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コラム

女子バスケ奥山理々嘉選手。「学校から世界へ」インタビュー③

~高校生活~(3/4)

「学校から世界へ」第2回アスリートは、昨年末に行われたウインターカップで、女子の1試合最多得点記録となる62得点をあげて、注目を集めた八雲学園高校の奥山理々嘉(おくやま・りりか)選手です。部活や学校生活を通じて得た貴重な経験など多くのお話を伺いました。
【取材日:2018年1月26日】(文:金子裕美 写真:永田雅裕)

八雲学園へ入学を決めた理由。

--高校は八雲学園に行くと決めていたのですか。

奥山さん いろいろな学校が声をかけてくださったのですが、ミニバスの時に声をかけてくださったのが大きかったです。

--それが決め手ですか。

奥山さん 八雲学園は全員でオペレーションをするのが特徴なんです。だからみんなが同じメニューで練習しますし、走ります。私が他のチームに入ったら、(長身なので)ゴール下にいて、ボールをもらってシュートする役割だったと思うのですが、八雲学園ではいろいろなポジションをやれます。私には将来、日本代表になるという夢があるので、上手になるために学べる学校はどこか。3年間、バスケットボールをやる上で一番楽しい学校はどこかと考えた時に、迷うことなく「八雲学園だな」と思いました。

--小学生の時に八雲学園の練習に参加していますが、その後も学校に足を運びましたか。

奥山さん ミニバスの時に1回、中3の時に1回、来させてもらいました。練習の雰囲気がよく、みんな一生懸命やっていましたし、先輩との関係もすごくいいと思いました。先輩方に「また、おいでね」「待ってるよ」と言ってもらって、とても嬉しかったことを覚えています。バスケットボール部だけでなく、学校も素晴らしいですよね。バスケットボールをやる時間よりも、学校生活のほうが長いのでしっかりと考えました。英語に力を入れている。行事が多くて楽しそう。それも八雲学園を選んだ理由です。

八雲学園の高校生活は?

--八雲学園は女子校(2018年4月より中学校共学化)ですよね。そこは気にならなかったですか。

奥山さん 小中は共学だったので、ちょっと楽しみにしていました。両方体験できるのはいいなと思いました。

--入学して2年経ちましたが、学校生活はいかがですか。

奥山さん 行事が多くて楽しいです。クラスの友だちがバスケットボール部に協力的なので助けてもらいながら、学校生活を両立できています。例えば授業でグループワークをした時にわからないことを教えてくれたり、放課後などにやらなければいけないことがあると「部活があるんでしょ。いいよ。やっておくから」と言ってくれたりします。また、(大会中に)顔を合わせた時に「お疲れさま」と声をかけてくれたり、試合に勝った後に「おめでとう」と言ってくれたりするので、日々応援してくれていることを実感できます。だから頑張ることができているのだと思います。

--日頃からいい関係を築いていたら、全国大会の全校応援は心に響くでしょうね。

奥山さん 全校生徒が八雲の青いTシャツを着て応援してくれて、私たちのために5日間をともに過ごしてくれたことは、とても嬉しかったです。苦しい時に吹奏楽部の演奏を聴いて感動しました。頑張ろうと思いました。

--八雲学園は校長先生もベンチ入りされるんですよね。

奥山さん はい。試合の時だけでなく、普段から気にかけてくださり、時間を見つけては体育館に足を運んでくださいます。そういう意味では学校全体がバスケットボール部を応援してくださる、いい学校です。

--高校でも入学直後から活躍できたのですか。

奥山さん 4月の関東大会予選から試合に出させていただきました。そこを見据えて、中3で引退した後も毎日、自主練をしていましたし、八雲学園に入学を決めてからは、土日と、平日は水曜日が5時間授業だったので、終礼の後、急いでここに来て練習に参加させてもらったり、練習試合に出してもらったりしていました。そういう準備期間があったので4月から試合に出ることができました。

--高校生のチームに入った時に、一番頑張らなければいけないと思ったことは何でしたか。

奥山さん 走ることですね。中学と高校ではゲーム時間が違います。1クォーター2分ずつ、計8分長くなるんです。これまでもぎりぎり頑張っている状態だったので、最初は本当にきつかったです。八雲学園自体が走るチームなので、最初のうちはフルに出場させてもらえませんでした。勝つ瞬間にコートに立っていたかったので、最後まで出してもらえる体を作らなければいけないと思い、そこをめざすことから始めました。練習の中で常に走るので、入学当初と比べると走る力がつきました。相手に当たり負けしない筋力もついたのですが、今は今で40分間もっともっと動き回れるようになりたい、もっと点数を取れるようになりたいと思うので、そういう体づくりに向けて今も走ることを何よりも頑張っています。

--日々の練習で蓄えた力を本番で発揮するためには、どのようなことが必要だと思いますか。

奥山さん 今回のウインターカップで初戦から力を発揮できたのは、前回、下級生ながら試合に出させていただいた経験があったからだと思います。多くの観客がいる中でプレーするのは勇気のいることなんですよね。今年は3年生が1人しかいない、下級生主体のチーム。私と3年生以外は初めての大舞台だったので、下級生の緊張を少しでもほぐそうと心がけました。ただ、私も3連戦までは経験がありましたが、5連戦は初めてでした。振り返ると、準決勝ではその未経験の部分が出てしまったかなと思います。勝ち進むと疲労がたまってきますよね。そういう中での心構えなどが劣っていたと思います。

--心技体、すべてが整った状態で臨まなければ日本一は達成できないですね。

奥山さん そうなんです。やらなければいけないことがたくさんあるので、高1までは自宅に住んでいましたが、もっと練習したい、通学時間を自主練に当てたいと思って、高2から下宿を始めました。

--親元を離れるといろいろなことがわかるでしょう。

奥山さん 自分で生活してみて家事の大変さを初めて知りました。お父さん、お母さんが協力してくれるありがたみを実感し、家族を思う気持ちがより一層強くなっています。今は兄も離れて暮らしていて、家に帰ってくるのは年に1、2回です。時々しか会えないと、帰ってきた時に大事にしたくなります。お母さんも同じ気持ちなんだろうなと思います。(私が)たまに帰ると「何食べたい?」などと聞かれます。一緒に暮らしていた時もそういう感じではあったのですがありがたいですね。

--バスケットボールで悩んだ時は誰に相談しますか。

奥山さん 兄ですね。特に用はなくても「お兄ちゃん、元気?」みたいな感じで時々電話してしまいます(笑)。そうすると「元気でやっているか」「ケガしていないか」と必ず聞かれます。バスケットボールの悩みを打ち明けると、「何を意識して練習しているの?」とうまくいかない理由を探ってくれます。妹思いのところもあるのですが、「ここはできているから続けたほうがいいんじゃない」「ここはこういうふうにしてみたら」というように、客観的な視点でアドバイスをくれるので素直に受け入れられます。尊敬できる兄です。

【高木先生談】今年こそ日本一になって喜びを分かち合いたい

「選手がどんなに大きくても走らせる」「日本一を目標に活動する」という指導方針は創部以来、変わりません。「step by step」と言っていますが、どん底から一枚一枚紙を重ねるように日々の練習を重ねてきました。個がうまくならなければ集団はうまくならない。バスケットボールがうまければいいのではなく、あらゆる面で模範となるチームでなければならない。そういう心がけで活動し、結果が出てきているのではないかと思います。

奥山が入学した時は高3に力のある選手がたくさんいました。世代別日本代表に選ばれるレベルの選手が2人いたので負担が少なかったのですが、彼女たちが引退してからは下級生主体のチームになり、奥山の負担がかなり大きくなっています。世代別日本代表チームで活動する合間に高校の大会に出場するというハードな生活を送っていたので、高2から私の監督下で下宿生活を始めました。普段の食事づくりはもちろん、友だちの誕生日には材料を買ってきてケーキを作っています。身の回りのことは大抵できるので、こういう高校生がいるんだと感心させられています。徒歩で通えるようになったので、「他の部員より私が遅れるわけにはいかない」と、朝早く登校し自主練に励んでいます。練習後にも自主練を欠かさない努力家なので、今年こそ日本一を達成して喜びを分かち合いたいと思っています。