

ではなにを食卓に出したら良いのでしょう? 私のおすすめはレバー。鉄とタンパク質、さらには多くのビタミン、ミネラルを含む食材です。調理が面倒なら、惣菜コーナーにある焼き鳥を食卓に並べてもいいかもしれません。またコンビニでもレバニラなど、レバーを使ったおかずが並んでいるのでチェックしてみては。

卵も鉄とタンパク質を兼ね備えた優秀な食材です。調理のレパートリーが広いのも魅力。たっぷりと食べさせてあげてくださいね。卵かけご飯にしたり、納豆を食べるときに生卵を落としたり、かきたま汁にしたり、煮物を卵とじにしたりとバリエーションも豊富です。冷蔵庫にゆで卵を常備し、おやつ代わりにするのもおすすめです。

 そして最後に、ご飯の量は控えめがベター。ご飯の量が多くなると血糖値がジェットコースターのように乱高下し、その影響から眠気を感じやすくなることもあるので、シャッキリした状態をキープしたいなら、おかずしっかりの食事がおすすめです。

体はもちろん、心を作っているのも普段の食事。子どもの挑戦を、食卓から応援するのも素敵ですね。

吉川圭美 [オーソモレキュラー栄養カウンセラー・栄養士]

栄養士資格を取得後、健康・食にまつわる編集者・ライターとして活動。200人以上のドクターや健康法の提唱者にインタビューを行う。その際出会ったオーソモレキュラー栄養医学に魅了され、ひとりでも多くの人に伝えたいと資格を取得。現在は保育園にてオーソモレキュラー理論を応用した給食にたずさわるほか、クリニックにて栄養カウンセリングを担当。一人ひとりの不調と向き合い、身体に合った食べ方を提案している。記事執筆や監修、レシピ提案なども行う。

MYLOHAS連載「ポジティブ栄養学」http://www.mylohas.net/2016/11/058248nutrition.html